第59話 貧乳はステータスだぁ
肉体的百合注意です!
「ふふふ……それは災難だったな」
目の前の豪華な椅子に座っている長髪黒髪のグラマー美人はそう言った。
俺はレティス、ハチと共に迷宮から地上に帰還したあと、俺も行くあてが無かったのでひとまずはレティスの勧めもあって、レティスが住んでいる家……というか城に行くことになった。
椅子に座っている彼女の名前はルミナス・ハーメルン、“女帝”の異名を持つ魔王の一人だ。言えばこの城は魔王城ということになるな、まぁそうはいっても薄気味悪い城ではなく、白を基調とした落ち着いた雰囲気を持った、ある意味神々しささえ感じる城なのだが。
レティスは数日間行方不明になっていたらしく、その報告がてら、城の主でもあるハーメルンに俺は挨拶することにした。とは言っても俺とハーメルンは知り合い――性別はいまとは違うが――だからそれほど堅苦しいことにはならない、元々冥界での魔王への挨拶は人間の国王への謁見という感じではなく、フレンドリーな感じだし、よほどの無作法をしなければ大丈夫だ。
いま俺がいるのは客間で、豪華な椅子にハーメルンが、机を挟んで反対側の同じ様な椅子に俺が、そして部屋の中にある二人がけの椅子にレティスと、もう一人、ハーメルンと似た容姿の女性が座っている。ハチはさすがに城の中には入れてもらえなかったのでいまは庭で元気に遊んでいる、いまごろは「ご主人様を暖かく見守り隊」に指導されていることだろう。
「この度はウチの娘がご迷惑をお掛けして申し訳有りませんでした……!」
レティスの隣りに座っていた女性はいきなり立つやいなや、俺に向かって深々とお辞儀をした。
彼女はレティスの母親で名前はレティシア。彼女とハーメルンは姉妹であり、ハーメルンは若干釣り目の強気な感じだが、レティシアは逆におっとりとした印象を与える顔をしている。しかし……言っちゃあなんだがよくもまぁこんなにしっかりした親からこんな子供が生まれたもんだ……
「あぁ別にいいですよ……それにレティスですし」
「そうそう私だから……ってなんでよ!?」
「そうですねぇ……娘はいつになったら賢くなってくれるのかしら……」
「お母さんまで酷いよ!!」
ちなみに俺とレティスが初めてあったときも、レティスがポカやらかしてひと騒動起こして、俺がそれに巻き込まれたときだったからな。レティスはトラブルに巻き込まれる体質でもトラブルに突っ込んでいく体質でもない、トラブルそのものがレティスだ。本当の意味でのトラブルメイカーだからな、周囲からしてみれば迷惑極まりないだろう。
「それにしても……あのアリスがこんなに可愛くなって帰ってくるとは夢にも思わなかったぞ」
そう言ったのは俺の目の前に座るハーメルンだ。俺が男のときには見せなかった穏やかそうな雰囲気でこちらを向いている、こいつが男嫌いなのは知っていたがここまで態度が変わるとは……
「それ、昔の知り合いに会うたびに言われるよ」
「でもそうよね、昔のアリスはずっと無表情だったし」
「そうかしら、私は男のときのアリスちゃんも好みでしたけど」
「レティシアは見る目がないな、あんな男のどこが良いんだ。ただ強いだけの脳筋野郎だろうが」
「本人目の前にしてよく言えたな、たたっ斬るぞ」
「ふはは!男のアリスなら兎も角、今のアリスにそう言われるとどこか気持ちが良いな」
「もういい、お前はもう喋るな」
俺とハーメルンは別に仲が悪い訳ではない――良くもない――のだが、こいつはガチレズだからな、百合とか生易しいものじゃないからな。初対面で舌打ちされてそのまま戦闘にもつれ込んだのはいい思い出だ。
俺のほうを見るハーメルンの表情はかつて見たことがないくらいに透き通っていた、透き通り過ぎて下心がバレバレだが。レティスがいうにはいつもはこんな感じらしいが一度目の前にお気に入り以外の男が姿を表すと急に不機嫌になるらしい。
この城は主がこんなだからか使用人が全て女だからな、攻めてくる奴が男の場合はそういう輩も多いのだろう、仕方がないとは思うが。
そう思えば、まだ俺はマシな方なのだろう、ずっとハーメルンの愛用の鞭と剣を合わせたような武器を手に持って睨まれていたがまだマシなのだろう。レティス談では気に入らない奴は即刻消されるらしいし。いや、消したくても消せなかっただけか……?
「ふふふ、そう連れないことをいうな。それよりも、これからお前はどうするのだ?ずっとここにいる訳ではないのだろう?いや、私はいっこうに構わないがな?」
「いや、遠慮しておく、今のお前と一緒にいると俺の貞操が危ないし。ここにはレティスを送るついでに少し寄ってみただけだ、すぐにここを立つ」
「え~もう少しゆっくりしていけばいいのに~」
「むこうに置いてきたやつが心配なんでな、なるべくはやく冥界からも出るつもりだ」
「ほぅ……それで、冥界から出る検討はついているのか?現界への門はここからだとかなり遠いぞ?」
「あぁ、それはサタンのとこに行けばなんとかなるだろう」
サタンというのは、もう予想できるとおもうがこれまた魔王の一人だ。サタンはどちらかと言うと武闘派ではなく、技巧派の魔王で、確か冥界と現界を繋ぐ門を意図的に作り出す魔導具を作っていた筈だ、それを使えば……おそらく帰ることは出来るだろうとは思う。
「サタン……ねぇ、私はあいつのこと良く知らないがアリスがそう言うならそうなんだろう。で、どうやっていくつもりだ?」
「徒歩だ」
「徒歩?この国からあいつの国まで大体3ヶ月以上かかるぞ?」
ぐっ……確かにサタンが治める国まではここからだとかなり遠かった筈だ、というか道もあまり覚えていない。
「そこは、その……なんとかするんだよ」
「なんとかってお前……そうだ」
ハーメルンは俺の話を聞いて、まるで良いイタズラを思い着いた子供のように笑みを浮かべ、俺にこんな提案をしてきた。
「なんなら、私が足を貸してやろうか?」
「……どういうつもりだ」
「いやぁ?別にどういうつもりもないが?」
怪しさ抜群じゃねぇか、なんでちょっと頬赤らめてんだよ、考えてること丸分かりじゃねぇか。
「ふふふ、そう構えるな、別にお前を取って食おうって訳じゃない」
「そうか……で?俺は何をすればいい」
俺がそう言うと、ハーメルンは一瞬だけ目を丸くしたあと、クスッという小さな笑みを零した。
「流石にお見通しか」
顔に書いてあるんだよ。
「ふふ……そうだな、それじゃあ――」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カポーン。
ハーメルンが俺に提案してきた条件は「一緒に風呂に入ろう!」だった。
始めは「一夜を共にする」だったらしいが、さすがに俺が怒りそうだったのでこっちに変えたのだとか、いい判断だ。
現在地は城の内部に作られた巨大浴場、なんだこれ、何パークだよこれ、ちょっとしたレジャー施設じゃねぇか、広すぎんだろうが。
「ふふふ、どうだ広いだろう?」
「広すぎるだろうが、こんなにデカくする必要あるのか?」
「あぁ、たまに使用人全員と一緒に風呂に入るんだ」
「全員てお前……」
「ふふふ……私の女たちに囲まれて入浴するという長年の夢が叶ったのだよ」
「うるせぇよ」
ただのハーレムかよ……仮にもサキュバスなら逆ハーでも作ってろよ。
「2人とも待ってよー!」
「レティス、走っちゃ危ないわよ」
「大丈夫だってぇぇ!?」
俺とハーメルンのあとを追いかけてきたのはレティスとレティシアだ。レティスはレティシアの忠告も聞かずに走って滑って頭を打った。子供かあいつは……1000年前がたしか200歳ちょっとだった筈だよな、ということは今あいつは1200歳越え……歳を重ねても阿呆は治らなかったか、とことん残念なやつめ。
「い゛た゛い゛……うぅぅぅ」
「だから言ったでしょう……あなたはホント馬鹿ね」
「うぐっ!」
さて、茶番はさておき……
ここは風呂場だ、そしてこいつらには身体にタオルを巻く習慣がない訳だ、勿論俺も巻いてないが……いや、それよりもあいつらだ、真っ裸なんだ、ということはだな……
「どうしたんだアリス?んんっ?お姉さんに言ってみなさい、んんんっ?」
ウザ。しかもお前お姉さんなんて歳じゃねぇだろ。
いや、気になるのはだな……その……胸、なんだが……デカ過ぎじゃね?なにあれ、スイカじゃん。
俺がよほど胸を凝視していたからなのか、さすがにレティスも気付いたらしく、後ろからニヤニヤと笑みを浮かべながら俺に近づいてきた。
「あっれれー?もしかしてアリスって胸が小さいこと気にしてるぅ?」
レティスが放った言葉にハーメルンとレティシアが固まった。まて、固まるな、別に俺気にしてないし、でもレティスがムカつくからちょっとくらい怒ってもいいだろうか。
「テメェの胸についてるその2つの脂肪の塊ちょっと削ぎ落としていい?」
ほんのちょこっとだけ殺気を出しながら、にこやかに俺はそういった。そして瞬時にガクブルになったレティスがいた。
「ほんとうにすいませんでしたゆるしてください」
「いや、怒ってないけど?」
何も土下座しなくてもいいだろうが……
俺がレティスのほうを向いてガシガシと頭をかいていると、ふいに俺の背中に柔らかい感触が……
「ふふふ……何もそこまで怒ることないだろう?」
「だから別に怒ってねぇし」
「ふふふ……」
調子狂うな。男の時なら要件だけ話して帰るような場所だったのに……女になった途端に……
「アリス……お前、自分が女になったから私がこんな態度をとっていると思っているだろう?」
何故分かったし。
「そうじゃないのか?」
「いや、その通りだが……」
「その通りなのかよ……」
「いや、そういうことではなく。たとえそこらの冴えない野郎が私好みの超絶美少女になったとしても私はこんなことはしないんだぞ?」
「どういう意味だよ」
「ふふっ、アリスだからだよ。結局、私も他の奴らと一緒ってことだ」
「……そうか、いい迷惑なんだが」
「言ってくれるじゃないかっ!」
そう言いながら俺への過度なスキンシップを図ろうハーメルンに、俺は既視感を覚えた。
こいつ……変態と同種の匂いがするぞ……
「ぐふふ、アリスの肌は本当にスベスベだなぁ!」
「太ももに頬ずりするな!」
「むっ!柔らかいぞ!」
「胸を揉むな!尻もやめろ!」
「ぐふっ!私の顔を踏みつけるとは……屈辱だぞ、このっ!」
「足の裏を舐めるな!」
どうもみなさん僕ですよ!
ちょっとマシになったかな?とは思います、内容は酷いですが……
ともかく、悪夢も去りましたしこれからは少し更新ペースを上げていこうかなと考えております!実行出来ればの話ですがね!
次回更新は、早ければ3日後にでも……!大体8月には最終話に持っていきたいですね!
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