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第36話 湧き上がる感情

 学院祭が終わり、そのまま何事もなく、平和に時は過ぎていった。そうして、夏が過ぎ、秋が終わり、冬を迎えた。そして現在は1の月、年越しました。私アリス、13歳。

 俺の誕生日は院長が俺を見つけた日ということで12の月の24日だった、この世界にはないがクリスマスイブじゃないか、この日が誕生日の子供はクリスマスとプレゼントを一緒にされる恐怖を味わうことになる。

 それは兎も角、年も越して、俺たちは学年が一つ上がって中等部の2年になった、通常科目の授業は相変わらずだが、魔法関係の授業がすこし本格的になったような感じがする。習う魔法も中級魔法がちらほら、上級魔法は3年の最期の方らしいからまだまだだな。

 何事もなく時間が過ぎていった、授業は暇だったがそれでもこの平和な時間がずっと続いて行けばいいと思っていた。




 基本的に俺はクレアと一緒に下校しているのだが、それも全てというわけではない、俺やクレアの都合が合わないときだってある。今日もそんな日の一つだった。

 俺は学院の図書館に来ていた、理由はただ一つ、ここにある魔導書を読破するためだ。授業で習う部分が書いてあるこの魔導書だが、俺はただでさえ暇な授業がさらに暇になるのがいやだったので読まなかったのだが、思い返すといまの時点で俺は毎回の授業をろくに聞いてすらいない、だって既に知っているようなことしかやらないし。

 そういうわけで、すでに暇極まりない毎授業がこれ以上暇になることはないだろうと、さらに言えば心置きなくサボれるだろうとことを考えて、今に至る。

 さながら攻略本のようなこの魔導書だが、以外とみんな読んでいない。正確には読んでいないではなく内容が難しすぎて読めないらしい、なにが難しいのかは俺にはさっぱり分からない、魔導書にかいてある魔法の呪文と魔法名は理解しやすいようにルーンが模様のようにして描かれていたり、魔法の具体的な説明が書いてあるのだが、そもそもルーンを知らない現在の魔法使い、加えてわりと想像力が乏しいこの世界の住人にはその具体的な説明も分かりにくいらしい。仕方ないね。

 兎も角、ちょっと授業内容にイライラした俺は図書館に置いてある魔導書を次々と読破していった。読む魔導書は難易度が一番高そうなものからだ、伝説級とよばれるものは古代魔法の上位、最上位魔法が当たるらしいので当然存在せず、最上級魔法の魔導書も置いていなかった、あったのは上級魔法からだったため俺はそこから手当たり次第に読み進めていってちょうど日が沈みかけて空が赤くなり、図書館から締め出される頃には上級魔法の魔導書はすべて読み終わり、中級魔法の魔導書に入ったところだった。下級魔法の魔導書が思いのほか多かったため、上級もそれくらいあるのかと思ったがそんなことはなかった、上級魔法は下級魔法の魔導書の半分以下しか存在しなかった、もしかすると他にも存在するかもしれない...いつか探してみるか。

 外はどんどん暗くなっていき、俺が孤児院に帰る頃にはすっかり暗くなってしまった。しかし久しぶりに一人で帰ったな...なんというか、寂しい感じがするな。


 俺が帰ると孤児院はすこし慌ただしかった、食堂のホールにみんなが集まっており、俺を見つけたアンジェさんが酷く焦ったような顔をしながらこちらに寄ってきた。


「アリスくん!クレアちゃんとジェニーちゃんを見なかった!?」


 ……いやな予感しかしないな。


「……何があったんです?」

「……クレアちゃんとジェニーちゃんが誘拐されたのよ……!」


 ……ヤダー、嫌な予感的中じゃないですか……

 誘拐か……クレアとジェニーを?しかし何故この二人だけなんだ、今日はシイラも一緒になって帰っていたはずだが。


「シイラはどうしたんですか?」

「……こっちよ」


 俺がシイラのことを聞くとアンジェさんの顔に影が差し、泣きそうな顔になりながら俺を孤児院の医務室へ案内してくれた。……医務室?

 医務室には入ってきた俺とアンジェさんを含め他には、リュークと院長がいた。院長は入ってきた俺を一瞬みると再び視線をベッドに戻した、リュークは気づいていないのかこちらを見向きもせずベッドの方を向いてなにかを握っているようだった。位置が悪いため、ベッドに誰が寝ているから見えなかった。

 背中に冷や汗が流れる。俺はベッドに眠る人物の顔が見えるようにゆっくりと移動する。


 そこに寝ていたのは、身体中が包帯で巻かれ、所々か血で滲み、そして利き腕である右腕を失い、ベッドの上で死人のような白い顔で横たわるシイラの姿だった。


 俺がボロボロのシイラの姿を見つめているとアンジェさんが説明を始めた。

 それによるとどうやらクレアが誘拐されたのはこれが初めてではないらしい、ジェニーは今回が初めてだったらしい。いや普通は誘拐に初めてもクソもないんだがな……

 今は意識がないが、シイラの証言では、クレア、ジェニー、シイラの三人が孤児院に帰る途中、いきなり外套を纏った人間の男に襲われたらしい、人数は4人。街中でそんなことができるのかと思ったが、魔法道具かなにかで街の外まで飛ばされたらしい。その魔法道具は多分”テレポーター”と呼ばれるものだな、簡易的な転移魔術を内蔵した魔法道具で、2つで1つの対になっている。そのおかげで簡易的ではあるその転移魔術だが、全開で使うと100メートル前後を転移することができるすぐれものだ。しかし対であり、さらに100メートルという微妙な短さからあまり使われていなかったが、クレアたちを街の外壁の外まで連れ出すくらいはできてしまったらしい。気になるのはその魔法道具の出処だが。

 そして、転移した先は開けた場所だったが、そこには襲ってきた4人と似たような格好をした20人ほどの、これまた人間の男がいたらしい。その後戦闘になったらしいが、いくらジェニーやシイラ、あとクレアが優秀だとしても数の暴力には勝てなかったらしく、シイラは隙を疲れて片腕を落とされ切り刻まれ、それをみたジェニーとクレアが魔法を使ってシイラを門まで避難させたらしい、しかし襲撃者たちはシイラを構うことなく、クレアとジェニーにだけ襲いかかった、そしてジェニーは魔力が切れ、クレアは気絶させられたそうだ。

 泣きながらも門まで逃げ帰ったシイラは、そのまま門にいた衛兵に保護され、そのまま治癒魔法が使えるということでアンジェさんのところに運びこまれたらしい、そしてこの言葉を残して意識を失った……と。

 ここまで言ったあと、アンジェさんは手で顔を覆い、嗚咽を漏らし始めた。

 静まり返る部屋の中に、アンジェさんの嗚咽の音だけが響いていた。


「……みんな、すこしこの部屋から出て行ってくれないか?」


 そういったのは俺だ。内心平静を保ってはいるがこれでも腸が煮えくり返っているんだ、俺の声に若干の殺気がこもっているのを許してくれ。出て行ってくれと頼んだのはもちろんシイラを治すためだ、アンジェさんが治療したんだろうが、【エルヒール】や【ヒール】程度じゃこの傷は治らない、内蔵もそうだ。このままだと確実に死ぬ。

 リュークが俺の言葉に反論したが、俺がもう一度お願い(・・・)すると、快く退室してくれた。

 横たわるシイラと俺の二人きりになったところで、まずシイラの上半身に巻かれている包帯をゆっくりとはずしていく、現れたのは雑な切り口の切断面、アンジェさんはここにも治癒魔法を使ったらしいがそれほど回復しておらず、まだ血が滲んでいた。いや、今から使う魔法は傷口が治っていると使えないからな、こっちのほうが好都合だ、もしふさがっていたらもう一度肉を削ぐ必要があるからな。

 俺はシイラの傷口に手をあて、魔法を唱える。


『【リカバリー】』


 するとシイラの傷口が淡く緑色に発光し始め、その光がどんどん伸びていく。その光りが残った片腕と同じ長さになると、強く輝き始める。光りが治まったあとにはシイラの失ったはずの右腕がそこにあった。独自魔法の【リカバリー】は、部位欠損を治す治癒魔法だ。傷口が完全にふさがっていると使用できないが、傷口がすこしでも開いている場合は、腕を失ったなら腕を、足を切り落とされたらなら足を、目を抉られたなら目を再生させることができる、魔力消費は腕の1本や2本ならそこまで大したことはない、いまの俺の魔力量でも十分だ。

 腕が治ったことを確認したあとは、【キュアー】をシイラにかける。シイラの全身が淡く緑色に発光しはじめ、身体のあちこちに刻まれた切り傷や擦り傷、そして見えない内蔵のダメージをも癒していく。

 包帯は巻かずにはだけた服を元に戻し、部屋の前で待機していたリュークたちを呼ぶ。完治したシイラをみて3人が喜びと驚きの声を上げたあと、俺が質問責めにされた。しかしそんなものを悠長に答えている必要はない。

 俺は3人をスルーしてホールに戻る、リュークがシイラの無事を報告すると一同がほっとしたような空気を作るが、すぐにクレアとジェニーが攫われていることを思い出して元の重い空気に戻る。俺はその空気を無視して、ホールの中心を開けるように指示をだす。大体8メートルほどの空間が出来、俺はそのちょうど真ん中あたりに片手をついて、魔術の準備をする。


 床に着いた片手から魔力を操作して、俺を中心に多重の円や図形が浮かび上がり、要所要所に文字が刻まれ、輝き始める。この魔術式は簡単に言うと増幅回路、それも【エコーロケーション】専用のな、メガホンみたいなものだ。これを使うことで普段の数百倍にまで範囲を広げることができる、まぁいろいろと問題点があるがいまはそんなことを構っている暇はない。

 いきなり床に描かれる魔術式を見て周りのみんなは口を開けてポカーンとしている。

 魔術式が完成すると俺は呪文の詠唱を開始する。


「風よ走れ、見聞の使者よ我に忠誠を誓え、対価は我が力、我が知るのはこの世の姿なり、【エコーロケーション】!」


 俺の【エコーロケーション】が発動すると、それに合わせて床に描かれた魔法陣もより輝き始める。

 そして俺の頭の中に流れ込んでくるのはこのノクタスの街のすべて、そしてそれよりも大きくなる……流れ込んでくる情報量が多すぎるせいで頭痛が酷い、気を抜くと意識が飛びそうになってくる。昔は国2、3個程度なら余裕だったんだがなぁ。

 そして遂に見つけた、色は分からないが、クレアとジェニーだ。2人はここから走って数時間の洞窟の中に作られた牢屋の中にいるみたいだ、しかもこの洞窟、注意して探索しないと見つけられないような場所に出来てやがる。洞窟のなかには人間の男っぽいのが50人前後、それとエルフによく似た耳が長い人間(・・・・・・)が数十人ほどいた。この二つの団体はいまは開けた場所で向かい合っている、なにか争っているようだ。

 ここまできて、流石に俺の頭が限界だったので【エコーロケーション】を中止する、とたんに俺の身体は重しが外れたように軽くなり、床に描かれた魔術式は輝きを失い、消え失せた。俺の身体は汗でびっしょりと濡れており、床には汗の水たまりが出来ていた。


「クレアとジェニーを見つけた、ちょっと行ってくる」


 俺は少しフラつきながらも立ち上がり、俺を見守っていた孤児院のみんなにそう告げた。

みなさんお久しぶりです!僕です!ギリギリ期限内ですよ!

でもこれって一週間以内なんですかね、前投稿したのが土曜なんですけど、今日土曜なんですね?大丈夫ですね、でもギリギリですね、すいませんです!

やっぱり4月って忙しいですから...(言い訳)ともあれ、これからは割と安定して更新していけそうです!

あ、そうそう、今回から出来るだけ点の部分に三点リーダを使っていこうと思います!次回には忘れている可能性は大です!


次回更新は一週間以内、できれば2、3日以内には更新したいのですが...どうでしょうね...


それでは!お気に入りまたは評価をよろしくお願いします!

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