第45話 ”聖女”アイビス
またまた予約投稿ができてなかったみたいなので手動で投下。
少女を治療したあと、俺たちは小さな洞窟の内部に移動した。ベッドを出すわけにもいかないので、数枚の布を敷いた地面に少女をゆっくりと降ろした、少女の容態は安定してきているし、もうじき目を覚ますだろう。
この場所も長く居られる訳じゃない、向こうには魔物調教師がいるからな、レッドウルフかほかの狼系の魔物の鼻を使って匂いを辿ってくるだろう。別に魔法で匂いや足跡を消すことも可能だが、そうすれば奴らはこのまま森を進み、やがてはノクタスの街にまでたどりつくだろう、あそこには治癒魔法を使えるアンジェさんがいる。
この数年で分かったことだがアンジェさんはかなり有名らしい、【ハイヒール】を使える治癒魔法使いはいまの時代ではかなり希少だ。アンジェさんを見つければどうせ攫って次の聖女に仕立て上げるんだろう。この少女は……魔物に殺されたってとこか。
「……ん」
そんな考え事をしていると少女が目を覚ましたらしい。
少女は寝起きの焦点の定まっていない目で周囲を見回し、俺たちを見つけた。目が覚めたのか、俺たちを見つけると顔を青くして小さな悲鳴を上げてあとずさった。
「クレア、どうだ?」
「ん~……青と白だね」
青と白か……なるほど、さっぱり分からん。そもそも見える心の色は個人ごとに違ってくるらしいからな、分かることは人間の心の色が色が混じっていることが多いということだけだ、大体パレットに色を全色乗せて適当に混ぜて混ざりきっていない色みたいな感じらしい。
「青は……恐怖かな?白はよくわかんないけど」
俺がそう考えているとクレアがそう補足してくれる。
「恐怖……ね」
チラっと少女のほうを見ると、ビクッと肩を強ばらせて震えだす。酷いな、まるで奴隷じゃないか……
「ちょっといい―――」
「こっ来ないで!」
わぁお、俺すげぇ嫌われてんだけど。
「だっ大丈夫だよ!ほら、ワタシタチ、アンゼン、ダイジョウブ、ナニモシナイ」
「落ち着けクレア、カタコトになってるぞ」
「は、はわぁ!」
俺とクレアの小芝居をみて、少女はポカンとしていた。
俺はもう一度、少女の方を向いて話しかける。
「大丈夫だ、俺はお前を追っている奴らの仲間じゃない」
「そ、そう!だから大丈夫だよ!」
「…………」
俺とクレアがそういうも、少女はこちらをジっと睨んで一言も話そうとはしない。
ギルドカードでも見せるか?いや、見せたところでどうにもならないだろ……
俺がどうやって少女との距離を縮めようか考えているとクレアが少女に話しを切りだした。
「あ、あなたの傷を治したのはかの……彼なんだよ!ねっだから安心して?」
「……傷を……治した?」
少女は気がついていなかったのか、自身の身体を調べ始め、自分が負った傷が一つのないことを確認して驚きに目を見開く。
「あっ貴方たち教会の犬ね!」
「えっ!?」
「わぁお」
少女はなにを同勘違いしたのか、俺たちを教会の犬と罵り、中級火魔法【ファイヤスピア】を繰り出す。俺はクレアの前に出て、少女の出した炎の槍を叩き落とした。
「なっ!?」
少女は魔法を叩き落とされた経験がないのか再度驚きに目を見開いて口をパクパクさせる。
「危ないな、恩人にいきなり魔法使うとかどういう神経してんだ」
「……うん、アリスならできると思ってたよ」
「なんか言ったか?」
「なにも言ってませ~ん」
クレアは口を尖らせてそっぽを向いてしまった、そういえば魔法を叩き落とすの見せるのは初めてだっけ。
少女の方は、そんな俺たちを見てハッと我に帰るとビクビクしながらも初めて話しかけてきてくれた。
「貴方たち、一体何者なの……?」
「ん?ただの冒険者だが?」
俺はそう言ってギルドカードを少女に投げた。
少女はギルドカードを受け取るとそのランクを見て驚いたような、感心したような声を上げた。
「貴方、Bランク冒険者なの……!?」
「正確にはB-だがな」
「そこの娘もなの?」
「私はまだE-ランクだけどね」
俺は少女からギルドカードを受け取った。どことなく距離が縮まった感があるな。
「貴方たち、名前は?」
「俺か?俺は、あー……アリス、だ」
「私はクレア!よろしくね!」
偽名を使おうかと思ったがこの少女には使わないでおこう。クレアは俺が偽名を使わないことを確認すると、ニィと笑ってから同じように名乗った。
「私は……アイビスよ、シシャルダなんて家名もあるけど。一応レスニア教なんてイカれた宗教の聖女をやっていたわ」
「アイビスか、よろしく」
「よろしくね!アイビスちゃん!」
俺たちはそういって互に握手をした。
「でだ、これからのアイビスについてだが……」
取り敢えず一息ついたところで俺がそう切り出す。
「これからのこと……ね」
アイビスは自分の立場と状況を思い出したのか、再び顔に影がかかる。
アイビスは現在、レスニア教その他大勢からその身を追われている、一度は死をも覚悟したのだとか。
「貴方たちとはせっかく知り合いになれたけど……ここでお別れね、流石に貴方たちを巻き込むわけにはいかないわ」
「うん、却下」
アイビスの舐めきった答えを俺は速攻で切り捨てる。
「俺が手を貸そう」
「相手は数多の宗教のイカれた教信者なの、たとえアリスがB-ランクの冒険者といえあの数を相手にするのは無理よ」
そうだな、大体数でいうと今この森の中で捜索しているのが数千人として、全体で見れば数万、下手をすれば数十万人は越えるだろうな。
「あぁ、まぁ取り敢えずそこらへんは大丈夫だ」
「なっ!?何を根拠にそんなこと――」
「服を脱げ」
「へっ?」
俺のいきなりの言葉にアイビスは一瞬訳が分からないような顔をしたあと、すぐさまその白い顔を真っ赤に染め上げる。かわいい。
「なっあななたなななななななな!?」
「ア、アリス!?欲求不満なの!?そうなの!?私で良ければ――」
「落ち着け、説明を省いた俺が悪かった、取り敢えず落ち着け」
俺が2人をなだめること数分、クレアは兎も角アイビスはまだ若干顔が赤いが落ち着きは取り戻したようで、軽く咳払いをした。
「そ、それで?ふ、ふふ服を脱げというのは?」
「あぁ、お前の背中見たいから服を脱いでくれ」
「あんまり変わってないじゃない!」
どうやらアイビスは納得がいかないらしい。
「別にいいだろうが、背中見るぐらい」
「服を脱ぐということが問題なの!そ、それに私はいま……」
「ん?」
「にゃ、にゃんでもない!」
あ、噛んだ。アイビスを恥ずかしさからか、顔をさらに赤らめる。
「と、とにゃ……とにかく!男性の前で服を脱ぐなんて……」
「あぁ、そういうことか」
そういえば俺はいま一応男装してるんだったよな、一応クレアは声が高いし、体格で分かるが俺は身長は低いが、声と体格からは女だと分からなかったのだろう。
まぁそういうことなら話しは早いだろう、遅かれ早かれバレるだろうし。
俺は仮面とフードを取った。魔法はかかっていないため、その喉から出るのは、男性っぽい低い声ではなく、透き通った声だった。
「ふぅ……やっぱ仮面付けてると暑いな、こっちにも冷却術式組み込んどこうかな」
「あ、クレア仮面取るの?私も取っていい?」
「あぁ、近くに人はいないし、大丈夫だぞ」
ふとアイビスの方をみると顔を真っ赤にして口をパクパクしている。どうした。
「どうしたアイビス、具合でも悪いのか?」
「アイビスちゃん、アリスの素顔に見とれてるんじゃない?しかも今のアリスちょっと色っぽいし、いや~眼福眼福~」
「はぁ?なんだそれ」
アイビスがいつまでたっても再起動しないので、俺はアイビスの頬をペチペチと叩いた。するとアイビスはハッと我に帰ったあと、俺の方をジッと見つめてきた。
「ど、どうした?」
嫌な予感しかしない。
「か……」
「「か?」」
「かわいい~~!!」
アイビスはそう大声を上げながら俺に抱きつく、いや突進してきた。そして俺はそのままアイビスに多い被される形になった。
「ハァ……ハァ……」
アイビスは頬を赤らめながら息を荒くして、両手をワキワキさせている。
そして俺は思った。
――こいつ、クレアと同類だわ……
予約投稿難しいですね(白目
どうもみなさん!4日以内なんてなかったんや!作者の僕です!
最近難産続きです、どうにかならないですかね?
次回は一週間以内です!もうなにもいうまい……
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