第38話 それは鮮やかな緑色
前半にちょっと残酷描写、アリスの過去が入ります。
そっち方向に耐性がない人は真ん中の◆◇まで飛ばしてね!
あれはたしか、こっちの世界に来て1年目のことだった。冒険者になって好き勝手暴れるうちに、いつのまにか俺はAランクを突破していた。その時期に俺がパーティを組んでいた冒険者がいた。男2人女2人のバランスのとれたパーティで、その中の元リーダの青年と、活発そうな少女がカップルだった。そして俺はもう一人の女冒険者、エリンに恋をしていた、多分初恋だった。そして時を重ねるうち俺たちは相思相愛になり、付き合うことになった、勿論と言っていいのかは知らないが、やることだってやった。
そうして俺たちのパーティは2組のカップルで構成されることになった。
他の3人のランクもB+~Aとかなり高ランクで、俺たちは一躍有名になった。しかしそこで俺たちは国に目を付けられた、1つではなく、複数の。その中で俺たちを執拗に軍へ勧誘してくる国がいた、俺たちの戦力は凄まじいからな、軍事力の強化の為だろう。それにエリンは魔法使いとして有名で、もう一人の女冒険者h治癒魔法使いとして有名だった、男の冒険者もそこそこに有名だった。俺か?俺は万能みたいな意味の異名があった気がする、実際なんでもできたし。
しかしその国の勧誘はしだいに強引になっていき、結論だけ言えば、他の国にとられることを懸念したある一つの国は、俺たちを抹殺することを選んだ。相手が用意したのはAランクと同等の力を持つ自国の騎士団、魔道士団。俺たちは罠にハメられ、襲撃された。
俺は強敵と判断されたのか、他の3人と引き離され、多対1の戦闘を行った。しかしその頃の俺はまだ甘かった。殺人には抵抗があった、だから相手を気絶させるのにも時間がかかってしまった。俺がエリンたちのいる場所に駆けつけたときはすでに遅かった。
丁度、最後に残ったエリンが相手の騎士に切られる瞬間だった。咄嗟に相手の騎士を吹き飛ばし、エリンを抱きかかえ、治癒魔法をかけるが効果がうすい、【ヒール】系治癒魔法は相手の体力がすくないと効果を十分に発揮しないそうだ、俺はあとでそれをしった。
俺に抱きかかえられながら、エリンはかすれるような小さな声で俺に「ごめんね」と呟いてから、静かに息を引き取った。
初めて人を殺した、特に何も感じなかった。俺たちを襲った国を潰した、でもあいつらが帰ってくることはなかった。
それから数ヶ月、とある人物の手を借りたが、俺は少しずつだが回復していった。だが、国に雇われた豪華な装飾鎧を身につけた騎士や魔法使いをみるとあまりいい気分にはなれなかった。その頃には俺もSランクの冒険者としてかなり名前が売れており、なんか知らんが女によくモテた、ほとんどが地位や名誉、金に釣られた女だったが。
そんな中でも純粋な子もいた、名前はアンナ、小回りの効くシーフとして活躍するCランクの冒険者だった。そうだな、ラノベに出てくるチョロインみたいな感じだ、俺が気まぐれで助けたときに惚れたらしい、知らんがな。悪い気はしなかったが、俺はまだエリンのことを引きずっていた、死んだ奴をすぐに忘れるような強さをその時の俺は持っていなかった。
しかし平和だった、いつか、俺はエリン以外の別の女を好きになる日がくるのだろうか、もしかするとそれは……とかそんな風なことをのんびりと考えていたときの出来事だった。
犯人は当時俺が滞在していた国の第一王女だった、俺に一目惚れしていたらしい。その王女は俺がアンナと一緒にいることに嫉妬したらしく、ある人物に頼んでアンナと俺を離れさせるように頼んだらしい、その人物とはその国に所属する騎士団員で、割りと有名な騎士だった。
その騎士は王女に惚れていたらしい、だから王女が俺の話題を出すたびにイラつき、王女からその頼みごとを聞いたときに好機と判断したらしい。その騎士は王女が熱い視線を送る俺を憎んでおり、俺を失意のどん底に叩き落としたあげく排除しようとした。何故そうなるんだよ。
ある日、アンナが攫われた。置き手紙に書いてあった場所に一人でくるように言われた、来なければこの女を殺すと書いてあった。その場所は街の裏通りにある一軒家だった。俺は血のにじむ手をさらに握り締めながら、指定された部屋の扉を勢いよく開けた。
変な匂いがする、生臭い、少し血の匂いも混ざっている。
アンナと目があった。その目からは涙がこぼれ落ち、嗚咽を漏らしながら「みないで」と言い続けていた。
率直に言おう、強姦されていた、親切に俺がよく見えるように。アンナは未経験だったのか床に落ちているドロドロとした液体には赤い液体も混ざっていた。アンナの全身もドロドロに汚れ、目からは生気が消え失せていた、俺の知る元気に溢れたアンナは見る影もなかった。しかも俺が見ているにも関わらず、いまだに数人の騎士がアンナを犯し続けている。
自然と笑えてきた、涙も出てきた、そんな俺も見て、部屋の奥に座っていた騎士が笑い始めた。そして騎士は唐突にアンナを殺した、突然過ぎて俺は動けなかった……いや、違うな、人は殺した経験があるとはいえ俺は平和な日本で育ったから、まだ殺人に慣れてはいなかった、躊躇した、だからこそ反応が遅れた。
俺はアンナのことが好きだったのか、少なくとも嫌いではなかったが、動かないアンナとエリンの姿が重なった。騎士はアンナを飛び越えると罵声を吐きながら俺にも襲いかかってきた。
絶望、怒り、憎しみ、俺の負の感情に呼応して、俺の体が赤黒いオーラに包まれた。神のオーラと呼ばれる”ゼクトオーラ”を使えるようになった瞬間だった。そのオーラに阻まれて、騎士たちの攻撃は一つも通ることはなく、手軽くよこに振っただけで死んだ。
ついでに国も潰しておいた、王女からはそのときに話しを聞いた。言い訳をしていたが俺には関係なかった。
アンナの死体は丁重に葬った、俺は夜通しアンナの墓の前で泣き続けた。
その時から、俺は人を殺すことを躊躇しなくなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺が顔を蹴り飛ばしたおかげで長耳の長は鼻血をダラダラと流している。
「ぐふっ……我々が貴様らと同じ蛮族だと……?ふざけるな!」
「ふざけてなんかいないさ。そうだな、おまえらは自分たちが人間からどう呼ばれているか知っているか?」
鼻を抑えて俺を睨みながらそう言った長耳の長に俺をそう質問をした。長耳の長は俺の問に答えようとしなかったが、俺が再び蹴るような動作をとると慌てたように答えた。
「あ、亜人だろう!?だが我々は亜人ではない!」
「じゃあなんなんだ?」
「我々はエルフという種族だ!人間種や亜人種とは違う、一つの種族なのだ!」
「はい残念」
「へべしっ!?」
すごいドヤ顔でそう言った長耳の長。初めは割りといい線を行っていたがやっぱりそんなことはなかった。回答が不正解だったのでとりあえずもう一度顔面を蹴っておいた。気持ち前より強めに。
「エルフが一つの種族だと?笑わせるな。エルフはな……精霊なんだよ」
「は?」
「通称”森の守護者”、無益な殺傷を嫌い、森の奥地でひっそりと暮らすことを好む。あいつらが戦うのは総じて仲間に危機が迫ったときだけ、それも同じ里に暮らす家族だけ、他の里のエルフやはぐれのエルフは同種であっても助けない、そんな種族だ。まぁ例外はいるがな……」
「な……なにを言って――」
「つまりだな、クレアを攫うとか盗賊と手を組むとか、そんなことをする時点でおまえらはエルフでもなんでもない、そもそも魔力が純粋な人間の魔力だし。名乗るなら長耳族とでも名乗れよ」
「で、デタラメを言うな!我々はエルふべらぁ!?」
長々と話してしまったがなんで俺こいつ相手に語ってんの?ヤダ超恥ずい。俺は照れ隠しに長耳の長の顔を再度蹴り飛ばした。
「そんな事ァどうでもいい。それよりも……お前ら、何故執拗にクレアを狙う?」
アンジェさんが言っていたがクレアが誘拐されたのは今回が初めてじゃないらしい、そのときは無事に解決したらしいが……クレアにそこまでの価値があるか?いやこう言っちゃなんだけど……確かに魔力量は多いがいまの時代にそれを知る手段は現代版【ステータス】くらいなものだぞ?魔眼という手もあるが……いや、その可能性はほぼゼロだな……
俺の問に長耳の長は反応しなかった、そりゃそうだ、気絶してるんだもの。
「チッ仕方ねぇな……『【インセプション】』」
独自魔法【インセプション】は、相手の記憶を読み取ったり、反対に適当な記憶を埋め込むための魔法だ。どれだけ前の記憶も読み取れるわけではないが数百年くらいは大丈夫だったはずだ。
記憶によると、どうやらこいつらはクレアを娶って子を孕ませる気だったらしい、なんじゃそりゃ。元はどこからともなく流れてきた噂だった、ティリス王国のノクタスという街にあるアスメド孤児院という場所にエルフがいる、名前はクレア。姿は人間のようだがそれは呪いをかけられているからだ、王家のエルフと愛を育めばその呪いはとけ、真の姿に戻るだろう。そして、そのエルフの少女と子供を作れば、さらなる繁栄が約束される……
どこのお伽話だよ、クレアがエルフ?バカ言え、俺はある程度の距離なら魔力を探れるが、種族によってその魔力はすこし違う、こう……なんていうかクセみたいなものがあるんだが、クレアは完全な人間の魔力だった、エルフの魔力はまったくと言ってなかった。
まぁとりあえずこいつらがクレアを狙う理由が分かった、いずれなんとかしよう。
長耳の長を蹴りとばして考え込んでいると、後ろから抱きついてくる物体があった。クレアだ……すまん、すっかり忘れてた。しかし……俺こいつの前で殺っちまったんだよなぁ……嫌われるの確定ですやん……
しかしクレアの反応は俺の想像を覆すものだった。
「アリス……大丈夫だよ……?」
まるで、俺の心を読んだような言葉だった。
俺は抱きつくクレアの身体を話し、頭を撫でた。そして、何かが弾けた。
”ゼクトオーラ”は他のオーラとは異質の存在だ、単純に強すぎるんだ。オーラは基本的に魔力に対して耐性があるが、ゼクトオーラに関してはそれは耐性なんてもんじゃない、どっちかというと打ち消すんだ。だからゼクトオーラには魔力を使う魔法は一切通用しない、そしてゼクトオーラで触れると魔力で施された結界や封印の類は全て無効化され、砕け散る。俺が聞いたのは、封印が壊れるときの音だった。
「「え……?」」
俺とクレアの言葉が重なった。そして俺は自分の目を疑った。
クレアの耳が長かった。若干髪の色味も鮮やかになり、透き通った緑色の瞳には今は魔力が宿っている、そして……凄く懐かしい感じがした。そう、その姿はまるで――
――エルフの様だった。さらに言えば……姫様に、そっくりだった。
どうもみなさん僕ですよ!アリスの過去をちょっと出しました!僕は一体なにがしたかったんですか!
鬱描写的なものはこれからも度々入ってくる予定ですが、そこは僕なのであまりそういった感じにはならないと思います。
とりあえずしばらくはないです!書いてるとこっちまで落ち込んできますし!
さて、次回は一週間以内!土日に更新できたらいいな!
そうそう、この前日間ランキングで123位を記録しました!記録更新!しかも語呂が良いね!そして有難うございます!
それでは!お気に入り登録または評価をよろしくお願いします!