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本気を出さない勇者さま  作者: 霊雨
第6章
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第65話 そろそろバラしていく

僕は何がしたかったのだろうか……

 ――チュンチュン。

 小鳥のさえずりで目が覚めた。

 ベッドから身体を起こそうと思ったが、クレアががっしりと俺の身体にしがみついているせいで起き上がることが出来ない。

 朝チュンではない、決して。


「ほら、起きろ」

「ぅん……あと3時間……」

「起きろ」

「痛いっ!」


 クレアを起こそうと、身体をユサユサと揺すってみるが起きる気配がない。寝言が酷いこともあってか俺はクレアの額にチョップをお見舞いしておいた。

 一晩たって大分落ち着いたらしい、外見は俺が魔法でなんとかしたのであまり目立ってはいないが、精神はどうしようもなかったので少々心配したが……


「むにゃむにゃ……」

「寝ぼけるフリして身体まさぐってんじゃねぇよ」


 この通りだ、一応は大丈夫らしい。

 俺はニヤけるクレアを引き剥がして学院の制服がかけてあるクローゼットを開く。今日くらい休日がよかったが、運悪く今日は登校日、最近は特にやることがなく、基本的に寝ているクレアを観察するためだけに学院に行っている、行きたくないわけではないが非常に面倒臭い、分かってくれこの気持ち。

 ガララとクローゼットを開けるとそこには可愛らしい女子制服が――


「いやなんでだよ」


 男子制服どこいったんだよ。

 クローゼットをもう少し開くと、ちゃんと俺が着ていた男子制服もかけてあった。じゃあなんだこれ、そろそろアンジェさんが俺に女子制服を着せようと策を練ってきたのか……?


「あ、それ私の制服だよ」


 ベッドから上半身だけを起こし、目を擦りながらクレアはそう言った。


「いや……なんでだよ」

「いやぁ……ちょっとアリスのクローゼットに私の制服を入れたいなぁって……」

「ちょっと何言ってるか分かんないっすね」

「あわよくば私の制服をアリスが着てくれないかなぁって……」

「そっちが本音か」


 自分の制服を手に持ちながら、もう一度クレアの制服を眺める。

 シルバニア学院の制服は日本のゲームにありがちだったフリッフリの制服ではないが、それなりに可愛らしい印象を受ける。

 別に着たくないという訳じゃない、着たいという訳でもないが。それでもまぁ……クレアが着てくれっていうなら……


「一回くらいなら着てもいいかな」


 ボソッと、聞こえるか聞こえないくらいの音量で俺は小さく呟いた。


「え!? 着てくれるのっ!?」


 なぜ反応したし。

 さっきまでの寝ぼけた雰囲気が嘘のように、機敏な動きで俺との間合いをクレアは一瞬で詰めてきた。

 そのあまりの気迫に言いようのない恐怖を感じとった俺は、小さな呻き声を上げながら後ろに後退する。


「い、いや……冗談だって」

「アリスは女の子なんだから別に着ても問題ないんだよ?」

「……いや、いいです」


 一瞬考えたがやっぱり止めよう、危険すぎる、いろんな意味で。


「そ、そうだよね……」


 俺が断るやいなやシュンとなるクレア。垂れ下がった犬耳と尻尾が見えるのは俺だけだろうか。

 いいんじゃない? 心の中の俺がそう言ったような気がした。事実クレアがシュンとしているのは精神的にキツイ、昨日のグロッキーなクレアが頭を過ぎる。

 出来れば笑っていて欲しい。

 そんな感情で俺の心は支配される。


「……クレア……制服貸してくれないか?」

「え?」

「ん……ちょっと着てみたいかなー……つって」


 一瞬の内に犬耳と尻尾がピンと立った。パァと明るくなるクレアの表情を見て、俺はどこかホッとした。





 着るといったは言いものの、着方が分からん。だって仕方ないじゃん、俺いっつもシャツだったし、下はベルトで止めるだけだし。

 女子の制服の上はボタンがないし、下のスカートは履いたことないからな、知らん。


「え、どうやって着るのこれ」


 もう既に着替え終わったクレアに、制服の上着を両手で持ちながら助けを求める。

 おい、ニヤけながら手をワキワキさせて近づくの止めろ。


「えーっと……ここにこうして……」

「お前ら面倒なもの着てるんだな」

「着心地は良いんだけどね」


 なんというか、ボタンで良いんじゃないかと思うような構造をしていた。

 俺は取り敢えずクレアに言われた通りに上着を着る、なるほど、着心地は良いな。


「えっと……スカートは履かせてあげるね」

「鼻息荒いぞ」


 ハァハァ言いながらスカートを持ってせり寄ってくるクレアに身の危険を感じた。

 スカートを履いたが、予想通り股下が心もとない。せめてひざ下まであればな、ミニスカほど酷くはないし、俺もこのスカート自体は見慣れていたが、いざ自分で着てみると違う様に見えてくるな。


「えへへ……お揃い、だね」

「ん、ああ」


 クレアは俺の腕に腕を絡ませながら嬉しそうに笑った。

 部屋に設置してある姿見で今の自分の姿を確認してみるが、正直言って女子にしかみえない、いや女子ですけど。

 あれだな、これ俺が女だってこと隠せてんのかな、姿見に映る俺に頭の中で男子制服を着せてみるが違和感しかわいてこない……


「なぁクレア、俺の男装ってどう思う?」

「んー……知らない人が見たら大丈夫じゃないかな。声は男の子の声にちゃんとなってるし、美少年だとは思われてると思うけどね」

「そんなもんか」


 大丈夫そうだな。

 それよりも、そろそろ朝食の時間だから早く男子制服に着替えないとな。


「アリス、クレア? 早く起きなさいよー?」


 ガチャリと、扉を開けながらそう言って部屋に入ってきたのはジェニーだった。そういえば昨日、俺が帰ってきたことを報告しにいったとき、すごく怒られたな。心配して見に来てくれのだろうか。

 扉を開けて俺とクレアの姿を確認したジェニーは一瞬固まった、そりゃそうだろう、男が女子制服を着てたらそうなるわな。というかしくじったな、気配とか全然気にしてなかった、扉の鍵も閉めてなかったし。


「ご、ごゆっくり~……」

「待て」


 俺はソロ~っと扉を閉めるジェニーの腕を掴んで逃亡を阻止する。俺に腕を掴まれたジェニーはビクッとなって必死に腕を掴んでいる俺の手を離そうとするが、ビクともしない、そりゃオーラ纏ってますから。


「み、見てないわっ、私は何も見てないわ!」

「取り敢えず部屋入れよ」

「ちょ、ちょっと!」


 抵抗も、合ってないようなものなので、多少強引だがジェニーを部屋の中に引きずりこんだ。

 ジェニーは俺と視線を合わせようともせずダラダラと汗を流し続けている。この世界じゃ女装男装はあまり一般的じゃないからな、率直に言えば異常性癖とか、そんな感じに捉えられる。


「ひ、ひひひ人それぞれだと思うわよっ」

「俺まだ何も言ってないけど」


 動揺するジェニーを落ち着けて、取り敢えず誤解を解いてもらうことにする。

 もう少し機会を伺いたかったがこの際仕方がない。確かに女装はあれだが俺は女だ、そこのところをわかってもらえれば問題ない。

 男装もそれはそれで問題だが、なんとかしよう。まだ男装のほうが女装よりも風当たりがマシな気がするからな、男女差別? この世界は根っこは男尊女卑なんだ、上等だろ。


「ジェニー、実は俺、女なんだ」


 凄いかわいそうな目で見られた、悲しい。


「アリス……あなた、大丈夫じゃなかったのね……」

「その哀れみの目を俺に向けるのを止めろ」

「確かにアリスの外見は可愛らしいけれど……だからって……」

「そうだよ! アリスは正真正銘女の子だよ! ほら、下着だって――」


 そういってクレアは俺が履いているスカートの端を持ちあげた。

 ジェニー、ドン引き。

 取り敢えずクレアには手を話してもらって、俺はクレアの頭をオーラを纏った手で鷲掴みにして、キリキリと締め上げる。


「何してんのお前」

「痛い痛い痛い! だってこれが一番確実じゃん!」

「アリス……それはちょっと……」

「見ろ! 悪化してるじゃねぇか!」

「あ、あれぇ……?」


 ダメだ、クレアはやっぱり頼りにならない。ここは俺がなんとかするしかないか……


「アリス、このことは皆には言わないから……」

「いや、ほら、俺ちゃんと胸とかあるし……」


 すごく深刻そうな顔でそう呟くジェニーに俺は胸を張って手を当ててアピールする。

 だがすぐに気が付いた、俺胸無いわ。


「「あっ……」」


 察したかのように、クレアとジェニー口に手を当てながら悲しそうな声を上げた。


「ご……ごめんなさい……そ、そうよね、こんなに可愛い子が男の子な筈ないわよね!」

「そ、そうだよアリス、大丈夫だよ!」

「気にしてないからその憐れみの視線止めてくれる?」




 誤解は解けたらしいが俺は何か大切なものを失った。

スランプどころじゃないです、作風変わってますがな。

あれですね、別の小説にちょっと引っ張られてるんですかね?次の話を書く前にちょっと以前の話を呼んで作風を戻してきます……


次回は3日後!多分ね!

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