第44話 隻腕の聖女
うっ、文章の出来栄えが……!
リリカルガ王国、ティリス王国の右下に位置するこの国には、ある宗教団体が存在する。その名も”レスニア教”、慈愛を司るレスニア神を主神として崇め讃えているこの宗教は、リリカルガ王国領土内の数箇所の街に教会を持っているそれなりの大きさの宗教だ。
レスニア教の教会には慈愛の神を崇めているだけあって治癒魔法をつかえる魔法使いが多く在籍しており、傷を治すポーションや病気を治す薬の類なんかも揃っている。しかしそんなものは他の教会でもまぁ一緒だ、ただ確実に他とは違った点が一つだけある。
それは”聖女”がいることだ。一般的には聖女とは治癒魔法に優れた神官のことを指す、男性の場合は聖人と呼ばれる。世界でも今現在”聖女”が在籍している宗教団体はレスニア教を除けば存在しない、そのためレスニア教はその規模をどんどんと大きくしていっている、レスニア教のトップが持つ発言力は一国の王にも匹敵すると言われている。
現在では治癒魔法を使える魔法使い自体が珍しいが、その大半が、数百年前に作られた【エイド】と呼ばれる治癒魔法か、【ヒール】の下位互換版である【エルヒール】しか使えない者がほとんどだ。それに比べてレスニア教の”聖女”は【ヒール】の上位互換版である【エクスヒール】を使える、その効果は【エイド】や【エルヒール】とは比較にならない。現にレスニア教の”聖女”の存在は世界に知られてる。
―――聖女の血を飲めば傷が治る。
こんな噂が巷で流れていた。
誰もが嘘だと言った、人の血で傷が治るのか、と。だが治った、治ってしまった、しかも外傷だけではなく、不治の病と呼ばれるものまで治してしまった。
その結果、”聖女”を巡って争いが起きた。
まずレスニア教のトップが交代した、その真実は暗殺というものだったがその理由は”聖女”を使って儲けるためだ。トップが代わってからは”聖女”の周囲の状況は一変した。
聖女の血を力を、はたまたその見目麗しい身体を巡って人々は血を血で洗う戦いが起きた。
そんな中で”聖女”は遂に逃げ出すことを決意する。
ある日、いつも通りに”聖女”が監禁されている地下牢に看守が食事と、朝の血抜きを行いに来たときに見たものは、破壊された牢屋と、切り落とされた、隷属術式が施された左腕が落ちている光景だった。
”聖女”が逃げ出したという報告は瞬く間に争いを続けていた人々に広がった、”聖女”が向かったのは通称”魔の森”と呼ばれる場所だった。他の人間は知らないが”聖女”は治癒魔法意外にも魔法は使える、そのため”魔の森”でもいつもなら何の問題もなく進めるほどの実力は持っていた。しかし他の人間はそのことを知らない、モンスターに食われる前にと、まるで獲物を狩る狩人のように人々は競い合うように”聖女”を追いかけていった。
”聖女”も、いつもなら問題なく通れるこの森も、いまは左腕がなく、さらには血も毎日のように抜かれ、さらに左腕を落としたときにさらに血を失った、魔力も少なく、左腕を落としたときの傷も完全には治りきっておらず、戦闘を続けるにも幾分か少なすぎた。
(もう……ダメなのかな……)
”聖女”の体力は限界が近い、そんななか、視線の先にモンスターは映った。レッドウルフ、それも4匹だ。冒険者ギルドからDランクの魔物として扱われているモンスターだが、いつもの”聖女”ならなんら問題はない、しかし今の”聖女”にはこのレッドウルフを倒すことは不可能に近いだろう。
”聖女”は自分の死を確信し、地面に倒れ込んだ。気力で歩いていたがその気力すらも失せてしまった。
(あぁ……私……死ぬのかな……)
レッドウルフが唸り声を上げながら近づいてくる中、”聖女”の瞼がゆっくりと閉じられた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「キャィン!」
俺は少女に近づこうとしていたレッドウルフの1匹の腹に【エアブロウ】を直撃させる。以前クリムゾンウルフに使ったときは爆散してしまったが今回は吹っ飛ぶ程度に収まっている。
そしてこの少女、こいつが恐らくデゥイが言っていた”セイジョサマー”もとい”聖女”なんだろう、しかしまぁ……こいつ、混じってるな。
レッドウルフは仲間が攻撃されたことにより、標的を俺とクレアに変更した。俺はデゥイにもらったアレがあるからこの森の魔物には基本襲われないはずなのだが、このレッドウルフたちは隷属させられてるな、魔物調教師か。ま、レッドウルフなんざ元々大したことはない魔物だしそんなに驚異にはならないが。
魔物調教師というのは、その名のとおり、魔物を調教して使役する奴らの俗称だ。まぁ調教と言っても隷属術式と呼ばれる魔術式を使って無理やり屈服させているだけだが……
このレッドウルフたちに与えられている命令は聖女の捜索と捕獲だろう、人間が視界だけで一人の人間を探すより鼻の効く狼系の魔物に捜索させたほうが効率が良いからな。
レッドウルフたちは俺たちを視界に捉えてグルルと威嚇し始める。まぁ、襲ってくるなら仕方ないな。
4体のレッドウルフたちはそのまま襲ってくるかと思いきやバラバラの別れて森の木々の間や茂みの中に隠れる。おそらくこいつらの主人が教え込ませたのだろう、レッドウルフにこれほどの知能は存在しない、したとしても待ち伏せ程度だ。魔物が戦術を使うというのも魔物調教師の強みの一つだな。
そして茂みや木々の後ろから飛び出した2匹のレッドウルフが俺に、もう2匹がクレアに襲いかかる。
「【エアサイズ】!」
「【エアランス】!」
俺は古代中位風魔法【エアサイズ】を使用した、透明な鎌の刃がレッドウルフの首を刈り取る。俺は2匹とも落とせたが、元々この魔法は奇襲用の魔法だから本来の使い方とは大分かけ離れている、まぁ小回りが効くから俺は好きだが。しかしクレアの使った風の槍を生み出す【エアランス】は、無駄に8本も出したにも関わらず1匹にしかあたっていない、というかかすっただけで死んでない。俺は手持ちのナイフをレッドウルフの頭部に叩き込む、もちろんクレアやそこの少女には当たらないようにはしているが……クレアの作った風の槍が俺の足元に刺さってるんだが、少女のすぐ傍にも刺さってるんだが、勿論刺さりそうになったら助けるつもりだったが……
「お前もうちょっと考えて魔法使ってくれよ……」
「え、えへへ」
「笑い事じゃないぞ。ったく……」
「で、でもほら!アリスが助けてくれたし!」
「俺はクレアに殺されそうになったんだが?」
「うっ……反省してます……」
ショボンとするクレアを置いといて俺は件の少女の元に歩み寄る。偽名に関してはデゥイに会ったあたりから面倒になっていまは普通に呼び合っている、もちろん街に戻ったらまた偽名(笑)を使うことになるが。
そしてまぁ少女の方なんだが、左腕の切断の傷をまぁまぁ酷かったが、何も履いてないため足もボロボロで身体中擦り傷だらけだ、顔を青白く生気がない。危険な状態だな。
『【リカバリー】【キュアー】』
まずは【リカバリー】で少女の左腕を生やし、【キュアー】で身体中についた擦り傷を治療する。
『【バイタルアップ】【ブラッドライズ】』
【キュアー】は燃費はいいが体力や失った血液は回復しない、かと言って【ヒール】系の治癒魔法だと恐らく俺の魔力が無くなる、無くならないにしてもこんなところで無駄に魔力を使う訳にはいかない。【バイタルアップ】は体力の回復や免疫力を高めることだけに特化した独自治癒魔法だ、もちろん燃費は最高だ。【ブラッドライズ】も同じく血液の生産力を高めることに特化した独自治癒魔法、こちらも燃費が割と良い。手順は面倒だが、【ヒール】系の魔法を使うよりもこちらのほうが効果が高いし燃費がいい。
魔法をかけ終わると、少女は先ほどまでの死人顔が嘘のように血色が良くなり、スゥスゥと静かに寝息をたてていた。俺は取り敢えず少女を背負い、場所を移動することにした。
スランプかな?どうも、作者です。
何か上手い具合に話しが進まない、適当に設定を組んだせいか矛盾が出てくる、自分で説明したことを覚えていない、あばばばばばば!
……時間が解決してくれることを祈ろう……
次回更新は一週間以内!できれば4日以内です!それでは!