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第48話 降臨

 ビチャ、と吹き飛んだ兵士の肉片が壁や床、天井、窓にぶつかる音が鳴った。ちなみに俺の周囲には飛ばないようにしてあるから、俺もクレアもアイビスも返り血一つ浴びていない。


「ひんぎょええええ!?いだぁっいだい゛い゛い゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」


 ひと呼吸置いてから、己の四肢が切断された痛みが襲いかかってきたのか、豚が聞くに耐えない叫び声を上げる。

 非常に残念だが、こいつをどうのこうのするのはアイビスの役目なので俺はなにもできない、四肢を吹き飛ばしたのはあれだ、手が滑ったんだ。四肢を吹き飛ばして出血死はさすがに怒るだろうと思って、癪に障るが一応治療はしておいたから既に出血は止まっている。


「ぎょえ゛ぇ゛ぇ゛!!お゛れ゛ざま゛のう゛でがあ゛ぁ゛あ゛じがぁ゛ぁ゛!!」

「【サイレント】」


 にも関わらずいまだに叫び続ける豚に俺は【サイレント】をかけた。すると口は動いているにもかかわらず、辺りはまた静かになった。

 取り敢えず廊下を真っ赤にしたままにするのもアレなので【クリーン】を使って綺麗にしておく、【クリーン】では肉塊は消えないので、とても綺麗になった輝く肉塊がそこに残った。これはこれでインテリアとして……いや、ないか。


「アリス……あなたねぇ」


 アイビスは俺の方をジトーと見ながらそう言ってきた、あんなことをしたから怖がられると思っていたがそんな様子は見られなかった、因果応報だと思っているのだろうか。クレア?クレアは平常運転だぞ。


「すまんな、でもあいつがクレアまでそんな目で見てきたんだ、それでちょっとカッとなってな」

「ふぅん……まぁいいですけど。私もあの豚野郎がアリスにあんな目を向けたら問答無用で殺っていたもの」

「おぉ……そ、そうか……」


 嬉しくないなぁ、なんかアイビスってヤンデレの素質持ってないか?怖い。

 取り敢えずはもうこいつには用はないので、ここはアイビスに任せて俺は抱きつくクレアを引きずりながらもう一つのナニをしている部屋に向かうことにする。


「もうすぐ魔法が切れて騒ぎだすからあとはよろしく」

「えぇ、分かったわ。また後で落ち合いましょ」

「あぁ、それじゃ」


 アイビスと別れて少し歩くと、【サイレント】の効果が切れたのか再び叫び声が聞こえてきた。

 さてと、取り敢えず俺は俺のやるべきことをやるか、あまり気は進まないが。


 ここで俺の(・・)ゼクトオーラについて話しておきたい。ゼクトオーラというのは通称”神のオーラ”とも呼ばれるもので、実は人間やそれに準ずる獣人や竜人といった種族、竜なら誰しもが持っているものらしい、まぁ持っているだけで使えるとは限らないが。

 俺の知り合いにも使えるやつがいるが、その全員が”白く輝く”ゼクトオーラを使うのに対し、俺は”赤くドス黒い”ゼクトオーラを使う。ゼクトオーラを発現させる方法はいろいろあるが、どれもが平常心を保っていないと使えないらしい、間違っても逆上したり怒り狂った状態では使えないのだとか。

 俺は逆に負の感情を感じないとゼクトオーラを使えない、そのせいで赤くドス黒い色のオーラになるんだとか、実のところ俺にも良くわかっていないが、思い浮かぶ理由はそれしかない。

 さて、これがアイビスを天界に返す方法につながってくるのだが。負の感情によってゼクトオーラを操るということはいつでも自由に使えるという訳じゃない……普通ならそう思うだろう、ただ俺は幸か不幸か、類まれな超絶記憶能力を持っていた、完全記憶能力というほどではないが、覚えたものは印象が薄れることはあっても絶対に忘れることはない、会話の内容から見た風景、思考内容、そしてそのときの感情に至るまで。つまり何が言いたいかというと、俺はゼクトオーラを使うたびに過去にゼクトオーラを無意識に発現するほどの心的外傷(トラウマ)をいちいち思い出さなくてはならない、これが以外にきつい、できることならやりたくない。

 あのときアイビスが「天界に帰る」方法を選んでいたならそうしたが、そうじゃない方法を選んでくれた、アイビスをレスニア教の現トップの目の前に持っていけばどんなことをいうか大体想像がついていたからな、ある程度の負の感情で誘発させるぐらいなら可能だからな、本当はそっちだったんだが、まさかの心的外傷(トラウマ)を抉ってきたからな、さっきの豚もそうだが、あの乱○現場みたいなのもそうだ……そういえば俺の心的外傷(トラウマ)そんなのばっかだな……


 取り敢えず次の部屋は見るに耐えないので、部屋の外から古代の中位風魔法の【エアニードル】でメッタ刺しにしておいた、部屋内の女にも当たってるかもしらんがおそらく先ほどと同じく自我崩壊してるから大丈夫だろう。問題なんかなにもないよ。


 その後、無事に事を済ませたっぽいアイビスと教会の懺悔する部屋みたいなとこで合流した、十字架はない。つーかアイビスがすげぇスッキリした顔になってんだけど何やってきたの?


「それで、これからどうするの?」

「あぁ、それな。ちょっと危ないから2人とも下がってろ」


 俺はそう言ってクレアとアイビスを下がらせた。そしてさっきからずっと出っ放しのゼクトオーラの出力を上げていき、全身に保険として少し纏う以外は全て右手の一点に集中させる。ちなみにゼクトオーラは普通のオーラとは違って弱体化はしていないが、前にも言ったとおり、全力で使うと俺の今の身体が壊れそうなので、なるべく吐血程度で済む出力に押さえている。

 もはやドス黒い赤色の爪と化した右手を俺は何もない空中に、空間に向けて放った。

 するとビキビキと普通は効くはずのない音を上げながら、何もない空間に黒い亀裂が走った。そしてこれ以上身体に負担はかけられないので俺は心を落ち着かせてゼクトオーラを消した。


「げほっ!っがはっ!」


 そして安定の吐血。


「ア、アリスっ!?」

「ちょっと大丈夫!?すぐ治癒魔法を――」


 血反吐を吐いた俺を見て、クレアとアイビスが慌てて駆け寄ってくる。アイビスが俺に治癒魔法をかけようとしたが、次の瞬間には、どこからともなく現れた人物が俺に治癒魔法を施していた。

 その人物は若干ピンク色の長髪の割と身長が高いナイスバディの美女、そして背中にはアイビスにもあったような純白の翼、そして頭の上には光る輪っかが浮いている。


「誰が来るかと思ったら……まさか第四席の天使長様が直々にいらっしゃるとはね……」

「やっぱりアリスでしたか……あなた馬鹿なんですか?もっと違う方法とかあったでしょう?……と、その様子じゃできないみたいですね」

「まぁ……そういうこった、今回は非常事態なんだ、許してくれ」

「まぁいいですよ、あとで埋め合わせはしてもらいますが」

「なんか目が怖いんだけど……」


 何を隠そう、こいつは正真正銘の天使だ。しかも天界に13()、いや正確には12位しかいない天使長のうちの1位、第四席天使長、大天使ジブリールだ。

 俺が天界にアイビスを連れて行く計画はこうだ。

 まず、俺が空間を壊す。するとこの世界を管理する天使が飛んでくる、そんでもってその天使をとっ捕まえてアイビスを天界に送り届けてもらう、それだけ。本当なら俺が魔法なりなんなりで天界への(ゲート)をつなげてやりたいんだが、今の俺の魔力量では全く足りない。

 まぁまさかこれほどの大物がわざわざやってくるとは思わなかったが。


「そりゃあ、衰退しているニンゲンが多く生息するこの地で何の前触れもなくいきなり空間に亀裂が入ったんですよ、もう緊急事態ですよ、天界は大慌てです」


 まぁそういうことらしい。


「というか、ジブリールは俺にあまり驚かないないんだな」

「まぁ、知ってましたからね。死んだならアリスの魂は天界に来るはずですし、来ないのなら死んでないということでしょう」

「来てなかったのか?」

「えぇ、そうですよ」


 ドユコト?俺死んでないの?これ転生とかそういう類のモノじゃないのか?アルェ?


「えぇと、アリス?これどういうこと?」

「そのお方は……?」


 俺がジブリールの雑談をしていると、おどおどしながらクレアとアイビスが俺に返事を求めた、すっかり忘れていた。


「ん、ジブリールのことか?こいつは……まぁ天使だよ」

「はぇぇ……もうあまり驚かなくなってきたよ」

「私も同意見よ、もう驚き疲れたわ」


 また色々と驚くかと思っていたが、この数時間で少し耐性ができてしまったらしい、面白いのに、リアクション芸人とか目指そうぜ。


「何かこういう反応されると私の知名度って低いのかなーって感じますね……」

「まぁ、天使自体が人間の間では伝承されてないみたいだし」


 2人に反応が無かったのか、ジブリールは少し落ち込み気味だ。

 少し肩を落としたジブリールだが、ハッと何かを思い出したかのように俺の方を向いた。


「そうですよっ!アリスは何の為にあんな事をしたんですか?」

「遅ぇよ。まぁあれだ、天使(お前ら)を呼んだのはこいつを天界に連れて行ってもらうためだ」


 俺はそう言いながらアイビスを方を指した。

 ジブリールは一瞬だけ眉を動かすと、状況を理解したようで深く溜め息をついてヤレヤレというように首を横に振りながら俺を方を見直した。


「天人族ですか……まぁ、そういうことならいいですが……それだけじゃないんでしょ」

「お、察しがいいな」

「ニンゲン関係でアリスがやりそうな事は大体想像が付きますからね」


 ジブリールは過去に俺が起こした事件を思い出して遠い目をした。あの時は大変だったな、まぁアレの原因は俺じゃないけど。


「うん、じゃあ“天罰”頼むわ」

「「天罰?」」


 俺がそう言うと、聞きなれない言葉にクレアとアイビスが首を傾げた。

 天罰とはその名前から想像できると思うが、この地上の(・・・・・)生物に対して一斉に超高威力の攻撃を行う天使の固有能力の一種だ。傍から見ると、いきなり頭上から雷が落ちてきたように感じる。天罰をくらうとよほどの超人でない限りは一発で即死する、ちなみに全盛期の俺は無傷だった。

 そして天罰は対象に指定ができ、その対象の生物を一掃することができる。

 つまり、そういうことだ。

深夜に執筆してはいけない(戒め


どうも!難産が続く作者の僕ですよ!

豚(名前決まってない)の叫び声書くの楽しかった(小並感)

もうすぐこの章も終わりだなー次の話はなににしようかなーとかそんなことばっかり考えてます!


次回は一週間以内、4日以内が目標です!


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