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第58話 ハチ×3

超絶スランプなう(´・_・`)

レティス・ハーメルン。俺の視界の先にいる赤髪のサキュバスの名前だ。

レティスは、魔界でも“女帝”という異名で恐れられている魔王ハーメルンの妹の娘、つまり姪にあたる。サキュバスという悪魔のその性質上、相手を自分の操り人形にするような魔法が得意なのだが、何を隠そうレティスはサキュバスの固有種なのだ。といっても馬鹿みたいな怪力を持っている訳ではないし、膨大な魔力を持っている訳でもない――それでもかなり多いが――、しかしレティスは圧倒的なまでの相手を支配する能力を持っている。その能力をもってすればいかに凶暴な魔物だろうと途端に大人しくなり、従順になってしまう。

そのときに、ほとんどの魔物は嬉しくてレティスの胸に飛び込んでこようよするのだが、なにせここは冥界、現界と比べて魔物も大きく凶悪な姿をしているものも多い、加えてレティスはわりと臆病な性格をしているため、毎回毎回自分が襲われていると勘違いしてしまい、レティスは自分の能力が「無条件に魔物に襲われる」能力だと勘違いしてしまっている。

これといって不都合はないから周囲の同族たちも特に何も言わないらしいのだが、裏ではレティスに魅了された魔物同士が結束して「ご主人様(レティスちゃん)を暖かく見守り隊」なんて代物が出来上がっている、たぶんこれ俺しか知らないけど。

まぁここまでいろいろと解説しといてなんだが、つまるところ――


「グルァ!グルルウガァァァ!(わぁい!お顔舐めてあげるね!)」

「ひぃいぃいい!私を食べる気なのね!?そうなのね!?誰か助けてええええ!」


ただの馬鹿だ。

あのレッドケルベロスの表情を見れば分かるだろう、普段なら眉間に皺を寄せて口からヨダレを垂れ流し、響く重低音で唸きながらチロチロと炎を見え隠れさせるレッドケルベロスが、まるで飼い主を待つ健気な子犬のようなほんわかとした雰囲気で、楽しそうにピョンピョン跳ね、口から舌をだしてハッハッと嬉しそうにしている、ただの犬じゃないか。なにが怖いというのか、まぁ確かに興奮してるのか口からは炎が出てるし、身体中からも圧倒的な存在感放ってるし、ピョンピョンが跳ねるたびに洞窟が揺れているがそんなに怖くはないだろう、ちょっと怖いとしても本来のレッドケルベロスに比べるとマシだ。


「グル……?」


相手が分かって、レッドケルベロスも脅威がないと思い油断していたのか、ふとレッドケルベロスがこちらを向いた。それと同時にレティスもこちらを向いた。


「ちょちょちょっとそこのあなた!たたたた助けてよ!」

「グルルルル!!(お姉ちゃんも遊ぶ?)」

「んくっ……!」

「今ちょっと笑ったでしょ!?そんな余裕があるなら助けてよおお!!」


口を押さえて笑いをこらえていると、ズンズンという足音とともにレッドケルベロスがこちらに歩いてきた、そのまま首を少し傾げたあと、俺の顔を舐めた。俺が口を押さえて震えていたから心配してくれたんだろうか、いやそれは嬉しく思うが舐めるのは遠慮してくれないか、顔だけを舐めたつもりかも知れないが全身ベットベトなんだが……いや【クリーン】で綺麗にするから別にいいんだけどさ……それほど臭くもないし……

しかし、このレッドケルベロス……もの凄い忠犬っぷりだな、良し、こいつの名前はハチだな。

俺は伏せているハチの顔を撫でながらレティスのほうに視線を移した。


「に、逃げなきゃ……逃げなきゃ……」


もぞもぞと動くイモムシがそこにいた。


「なにしてんだよレティス……」

「逃げな……ってあれ?なんで私の名前を……?」


あぁ……そういえば俺の姿変わってたんだっけ……?




「まさかあのアリスがこんな可愛くなってるなんて……」


あれから、腰を抜かして歩けなかったレティススを介抱して、俺の事情について、話した。まぁ話したといっても俺もよく分かってないんだが……

ハチについては俺が事細かに説明したおかげで、なんとか「人畜無害な犬」という認識に持っていくことができた。まだ慣れていないのか、「へ、へぇ!そういえばそんなに怖くないわね!」とか余裕かましたあとで、それが嬉しかったのかハチがレティスを舐めたら気絶したんだが、それは忘れておいてやろう。


「それより、お前相変わらずだな。特にその馬鹿っぽいところが」

「馬鹿っぽいって何よ!」

「馬鹿だろう、いつも素材を採りにいってる洞窟と間違えて迷宮に入るとか」

「うぐっ」


まぁそのお陰で俺は助かったんだが。

レティスから聞いた話では実はこの迷宮、本来は果てしなく簡単な迷宮で、たしかに迷路はウザったいがコアがある部屋には、地上に帰してくれる魔術式があるらしく、魔物のレベルも低いのでよく訓練に使われるらしい。そして、念の為にハチの身体を少し調べてみると壊れた隷属術式があり、ついでにハチの体内に迷宮のコアがあった。

つまり、ハチは何者かにテイムされた状態でこの迷宮のコアを埋め込まれて、本来は存在しないはずのボスとして徘徊していたらしい、目的は恐らく俺なのだろうが、上はあの悪魔だけでなくハチとも俺を戦わせる気だったのだろう。いや、あいつが指示したなら、恐らくあの悪魔は捨て駒、ハチが真打ということか……

だが運良くそこに居合わせたレティスのお陰でハチに施されていた隷属術式がブッ壊れたということだ、ナイスレティス。


「ところでこれからどうするのよ、帰還の魔術式はもうないのよ?」

「はぁ……お前は本っ当に頭悪いな、ちゃんと勉強したか?」

「なっなによいきなり!」

「いや、お前……迷宮の帰還の術式はその迷宮のコアさえあれば何度でも復活するって習わなかったか?」

「な、習ってないわよ!」

「これ一般常識なんだけど」

「うぐっ」


アホの子はさておき。

性格には迷宮のコアを元の台座に戻せば、その近くに帰還のための魔術式が再度描画される。そして迷宮のコアはハチのなかに、ふふ……戦力アップを図ったんだろうが悪手だったな。


「ハチ、迷宮のコアを出してくれ」

「ガウ!」


俺がハチにそう頼むと、ハチの胸の部分が光り始め、直径20センチほどの魔力結晶が出てきた。


「よし、出てきたな」

「それがここの迷宮のコアなの?」

「あぁ、そして台座はそこにある」


俺が指差すさきには周囲から少しだけ出っ張った岩がある、俺の見立てではあれが台座……のはずだ。間違ってたら凄い恥ずかしいな……


俺が迷宮のコアを拾って台座と思われる岩のくぼみにそっとおくと、しばらく何もおこらなかったが。


「なになに?ハズレ?やだアリス恥ずかしい~」


といいながらレティスがコアを台座から持ち上げようとした瞬間に台座とその真上の天井から肉の触手が伸び始め、迷宮のコアを飲み込み始めた。ついでに巻き込まれたレティスは触手に弄ばれて、その豊満なボディで「らめぇ!」をしてからそれがコアじゃないとわかったのか捨てられていた。


「うう……なんで私がこんな目にぃい……」

「自業自得だろ」

「ガゥ……」


ほら、ハチも悲しそうな目をしてるぞ……自分の主人がこんなんじゃそうなるわな。

肉柱のほうは、レティスを捨てたあと、しばらくウネウネと動き続けて、しばらくすると肉柱の丁度真ん中あたりにコアが出現した。

姿を現したコアは、丁度俺の数メートル先に新しく帰還の魔術式を描き始め、たったの数秒でそれは完成した。コアが戻ったせいなのか、あんなに岩だらけだった迷宮もなめらかな石畳に代わり、無残な姿だった木々も青々しく生命力を取り戻した。

なるほど……これが本来の迷宮の姿か……古代遺跡の迷路って感じかな。


「ほらレティス、いつまでも落ち込んでないで早く行くぞ」

「うぅ……穢されたぁ……」


俺もこの迷宮にははなから興味はないので、落ち込むレティスの首根っこを掴んでハチ鼻先にでも干しておく。

俺たちが地面に描かれた術式の上に乗ると、図体のデカイハチも入るように術式も巨大化し、転移した。

久々に執筆したらこんなことに……!悔しいのう……

次回からはなんとか元に戻してみせます!(元から大したことない)


次回は早めに上げます!


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