第41話 茶番乙
ちょっと矛盾があるかもですがスルーお願いします(懇願)
新たにマリアが加わったが、これまでとさほど変わったところはなかった。強いて言えばクレアが俺に抱きついてくるように、マリアはレイザックに抱きついていた、ときどきその様子をみて周囲の女生徒がヤバそうな雰囲気を漂わせている。マリアはそれに気付いていないようで無邪気にじゃれているつもりなのだろう、レイザックはそれに気付いているようで冷や汗を流している、俺は他人を装って遠くを眺めている、クレアはいつもどおりだ。
ある日のこと、昼食を食べ終えて俺たち4人はそこらをブラブラしていると、広場で言い争っている声が聞こえてきた。片方の声は知らないが、もう片方は聞いたことがある、同じクラスの貴族(笑)だ。
「なにやってんだ?」
「んー、多分クラスの序列が原因じゃないかな?」
「あぁ……なんかあったな、そういうの」
この王立シルバニア学院には、各学年の各学科(商業科除く)のクラスに序列がついている。序列といっても差別的なものではないらしい、この序列は元々は各クラスにどれだけ優秀な人材が集まっているかを手早く見分けるためのものらしく、始めは順位も公開されてなかったらしいのだが、過去にその序列の情報が漏れ出したらしく、そのときは少し騒ぎになったのだが、生徒たちは逆に自分たちのクラスに順位が着いたことで序列をあげようと努力し始めたらしく、一時期は生徒の実力がかなり伸びたことがあったらしい。いまでもこうしてクラスの序列が公開されるのはそういう意図があってのことなのだろう。
しかしまぁ、今となってはその伝統も廃れてしまい、上位クラスの貴族が、まるで支配者のように威張り散らすようになってしまったらしい。読めてたわ。
その結果が俺の目の前の騒ぎらしいのだが……
「ハッ!貴様のような能無しには4位という微妙な順位がお似合いだ!」
「何を!貴様こそ同じクラスに実力者がたまたま揃っていただけで、貴様自身は大したことは無いだろうが!」
「ふん、負け犬の遠吠えだな」
なにこれ、小学生の喧嘩か何かですか?
君たち一応13歳もしくは14歳ですよね?しかもこの世界の14、5歳は結構な大人なんだぞ―昔の知識だけど―、それがお前……なんか可哀想になってきた。
「それにお前は俺の8組のことをそういうがなぁ、6組だってあのフェイシスやオクタヴィアがいるだろうがっ!それに最近ラキュール伯爵の御子女も編入してきたそうだな?彼女もかなりの手練だそうじゃないか、学年の有名人が勢ぞろいしているクセによくもまぁ8組のことが言えたもんだなぁ、あぁ?」
「ぐっ!」
クレアとレイザック、それについ最近編入してきたばかりのマリアも有名人なのか。俺は入ってないな、良し。それにしても俺のってなんだ俺のって……お前8組の何なんだよ……
それにしても貴族(笑)の相手が誰なのか気になったため、隣りに佇む爽やかイケメンのレイザックくんに聞いてみる。
「あぁ、あの人はアンディ・シシナンティ、シシナンティ子爵家のご長男だよ」
レイザックは小さな声で俺にそう言ってきた。
あの貴族(笑)といい、あのシシ……シシ……貴族Bと言い、なんでこんな馬鹿ばっかなの?どうでもいいじゃんそんなの。
「で、実際どうなの?」
俺も小声で話し、俺とレイザックの小声による会話が始まる。
「実際って?」
「実力だよ、あの貴族Bの」
「貴族Bって……シシナンティ様のこと?」
「様とか付けるんだな」
「まぁ、一応ね、ここには人が大勢いるし、万が一目を付けられると厄介だし」
「まぁ……そうだな」
貴族に目を付けらたことは過去に何度もあるし、それのせいで失ったものもあるし、俺はレイザックの言葉に頷いた。
「で、実力は?」
「噂ではあんまり高くないらしいよ」
「そうか、貴族(笑)と貴族Bなら貴族(笑)の方が強いのか?」
「貴族(笑)ってもしかしてテオラドル様のこと?」
「そう、そのテオなんとかいうやつ」
「(あ、憶える気無いな)まぁ、そうだね。テオラドル様はああ見えて結構実力あるし」
へぇ、貴族(笑)って実力はあるんだ、意外すぎる。
そんなこんなで話し込んでいると、貴族2人の言い争いがそろそろ終わるらしかった。いつの間にか周囲には野次馬と思しき生徒がいくらか集まってきていた。
そして貴族Bがこちらを指差した。野次馬がさっと横に割れる、貴族の指の先にはポカンとするクレア。そして貴族Bは続けた。
「なら!俺が勝ったらフェイシスを俺のクラスに貰おうか!」
……は?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
そして次の日、場所は訓練場、どうやら貴族2人は言い争いの挙句、クラスの優秀な人物を1人ずつ賭けて勝負することになったらしい。そんなことをして良いのか、と思ったのだがまさかの公認、まぁ学校は一つのクラスに優秀な人物が集まるのは良いことだと思ってるらしいからな、さすがに1クラスが50人にもなるようだと、流石に多すぎるので、1クラスは最高45人となっているらしい、まぁこういうこと自体が滅多に起こらないらしいのだが。
訓練場にはあの場にいた野次馬と、どこからか噂を聞きつけたのか他の学年学科の生徒までいた。
そして最前列には被害者のクレアと付き添いで俺とレイザックとマリアが一緒にいる。クレアは呑気に俺に頭を擦りつけている、猫かお前は。
訓練場内のグラウンドには、貴族(笑)とその取り巻きっつーか仲間?が4人いる、対する貴族Bも同じ人数がいるみたいだ。俺たちの反対側の最前列の席には向こうが出してきた男子生徒が退屈そうに座っている座っている。聞くところによるとあいつも貴族らしく、男爵家だそうだ、名前は忘れた。
しかしまぁ、本当なら貴族(笑)じゃなく俺が直接あの馬鹿共を殴り倒しに行きたいところなんだがな。なにがフェイシスを貰うだよ、なにが賭けだよ、クレアをモノ扱いしやがって、もしレイザックからあの事を聞いてなかったら俺があいつら全員締め上げてこの学校の頂辺につるし上げてやんのに。
そして貴族共の勝負が始まった。今回は学院祭で使ったあの3つの球が埋められた腕輪ではなく、自分の魔力をそのまま障壁として展開する腕輪らしく、その腕輪で展開された障壁に一定以上のダメージを受けると敗北になるらしい。相変わらず良くできた道具だな。
先制は貴族(笑)からだった、貴族(笑)が炎を出しながら突進。なぜ突進したし。
相手側は炎を少し浴びてしまったが貴族(笑)の攻撃を軽くいなして水魔法で連続で放って迎撃する。おっ、貴族(笑)がフットワークだけでそれを避けたぞ、まぁ全部という訳にはいかないが1割以下なら良いとこなんじゃないか?そして貴族(笑)側の男子が風魔法を放って貴族Bの生徒一人の自由を奪う、その隙に違う男子が土魔法で飛礫を放つ、放たれた飛礫は風に巻き込まれて相手側の男子生徒を滅多打ちにした。そして飛礫を受けた男子生徒は身体を硬直させて地面に倒れ込んだ、どうやら一定以上のダメージを受けたらしい、なるほど、ああなるのか。
しかし1人を倒して油断したのか、貴族(笑)側の男子2人に貴族B側の男子生徒の火魔法が直撃し、地面に倒れる。……あいつらマジかよ、戦闘中によそ見とか……ありえん。
しかしそこからは3対4、貴族(笑)も奮闘はした、いや結構本気で頑張ってたぞ、最終的に1対3になっても粘ってたし、どんだけ向こうの男子生徒が欲しいんだよ。
そして遂に――
「ぐぁっ!」
貴族(笑)が地面に倒れた。結果は敗北だった。
どういう仕組みなのか、決着がついたことで腕輪の効力は切れたようでさっきまで倒れていたやつらものそのそと起き上がっていた。貴族(笑)も動けるはずだが、地面に手をついている、よほどショックだったんだろうな。
貴族Bは貴族(笑)を見下ろして勝ち誇ったような顔をしている、ドヤ顔うっざアイツ。
そして貴族Bはこちらをむいて手を差し出し、こう言った。
「さぁ!僕のクラスにおいで!」
……あっ、吐き気してきた。周囲をみると男女関係なくちょっと吐きそうになってる、しかも貴族Bは気付いてない。そしてクレアは右手をそろりと挙げてその言葉に返答した。
「あのー……私は8組に行くことに承諾してないのですが……」
場が静まり返る、グラウンドにいる連中も意味が分からないといったような表情をしている。
そしてその後ろから溜め息を漏らしながら、例の男子生徒が貴族Bに聞こえるようにこう言った、訓練場は静まり返っているため、あまり大きい声ではなかったが、ちゃんと聞こえた。
「あのさぁ、クラス間での決闘にそのクラスの生徒を賭ける場合はさ、その生徒の了承を得ないといけないのよ、言ってること分かる?」
言い方腹立つなあいつ。
まぁつまりはそういうことだ、今回は勝敗がどうであれ、クレアや向こうの男子生徒が移動することはない、だってそうだろ?勝手に決めて勝手に移動とか理不尽すぎる、ちゃんと校則には載っているらしいぞ、まぁ俺とクレアはレイザックから聞いて初めてしったんだけど。向こうの男子生徒も知っていたみたいだが普通知らないと思うぞ。
あいつらはクラス間での決闘でクラスの生徒が賭けられることだけしか知らなかったのだろう、まぁ勝負が終わるまでそれを言わなかったのにも理由はあるがな。
「なっなら決闘をするまえに言えばいいだろう!?」
「お前どうせそうなったら無理やり承諾させに行くだろうが、ま、多分これが最後の決闘になると思うケド」
「どういうことだ!?」
「知らないの?過去にそういう事件があってずっと問題視されてたんだよ、それでも決闘をやること自体が無くて今回が数年ぶりみたいだし?最近が学院も忙しいみたいだったけど、今回で思い出してこれを機にすぐにでも廃止されるんじゃないかなぁ」
言い方は腹立つがその通りだ、まぁそんなわけで今回のこれはただの茶番だ。
そして貴族Bの言葉で気分を悪くしたのかクレアはさらに猫みたく俺の胸に顔を埋めてきた。
……最近クレアがアホの子化しているような気がするんだけど俺だけか?
その後、クラス間での決闘制度が廃止されたのは言うまでもない。
はいみさなま僕ですよ!
今回は割りとネタに苦しみましたが、なにげに全く出番がない貴族(笑)くんを引っ張り出してきました!僕もよく名前を覚えていません!
次回からは新章にしようかな?どうしようかな?
次回更新は一週間以内を保険として4日以内には上げたいところですね……2日はキツくなってきましたよ……