第42話 冒険者始まりました。
やってきました俺の(2回目の)人生2度目の長期休暇、俺は今年も去年と同じくこの一ヶ月は冒険者として活動するつもりだ、服装は去年と同じく全身真っ黒、【カリング】で髪の色も黒に染めた、そして俺が着ている黒い外套には去年のパーシオンと戦ったあのアラクの迷宮で手に入れた魔法道具の一つである、周囲の温度を下げるぶっちゃけエアコンのような魔法道具を仕込んでいるため結構快適だ、去年は涼しげな顔してわりと汗だくだったからな。
そしてさらに今年はクレアまでも冒険者になるという、あの冬の約束は忘れていなかったようだ。そういうわけでクレアにも俺と同じ様な格好になってもらった、クレアの着ているマントは黒というよりかは若干灰っぽい感じの色合いだな、クレアのマントにも俺と同じ魔法道具が仕込まれている、こっちは俺のお手製だ、実をいうとこっちのほうが性能が良い。クレアの緑色の髪も俺同様【カリング】で茶色になっている。
俺が古代魔法や独自魔法を使うたびにクレアの目は輝いていたが、最近は慣れてきたのか、ちょっと輝くくらいになった。
そしてクレアはなにかとやらかしそうなので、今年はあるものを作ることにした。
「ほらクレア、これ付けとけ」
「これって……仮面?」
クレアに手渡したのはが質素な仮面、これは魔法付与という技術を使って毎度お馴染みの【ハイド】とその他多数の魔法を付与した仮面だ。視界を確保するための穴は空いていないがちゃんと見える、むしろ補正とかかかるようにしてあるぞ。
別に必要は無いだろうがクレアはマントのフードがすぐに外れそうだからな、そのための保険だ。仮面は硬いし防具にもなるから一石二鳥だな。
一応冒険者になる許可は、危険なことをしないという条件付きで院長から貰っている。アンジェさんは最後まで反対だったがな。
俺のランク一応B-なんだけどな、これ言ってないけど。冒険者はCランクで一人前、Bランクで一流、Aランクで天才、Sランクは人外、それ以上は化物と言われているからな、ちなみにSランク以上の冒険者は数える程しかいない。俺の昔のランク?SSSですけど何か?
クレアと同じ様な仮面を俺も付けて、孤児院を出る、去年みたいに屋根伝いに走る訳にはいかないので、今回は【ハイド】をこの状態でも効くようにかなり強めにかけて、ある程度離れた場所まで移動する。
クレアはいつものように俺に抱きついてはこないが、俺の服の裾を掴んで後ろを歩いてくる、小動物かお前は。
そして久しぶりに冒険者ギルドの建物までやってくる、ほぼ一年ぶり。クレアには俺が”レイク・ドレヴィア”という偽名を使っていることを話して、孤児院に戻るまでは俺のことを本名で呼ばないようにしてもらっている。いまからクレアのギルドカードも作るが、もちろん偽名を使うつもりだ、面倒事は避けたいからな。
俺が懐かしい扉を開けて中に入ると同時に、男の怒声が聞こえてきた。
「おい!どういうことだよ!」
「いえ……ですから―――」
みると一つの受付で受付嬢と冒険者が言い争っているようだった、といっても冒険者の男が一方的に難癖をつけているだけのようにも見えるが。
その男の格好に俺は目を細める、全身真っ黒、俺とそっくりだった。
「このギルドカードは偽もn―――」
「じゃねぇっつってんだろうが!偽物だと言うんなら証拠だしてみろよオラァ!」
「証拠もなにも、こうしてギルドカードの情報を読み込めないことが何よりの証拠だと思うのですが?」
「んなもん証拠になるかよ!」
「なりますよ」
「じゃあ何か?俺様が”黒剣”のレイク・ドレヴィアの偽物だとでも言いたいのかアァン!?」
えぇ……なにこれどういう状況?クレアもパニックですげぇキョドってんだけど……いや俺もパニクってるわ。
え?レイク・ドレヴィアって俺……なんだよな?で、”黒剣”っていうのは俺の二つ名かな?二つ名は有名な冒険者につくことがある称号のようなものだ、昔の俺でいう”勇者”がそうだな。
いやまぁ、どう考えてもこいつ俺の名を語った偽物です本当に有難うございます。
「まぁ……そうですね」
「はぁ!?てめぇいい加減にしねぇとぶっ殺すぞアァ!?」
「テメェこらさっきから聞いてりゃあうるせえんだよ!」
受付嬢と冒険者のやり取りを聞いてしびれを切らしたのか、酒場にいた屈強な冒険者の一人がその巨体を立ち上がらせ、偽物に詰め寄る。
偽物は、自分よりもデカイ大男の気迫に恐怖したのか、さっきまでの威勢はどこかへいってしまったようだ。
「あっあぁ!?なんだてめぇは!」
「ただの冒険者だよ」
「……てめぇランクはいくつだ?」
「C+だ」
偽物は大男のランクを聞くとニィと口の端を釣り上げて見下したような笑みを浮かべた。
「ハッ!たかがC+ランク如きがB-ランクの俺様に意見しようなんざ百年はやあぁげらぁ!?」
偽物はそのまま大男を侮辱しはじめるが、言い終わる前に大男に殴り飛ばされて宙を待った。床に叩きつけられてピクピクしているところを見るとどうやら気絶してしまったらしい。
大男はそれを見ると気が晴れたようで、また酒場のほうに戻っていった。渋いなあのおっさん。
まぁそれはさておき、俺はクレアを連れて受付まで行く。列は一番少ないところに並んだが、偶然にもさきほど偽物に絡まれていた受付嬢の場所だった。
順番が回ってくると、まず怪訝な目を向けられた、つらい。
「あーえっと、新規なんだが……」
ちなみに仮面にはいつも俺が使っている声を変える魔法も付与されているため、俺の声は例に漏れず低い声だ、クレアもいまはいつもよりも少し低い、大人っぽい感じの声になっているはずだ。
「あっはい、新規の方……ですね?それでは――」
「あ、その前にちょっといいか?」
「なんでしょうか?」
「確かCランク以上の冒険者の紹介があれば新参はE-からスタート出来るんだよな?」
「はい、確かにCランク以上の冒険者の方の紹介があれば、E-ランクからのスタートになりますが……もしかしてあるのですか?」
「いや、まぁ紹介するのは俺なんだけど」
「……はぁ」
俺はイマイチ話しの飲み込めていない受付嬢に自分のギルドカードを手渡した。俺がギルドカードを持っていることに驚いていたが、そのカードに書かれている名前をみてさらに目を見開く。
「大丈夫だ、さっきみたいな偽物じゃあねえよ、確かめてみな」
受付嬢は俺の言葉を聞くと、よく分からない機械にギルドカードをかざした。そして受付嬢の顔が驚愕で染まる。
「あの……レイクさん……なんですか?」
「あぁ」
「”黒剣”の?」
「それは知らんが、B-ランクのレイク・ドレヴィアは俺だよ」
「ほほほ本物!?」
受付嬢は先程までの冷静さを失って声を上げた、そしてその声を聞いて周囲の人間が全員こちらを向く。
そしてギルド内がざわざわとし始める。
「あー取り敢えず手続きしてもらえる?」
「あっはい!新規……なんですよね?」
「あぁ……ほらアーシャ、ここに手をかざしてみろ」
「え?おぉ、私はアーシャだった……」
クレアとは事前に打ち合わせして偽名がアーシャになっている。苗字は面倒だから俺と一緒でいいか。
クレアが手をおき、ギルドカード作られるときに、【コンシール】を使って名前を変えておく。
出てきたギルドカードは大体こんな感じだ。
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アーシャ・ドレヴィア 女
ランク:E-
受諾依頼
なし
==============
ちゃんとE-ランクからになってるな、良し。
クレアはギルドカードを受け取るとそれを穴があくかと思うほどジッと見つめた。仮面でその表情は分からないが、たぶん目が輝いてるんだろうな。
とりあえず、去年のようなことは起こらないことを祈ろう、例の誘拐事件後から万が一に備えてクレアにあるものを付けてはいるが……
クレアの戦闘能力は未知数だし、今年はあまり危険な依頼は受けないようにするか。
どうもみなさん僕ですよ!
ちょっと最近グダり気味なので、どこかで巻き返して行きたいですね!
次回は一週間以内!目標は土日です!