表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/90

第50話 い つ も の

まさに阿鼻叫喚、地獄絵図、視界の先には圧倒的殺人現場。

死因は怪我による出血多量。

その怪我とは――


「いいわね!次はこれを着ましょう!」

「その次はこれとかどうですか?」

「いいですね、そのセンス、最高ですよクレア」


毎度お馴染みの鼻血だ。


「すいませんっ!少し遅れましたか!?」

「いえ、大丈夫ですよアイビスさん。いま始まったところです!」

「良かった!ところでアリスは!?」

「ここよ」

「えっ!?あなた……ア、アリ……ブハッ!」


被害者が増えた。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




ジブリールの提案からのクレアの衝撃発言、すでに俺にはノーという選択肢は無かった。というわけで、取り敢えずアイビスを天界に連れて行くと同時に俺とクレアも天界に行くことになった。


ジブリールが手を突き出し、また意味不明言語でブツブツと何かを唱えると、俺たちの目の前に光り輝く扉が現れた。ジブリールはそのまま現れた扉を押し開けた、両開きの扉の先にはお伽話に出てくるような天国のような場所だった。見た感じはどこかの宮殿のような場所で、庭のような芝生が生えた場所があったり噴水が出ていたりする。通路の壁には所々に扉がついており、その先では現在進行形で天使たちが働いている。

そしてジブリールが使ったのは“昇天の扉”と呼ばれる天罰と同じ天使の固有能力のひとつだ、昇天の扉はようするに使用者と、使用者が定めた天界の指定位置とを繋ぐ簡易的な(ゲート)を作る能力だ。

本来ならば、地上、冥界の生物は死んで天に召されないと行くことが出来ないが、天使の力を借りれば、生身のまま天界に行くことができる、天使に知り合いがいる奴のほうが稀だと思うが。

天界も普通に地上と似たような環境だ、植物がないのに酸素とかどうなってんのとか考えたことがあるが、考えた方が負けだということをすぐに知った。



「ジブリール様、お疲れ様です、現場はどうだったのですか?」


昇天の扉を通って天界に出ると、ジブリールを見つけた一位の天使の少女が話かけてきた。そういえばジブリールってなにかの任務できてたんだよな。


「えぇ、それについてですが……事件を起こした張本人を連れてきました」

「えっ!?」


ジブリールがそういうとその天使がキョロキョロと辺りを見回し、ジブリールのすぐ後ろにいた俺たち、ひいては俺と目があい、その天使の少女はこれでもかというほど目を見開いた。


「ええ!このコってニンゲンですか!?ジブリール様、一体何を考えてるんですか!?」

「まぁ、それについてはおいおい話すは、取り敢えず、地上で起こった空間亀裂に関しては私が上に報告しておくから、貴方たちはいつもの業務に戻りなさいな」

「はっはい……ジブリール様がそう仰るなら……」


ふむ……ジブリールが真面目に仕事してるのを見るのはこれが初めてかも知れないな、もっとサボってると思ってた。


「少しついてきてくれますか?天人族を保護した報告と、アリスとクレアさんを天界に招いたことも報告する必要があるので」

「わ、わかりました」

「はーい」


いきなりこんな場所に連れてこられたからなのか、アイビスはガッチガチに緊張してしまっている。対してクレア、いつも通り、通常運転だ、俺でも初めて天界に来た時は驚いたんだけどな……それにさっきはジブリールと凄い楽しげ―内容は俺的に楽しくない―に話してたし、クレアには緊張という概念が存在しないのかもしれない。




「えぇ、はい、了解です。ではアイビス殿はこちらへ……」

「はっはい!」


ジブリールが報告を済ませたあと、アイビスは様々な手続きがあるとかなんとかで天使に連れて行かれた。連れて行かれる前に、寂しげな表情をしていたアイビスだったが、そっとジブリールがアイビスの耳元で何かを囁くと途端にアイビスの顔が華やかになった、ジブリールが何を言ったのかは大体想像がつく、ついてしまう。


「それじゃあ、クレアさんは私について来てください。アリスはこのまま例の部屋まで行って報告をお願いします」

「おい待て、報告はお前の仕事だろうが」

「いえ……私はこれからクレアさんとやることがありますので……それに、貴方なら特に問題はないでしょう?」


問題がないとかあるとか関係なく、ジブリール……お前それって職務怠慢じゃないのか?


ジブリールが言った例の部屋というのは、全部で13位いる天使長たちが時たま、極稀に会議をする部屋のことだ、名前は忘れたが会議室で大丈夫だ、正式名称なんてほとんど誰も知らないし。

そして俺は現在その部屋の前にいる、目の前にはかなりのサイズの扉が佇んでいる、天使なんてどれだけデカくても2メートルいくかどうかなのに……これ4メートルくらいあるんだけど。それはともかく、デカイ扉の向こうからは、ヒシヒシと伝わってくる圧倒的な威圧感、その数は総勢5つ。

俺は冷や汗を垂らしながらその重い扉を押しあけた。


「重すぎんだろ、軽量化しろよ……」


なかなか開かない、なんという重さ……一応レイドオーラ全開なんだけど。

結局少しかかって開いた小さな隙間から滑り込むことにした、こういう時だけは身体が小さいことにありがたみを感じるな、男だったときも別に身体が硬かったなんてことはない―むしろ凄い柔らかかった―が、それでも全体的に筋肉がついてゴツゴツしてたからな、狭い隙間は通りにくかったからな。まぁそんなことはどうでもいい。

隙間を通り抜けると、視界が白く染まった。目が慣れてくると、少しずつ部屋の中が見えてきた。


一番奥に1脚、そこから左右に6脚ずつ綺麗な椅子が置いてある。そのうち、一番左から見て、2番目と3番目、6番目、9番目、10番目、12番目の椅子にそれぞれジブリールと似たような雰囲気を纏っている天使が座っていた。


「……やはり貴殿だったか、覚えのある気配だと思えば……姿は大分変わったようだが……」

「ははは、ホント可愛らしくなったね。あの仏頂面からは想像も出来ないよ」

「だが中身はあのままなのだろう?」

「外見と中身の差が激しそうだな」

「ジブリールが喜びそうな外見だ」

「そういえばあいつはどこいった……?」

「あぁ、ジブリールなら自分の部屋に向かったよ、俺はあいつの代わりに報告に来ただけだ」


俺はそう言いながら、入ってすぐ右にある椅子に座った(・・・)


「ふはは!第十三席天使長様のご帰還か!」


そう行って笑ったのは、左から6番目の椅子に座る天使、第二席天使長のミカエルだ。

そしてミカエルが言ったとおり、俺は人の身で在りながらも第十三席天使長という地位を持っている。いろいろと経路はあったが、簡単に言えば俺が天使長になったのは、第一席天使長の阿呆を監視する為だ、少数だが他の天使長と同じく配下の天使もいるが、そいつらは基本的にやることがないので他の天使長の配下である天使たちの仕事をサポートをしており、第十三席天使長という役職自体には第一席天使長の監視以外の仕事は基本的にない、俺自身もそれ以外したことないし、まぁ天使の仕事なんぞ面倒過ぎてする気にもなれないが。天使は寝ないからな、365日24時間営業働き詰め―サボっている奴もいるが―とか某黒企業もビックリだ。

取り敢えず、手っ取り早くジブリールがやるはずだった報告と、俺とクレアが天界に入ったことをかいつまんで話してから、俺は早急に会議室をあとにした。天使長たちと話していると、とんでもなく長話になってしまう、悠久の時を生きる天使にとって、二日三日なんて息をしているうちにすぎるようなものだ、おそらくあいつらの長話に巻き込まれると一週間は帰れない、仕事しろ。




会議室を出ると、1位の天使が立っていた。聞くところによると、ジブリールが寄越したらしい、道案内のためなのか、逃げ場を無くすためなのか……圧倒的に後者だな。

天使に連れられて通路を歩くこと数分、周囲の扉と比べて、一際可愛らしい感じに装飾された扉の前についた。


「それでは、私はこれで失礼致します」

「あぁ、ありがとな」


そういうと天使はすぐさま歩いて何処かへ行ってしまった。これからまた働き始めるのだろうか、社畜もいいところだな。

俺は再度扉の方を向く、可愛らしく装飾された扉がいまはとても禍々しく見える。そっと扉に耳を当てると、防音対策がされているのか何も聞こえてこない、何も聞こえないのが逆に恐怖心を煽られる。

俺は意を決して扉を押した。


「これもいいわね!これも候補にしておきましょう!」

「あっ!アリスだ!」


視界に広がったのは真っピンク、どこを見回してもぬいぐるみが置いてある、非常にファンシーな部屋だ。そしてその部屋の真ん中には、どこから持ってきたのか、数個の衣装棚と、大量の女物の服、それもフリッフリのやつとか、そういった系統のやつばかり。

俺が逃げようと扉から出ようとしたところ、いつの間に接近していたのか、ジブリールが俺をグイと部屋の方に引き戻して、扉を閉めた。ガチャリと仰々しい音が鳴り響いた、恐らく鍵がしまったのだろう、天界のこの宮殿の壁や扉の耐久力が以上に高い、以前の俺ならまだしも、今の俺にはクレアやほかの天使たちに被害を与えずに蹴破ることは不可能に近いだろう。


「ふふふふふ……逃がさないわよアリス……男だった時からこうしたかったけど……流石に女装した男を愛でる趣味はないの、でも今なら……ね?」


ジブリールが俺の耳元でクレアには聞こえないような小さな声でそう呟いた。背中に悪寒が走った、男だった時からそんなことを考えていたのは知らなかったぞ。


「ほらアリス、こういうの着てみない?絶対かわいいよ?」

「そうよ、こういうのとか、貴方なら絶対に似合うわ!」

「取り敢えず聞きたいんだが、俺に拒否権はあr――」

「無いに決まってるじゃない」

「アッハイ、デスヨネ」


それから俺はありとあらゆる服という服を着せられた。着せ替え人形……という訳か。




――そして冒頭へ戻る。

どうもみさなさん、お久しぶりです作者の僕です!

終わらなかった!いつまで4章は続くのか!次回で終わらせたい、でも終わらないかもしれない!


次回更新はいつも通りの一週間以内ですどうぞ!


よろしければお気に入り登録と評価のほうもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ