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第35話 学院祭(武術大会)

 例の学院祭、武術大会とも呼ぶべき大会だが、別に強制参加ではない。戦闘をすればたとえ模擬戦であっても多少なりとも怪我はするからな、いろいろと準備はされているようだが万が一はある、それでも男子はほとんど参加するようだ、特に貴族の子息なんかは自分をアピールしたいんだろうな。女子の参加率も低いというわけではないが、貴族の子女に関してはかなり低い、まぁ当たり前だろうが。

 その他にも、中等部の1年、それも魔法科は参加率が圧倒的に低い。それもそのはず、商業科は参加すら認められてない不遇な学科だから論外として、剣術科はいまの時期でもある程度戦えるが、魔法をまだ数種類、しかもすべて下級、あの貴族やレイザック、クレアは中級も使えるようだったが、中等部2年との差がまず酷い。

 魔法を使うには基本的に呪文と魔法名の詠唱が必要になってくる、しかし戦闘中に悠長に長々とした呪文を詠唱している暇はない。そこで考えられてのが”詠唱省略”と”詠唱破棄”と呼ばれる技術だ。俺もよく使う。

 詠唱省略は名前の通り、魔法の呪文をある程度省略できる技術のことで、詠唱破棄は呪文の全てを破棄する技術のことだ。無詠唱術と圧倒的に違う点は、無詠唱術は、魔法名すら破棄できるか、詠唱省略も詠唱破棄もどちらもかならず魔法名だけは省略できないという点だ。まぁ学院の生徒のなかで無詠唱術を使うやつなんて普通はいないとは思うが...

 まぁ兎に角、これらの技術は中等部の2年から本格的に習うらしい、そのため、中等部の1年と2年の間でさえ、魔法の発動する速度に差が出てくるわけだ。昔の魔法使いならいざ知らず、今の魔法使いは自分の使う魔法だけが頼りだからな、剣術科相手だと相手の攻撃の速度に追いつけずに一発KOを喰らうだろうし、同じ魔法科でも手も足も出せずに負けてしまうだろう。そういうこともあって中等部の1年は参加率が低い、まぁ低いというだけでいないという訳ではない。

 我らが6組からはあの貴族(笑)とレイザックが出るらしい、どちらも詠唱省略が既に使えるらしい。

 俺にしてみれば出場してちょっと本気を出せば確実に優勝できそうなヌルゲーなんだが、そうなると中等部魔法科の1年で優勝という史上初の出来事になるらしく、目立ちそうなので辞めた。いや、途中でわざと負けるという手もあるが...来年はその手で行くか。

 学院祭では学院のなかがお祭り騒ぎになり、いくつかの露店も出店するらしい、それを想像してかクレアが幸せそうな顔をしていた。

 学院祭の種目は各学科(商業科除く)の中等部のみ、高等部のみの”ソロ”。各学科の生徒混合の”マルチ”。全生徒混合の”オール”の三種目だ。学院祭は3週間に渡って行われ、一週目がソロ、次の週がマルチ、最後の週がオールとなっている。

 出場種目は数は自由とのことだ。レイザックはソロだけらしいが、孤児院に帰ってリュークに聞いてみたところなんと全てに出るらしい、なんともタフだな。




 そしてまぁ、学院祭当日。

 起きたらまず腰と腹と頭が痛かった。そして下腹部が生暖かい、バッと起き上がって自分の股をみると真っ赤でした。

 ...いやー、昨日からちょっと痛いなーとは思っていたんですよ、分かってました...分かってましたよ、俺が女の身体になったあの日からこの日が来るということは分かってましたとも。でも直視したくないじゃん、元男としてさ、でもこうやって自分の身体から勝手に血が流れ出ているのを見るとやっぱり痛感するね、女になったんだなぁって...

 取り敢えず【クリーン】を使って赤黒いシミを綺麗にして、アンジェさんから貰って”倉庫”に放り込んでいたアレを取り出す。男の時には「あれ必要なの?」とか思ってたコレを自分が付けるハメになるとは...俺の心の中のなにかが壊れていくような感覚がするなぁ...

 痛みに関しては大丈夫だった、いや痛いですけど。チート時代はよく怪我してたし、腹がえぐられるとか、腕吹っ飛ぶとか、初めのうちはよくそれで泣き叫んでたな、懐かしい。まぁそういうこともあって痛みにはある程度なれているため、痛みで動けなくなることは一応なかった。深刻なのは血のほうだ、なかなかの量の血液が流れでているらしく、もともと血液の量が少ないのか、すでに少し貧血気味だった。俺の知っている魔法の中には血液の生産量を増やすような魔法があったはずだが...ともかく倒れる前にはなんとかしないとな...

 今日は念の為いつもの筋トレは中止することにした、魔力とオーラのほうは関係ないのでやっておく。朝食の時間が近くなったあたりで、クレアが俺の部屋に突入してきた、クレアはここ最近、というか俺が帰ってきた日から毎日俺の部屋に突入してくる、そして俺に抱きつきという名のタックルをカマしてくる。

 今日もやられたさ、そして俺の下腹部に衝撃が走る。経験したことのない痛みだっため、さすがの俺も脂汗を滲ませながらうずくまった。そしてそれに驚いたのがクレア、目に涙を貯めながらオロオロして、俺の痛みがやわらいだあたりでアンジェさんを連れてきた。事情を説明するとクレアはアンジェさんにこってりとしぼられたた。しかしアンジェさん、俺の部屋で説教するの辞めてくれない?俺まで説教されている気分になってくるだけど、アンジェさんの説教はそのままジェニーが呼びにくるまで続いた。




 そんなこんなで現在地学校、今日はソロの予選だ、会場は訓練場らしく、無駄に多いあの訓練場が作られた理由が分かった気がした、おそらく間違ってはいない。レイザックは予選があるらしくそちらに行ったため、俺とクレアもレイザックの予選戦を見るために訓練場に来ていた。訓練場は全部で10ほどあるらしい、もうね...馬鹿じゃないかと、今はそれをフルに使って予選を行っているらしい。

 レイザックの試合が始まるまですこし他の試合も観戦しているが、あまり楽しそうではない、ヒゲのおっさんがキノコみたいな敵を踏み倒すように単純な試合だった。たまに中等部の3年同士がぶつかって白熱した試合を見せて会場が盛り上がっていたが、俺にはなにが楽しいのかよくわからなかった、分かったことといえば、試合に出場する生徒には腕輪のような魔法道具が与えられていることだ。その腕輪は使用者が怪我するのを防ぎ、尚且つ勝敗を判定する道具らしい。

 腕輪型の魔法道具の詳細は分からないが、腕輪には3つの光る球がはめ込んであり、有効打を喰らうと1つ消え、致命傷だと3つ一気に消えるらしい。その球がさきに3つ消えたほうが負け、というのが基本的なルールらしい、もちろん反則をすればその時点で負けだが。

 しばらくして、レイザックの出場する試合が始まった。すると同時に湧き上がる黄色い声、その声の主を勿論女生徒だ、おぉモテモテじゃないかレイザック君。


「うひゃー...すごいねぇ」


 クレアは両耳を塞ぎながら試合を観戦している。レイザックの相手は中等部の2年だった。レイザックの適正で一番高いものは水属性でBらしい、開始直後、レイザックは中級の水魔法【ウォーターウィップ】を使用し、相手を攻めていった。レイザックの詠唱省略の技術は相手よりも高かったらしく、相手に魔法をあまり使わせずに圧勝してしまった。その後レイザックのその対戦相手は熱い握手を交わしていた。

 その後レイザックはもう1度試合に勝利し、3回戦、相手はジェニーだった。ジェニー・ノルキアといえばこの学院では有名らしく、魔法の技術もさることながら、その容姿と性格から男子のみならず女子からも人気があるらしい。

 この試合の少し前にジェニーの戦いっぷりを初めて観たが、たしかに他の生徒と比べると圧倒的だった。なんといって他の生徒は詠唱省略だけなのに対し、ジェニーは使用する下級中級の魔法のほぼ全てを詠唱破棄できるらしく、その試合も圧倒的だった。

 さすがにレイザックも奮戦したがジェニーにはかなわず、レイザックは3回戦敗退となった。


 最終的にソロではジェニーが優勝し、他にもアインも優勝、シイラが4位、リュークが優勝、テオが3位だった。孤児院のみんな強いな、参加してるやつら全員上位陣じゃねぇか、リュークとテオは高等部の1年でありながらも優勝と3位という成績をおさめ、女子に揉まれていた。

 そしてさらに時間は進み、学院祭は無事終了した。最終的にクレアは露店のおっちゃんおばさんたちと仲良くなっていた、そりゃあ事あるごとに露店で買い食いすればそうなるか...

 やはり孤児院のみんなは能力が高いのか、その戦績がすごかった。


 ジェニーはソロで優勝、マルチは4位、オールは不参加だった。

 アインはソロで優勝、マルチで4位、オールがベスト16。

 シイラはソロが4位、マルチがベスト8、オールは不参加。

 テオはソロ3位、マルチが準優勝、オールでベスト8。

 リュークに関してはソロとマルチが優勝、オールは準優勝だった。しかしオールもわりと僅差で負け、来年はリュークの対戦相手だった高等部の魔法科の3年生がいなくなるため、もしかすると全種目優勝という記録が生まれるかもしれない。

ここにきて孤児院のみんなの実力が明らかになりました。リュークがめちゃ強になってしまいました!かっこいい!

狼の獣人はやっぱり運動神経が良いイメージがありますよね!


次回は一週間以内、春休みよ!終わるな!


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