第49話 やっぱりこうなるのか(諦め
「はぁ……何か懐かしい感じがしますね」
ジブリールはどこか遠くを見るような目で外を眺め、溜め息を付きながらどこか嬉しそうにそう呟いた。
天罰は標的の指定ができる、個々を指定することも可能だが、種族全体であったり、ある共通点をもつ存在をまとめて指定することも可能だ。
例えば、人間種の誰それという指定をすればそいつだけに天罰が落ちる、人間種という指定をすれば人間種全員にもれなく天罰が落ちる、そして、“レスニア教を信仰している人間種”という指定をすれば、今現在レスニア教を信仰している人間にのみ天罰が落ちる。
まぁ、そんなことすれば下手したらこの街、ひいてはこの国全体で多大な犠牲者が出る可能性もあるからもう少し考えるが……
「なんか普通にしてるけど、この人って天使様なんだよね?」
俺とジブリールが天罰の指定範囲について相談していると、ふいにクレアがそう呟いた。
「あぁ……そういえば天使ってお伽話の存在とか言われてるからな」
「そうなんですか?まぁここ最近は地上には降りてませんね、特に事件とかありませんでしたし、だから今日みたいなことが起きて天界は大騒ぎになってるんですよ?アリス、聞いてますか?」
ジブリールはそう言いながらジト目で俺のほうを睨んできた。まぁ空間に亀裂が入るとかなかなかの大事件だからな、でもしょうがないじゃん、現時点で天界と連絡とれる唯一の方法がそれなんだから。
「本当に済まないと思っている」
「本当に思ってるんですか?」
「いや、全く」
やったね天使ちゃん、仕事が増えるよ!
……どこからか“おいやめろ!”という声と“ぶっ殺すぞ”という声が聞こえてきたような気がする。済まない、でも後悔はしないし謝罪もしない。
「未だにこの方が天使様ということが信じられないわ……」
「とかいうアイビスも天使とのハーフだけどな」
「それもまだ完全には受け入れられていないのですけど、こう立て続けに事が起きると、なんというか……耐性がついてくるわね」
「私も最近はあまり驚かなくなってきたなぁ」
まぁクレアは最初は俺が魔法を使うたびにキラキラと目を輝かせていたからな、最近はキラキラ度が少し落ちてきたな。俺が新しい魔法を使えばまたキラッキラになるが、どこの少女漫画のキャラですかと言いたいほど輝く。もうすぐ目からキラキラ光線がでると俺は踏んでいる。
「もしかしてレスニア様も地上で来てたりして……」
「来てますよ?」
アイビスの呟きにジブリールが反応した、レスニア教の主神であるレスニア神、こいつは実在する神様だ。
地上、冥界、天界と続いてある世界、もうお分かりだろうが神界だ。世界を管理する神がいる世界、そこにレスニア教の主神であるレスニア様(笑)はいる。
天界の天使もそうだが、神界の神もやってることはこの地上と冥界の管理だ、神界は天界も管理しているが。天使も恋のキューピッドよろしく地上を除いて矢を打つなんてことはしない、している暇がない。
天界や神界の状態を表すなら、忙しい時期の現代日本の会社だ、天使と神はサラリーマン、あながち間違いではない。
詳しいことは兎も角、レスニアのことだが。
レスニアは愛称だ、本名はレスニアムルゲースクライスだ、まだ短いほうだぞ、名前を全部言うのに30秒ほどかかる神もいるのだとか。レスニアは上級神だ、神界でもかなりの上の地位にいる、担当するのは地上と冥界の自然管理、分かりやすくいえば土壌調査だ。
どこの土が良いだとか、ここの森の成長はどうだとか、そんなことを調査し、管理している。何を隠そうレスニアはこの世界の自然を司る神だ、間違っても慈愛の神様ではない。
特に関係もない神の名前を掲げている宗教の存在は割と多い、まだきちんと実在する神の名前を使っているだけまだマシか、偶然かもしれないが。
「来てるんですか?」
「えぇ、丁度時期の筈ですから」
聞き間違いだと思ったのかアイビスは再度ジブリールに確認をとる、しかし返ってくるのは同じ答え。
「……もう、どうでも良くなってきましたわ……」
アイビスは考えるのを止めた!
話が脱線してきたな、そろそろ本題に戻そうか。
「それで、天罰の範囲についてだが」
「そうでしたね、すっかり忘れていました。それで、範囲はどうするんです?」
「ん……じゃあ、“レスニア教に関係した悪人”で頼む」
「まーた曖昧な指定ですね、ちょっと被害が大きくなるかもしれませんよ?」
「あぁ、全然構わない」
「変わりませんね、安心しました」
ジブリールは小さな笑みを浮かべると、懺悔室の天井に向かって手を伸ばした。
突如として、ジブリールの周囲が淡く光を放ちはじめ、周囲が神々しい雰囲気に包まれる。それと同時にジブリールの背中に生えている大きな翼と頭上の光の輪が輝きを増した。
ジブリールによる、【天罰】の詠唱が始まった。
「悚櫢フ・゜ネc8o蟠凬・」>゛シMC敢h・I墲ホン腮+A・レ广Y&ゥンヤ渹メェ:貊Lリヘアロ?8T膵・ラネJ-hハサ?悦ョ杖ケ\ク・U`)ヨ#@・イチ・c・・l優ト2Iゥ掛挌/ル・饗同QBロ6リワ7&<БDSOKtーJ・ヘチ盈l 叢Z\]ウ'キu翹サNP・IK}(vー濃zノZy罧X・B・fァR1<限或鋳カ1・愆m玄d\欄・ア・箙キ[癇現゛ウモクワ2ョ・」
天使が使う【天罰】はある特殊な言語の呪文らしきなにかを詠唱する、俺もよくは知らないし、いまの状態ではその言語すら聞き取ることは不可能だ、若干天使が混じっているアイビスも不可能に近いだろう。
その言語とは、所謂神の言語と呼ばれるもので、我々生物が生み出す言語とは別の次元の言語?らしく、普通では聞き取ることも困難なのだとか、難しいことは嫌いなので詳しいことは知る気すら起きないな。
ジブリールの詠唱が終了すると、お次は懺悔室の窓から見える空が所々で光を放ち始めた。
次の瞬間、稲妻を思わせる一筋の光線がいくつも地上に降り注いだ、あれが天罰と言われるものだ、音もさほどしないし、周囲に人間がいればいきなり弾け飛んだようにしか見えないだろう。
「ふぅ……完了です」
「お疲れさん。あっついでにレスニア教を無くす方向で情報操作しといてくれないか?」
「……ほんっっとに天使使いが荒い方ですね……まぁいいですよ、そのかわり……」
「その代わり?」
「アリスには少しの間だけ私のお人形さんになってもらいます」
「ふぁっ!?」
ジブリールの趣味はお人形さん、まぁつまりはファンシーなモノ、可愛い物を集めることだ。天界にあるこいつの部屋は真っピンク、そして部屋のいたるところには、それはまぁありとあらゆる人形が飾られている、人形が欲しいが為に数年に一度、お忍びで地上に降りてきているらしいしな。なんでも地上の人間が作る人形は凄く品質がいいのだとか、まぁ人間は器用だからな、良い意味でも悪い意味でも……
「ま、まぁ……良いだろう」
「えっホントに!?……(やったわ……これでアリスを×××にしたりできるわ……)」
「おいジブリール、聞こえてるぞ」
「……ジブリールさん、是非私も同行させてくださいお願いします!」
なんだ!?いきなりクレアが頭下げだしたぞ!?
「あら……貴方は……」
「クレア・フェイシスです!」
「そう……貴方がそうなのね……えぇ良いわ!一緒に楽しみましょう!」
「はいっ!!!」
「おいジブリール!楽しみましょうってなんだっ!おいコソコソ話してるつもりかも知れないが全部丸聞こえなんだよ!」
ジブリールは俺をどうするつもりなんだ……そしてクレアはどこに向かっているんだ……いや、取り敢えずアイビスのことだ……そうだ!アイビスは――
「アリスが……アリスが……あぁぁっ!」
鼻血を出してにやけていた、遠い目をしている、もうあいつはダメだ。
「(いえ……やっぱりそれはこうしたほうが……)」
「(いや……そこはやっぱりこうしたほうが……)」
「(貴方は天才ですかっ!)」
「アリスぅぅぅ……」
もうやだ、おうちかえぅ……
僕は一体何を書きたいのだろうか……どうもみなさん作者の僕です。
最近はスランプどころか僕の感性が死んじゃったんですけどどうしたらいいですかね、とりまはやくこの章終わらせて日常編にでも持っていきたいところです。
次回更新はいつも通りです、次回でこの章は終わる……かな?
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