第33話 帰還、その後日
本日はエイプリルフールですが僕は嘘をつくことができない超健全純白天使ですのであまり縁がありません(にっこり
朝、目が覚めると目の前に少女がいた。
...そういえば昨日一緒に寝たんだっけな。
俺は目の前ですやすやと眠るクレアを起こさないようにベッドから這い出て、日課の筋トレをするために、着替えて外にでる。
パーシオンとの戦闘で、俺の魔力とオーラは以前よりも大幅に増えた、やはり訓練よりも実戦のほうが成長は速いんだな。まぁ筋力の方はまだまだだが、パーシオン戦での疲労がいまになって出始めたらしく、今日は筋肉痛のせいであまり本格的な筋トレは出来なかった。
汗をかいたのでそのまま個人浴場に向かう、コウクンの街にはこんなものなかったのだが、もしかしたらティリスが特別なのかもしれない。
もう見慣れてしまった自分の裸にも目もくれず...目もくれず...俺は久々に自分の身体をまじまじと見つめた。
「俺って一応12歳なんだよな...成長遅くないか?」
どことは言わないが絶壁だった、いやちょっとある、ちょっとはある...が無いに等しい、それくらいだ。どっちかといえば無い方が嬉しいが、あったほうが良いとも思う。それにしても全体的に幼い、身長もあまり伸びてないような気もするし。...ま、まぁそのうち成長するだろう。
俺はそんな思いを胸に浴室に入る。手馴れた動作で髪を洗っていると後ろの方で扉が開く音がした。...やっぱりクレアか。
いつも俺が風呂に入っていると6割くらいの確率で一緒、もしくは突入してくる。ちなみに個人浴場は基本的に俺しか使わないし、入っているときは札てきなものを掛けてあるから問題ない。みんなは大浴場を使うし、人が入っているのに入ってくるのはクレアしかいない。もう慣れた、驚かない。俺が構わずに髪を濯いでいると浴室の扉が開いた。
髪を濯ぎ終わった俺が振り向くと、そこには案の定クレアが立っていた。しかし顔がヤバイ、この世の終わりみたいな顔をしている。
「?どうし――」
「アリス...やっぱり傷が...」
「は?」
俺が首を傾げていると、クレアが俺の方を指差す。俺が自分の身体を見ると、そこらじゅうに細かい傷跡が着いていた、ところどころには見るからにエグい傷跡もある。あぁ...パーシオンとの戦闘でついたんだっけ、そういえば消すの忘れてた。というかさっき自分の裸みたときになぜ気がつかなかった。
そうしているうちにクレアが寄ってきて俺の傷をそっと撫でる。やっぱりという事は昨日の暴走事件のときにすでに気付いてたのか。
「昨日から気がついてたのか?」
クレアは傷を撫でながらも俺の問にコクンと頷いた。
「こんなにボロボロになって...ねぇ、何があったの?」
クレアを俺を心配するような目でそう問いかけた。
「まぁ...それについてはあとで話す。その前にこの傷を治していいか?」
「え?何を言って――」
『【キュアー】』
俺がそう唱えると、俺の身体が淡い緑色の光りに包まれ、体中についた傷を消し去っていく。クレアはそれをみて驚きに目を見開き、口も開けっ放しになっている。
「アリス...それって...」
「あぁ、治癒魔法だよ。それとこのことは他言無用で頼む」
驚きを隠せないクレアに俺は笑いながらそう告げた。いつもの俺なら人前でこんなことはしないのだが、なにが俺をそうさせたのかはまだ分からなかった。
風呂から出ると、俺は院長の部屋に呼び出された。部屋の中には、院長、アンジェさん、クレア、そして俺の4人がいる。一応全員俺が女だと知っているやつらばかりだな。椅子に座って待っていると、院長がどこかからか、抜き身の短剣を持ってきた。
見覚えがある、たしかあれは俺が転移したときに落とした短剣だ。なぜこんなところに...
「これは...君のモノだね?」
「えぇ、まぁ。ちなみにそれをどこで?」
「これはクレアくんが持ってきてくれたんだよ、この街のギルドの前に落ちていたらしい」
「詳細を聞いても?」
「良いよ」
つまるところ、俺が転移したあとにそれが当然の如く騒ぎになって、街の残った衛兵と冒険者たちが手を組んで捜索することになったらしい。ほとんどのものが近くの森や草原にいて無事だったらしい、もちろん全員が無事だったといわけではないが...それでもほとんどの人間は比較的に近く、そして安全な場所にいたらしく、騒ぎは2、3日で収まったらしい。
しかしいつまでたっても帰ってこない行方不明者が数人だけいた、その中の一人にも俺がいたわけだ。まぁそんなこんなでクレアや孤児院のみんなが必死になって俺を探したところ、冒険者ギルドの近くに俺の短剣が落ちていたといわけだ、その短剣が俺のものだと分かったのはクレアだからだろう、一応クレアは俺が短剣を持っているのを知っていたしな、なにに使っているのかは知らないようだったが、察しはついていたのだろう。
そして持ち帰って、俺が帰ってこないまま一週間が過ぎた頃、街では帰ってこない行方不明者は全員死んだとみなされ、捜索が打ち切られた、いつまでも街の戦力を削いでいるわけにも行かないしな。クレアはそれに納得がいかなかったらしく、”魔の森”にまで探しにいこうとしていたらしい。クレアはその日も、次の日も何を口にせずに俺に部屋に閉じこもってしまったらしい。鍵が開いていたのは俺が返ってくると信じていたかららしい。そして8日目の夜、クレアが疲れて寝ている間に俺が帰ってきたと...
「まぁ、こんなところだね」
「なるほど」
「それで、君に何があったのかを聞きたくてね、聞かせてもらえるかい?」
院長め...それはどちらを選んでも強制的に”はい”を選ぶしかない選択肢じゃないか、”いいえ”を選んでも「まぁまぁ、そう言わずに」とかいいながら同じ様な質問を続けてくるんだろう?わかっているさ、だから俺はきちんと答えてやるさ。
「崖から転落して気を失って、気がついてからそのまま一週間ほどかけてこの街に戻ってきました」
ただし本当のことを答えるとは言ってない。多少無理があるがゴリ押しで行かせてもらう。
「えっと、それは――」
「崖から転落して気を失って、気がついてからそのまま一週間ほどかけてこの街に戻ってきました」
「あの」
「崖から転落して気を失って、気がついてからそのまま一週間ほどかけてこの街に戻ってきました」
「ちょ」
「崖から転落して気を失って、気がついてからそのまま一週間ほどかけてこの街に戻ってきました」
「分かったよ...私の負けだよ。説明は私のほうでなんとかしておくよ...」
ゴリ押した。院長も観念したのか肩を落としながらそう言った、すまない院長、後悔はしていないし悪いとも思っていない。
「それでアリスちゃん?あなた...冒険者になってるの...?」
院長の話しが終わったと思いきや、お次はアンジェさんの御話が始まるらしい、背中に鬼神が見えるんだけど。あ、顔を般若に見えてきました、ヒエー。
「はい」
否定しても面倒なので、ここは素直に肯定しておく。院長とクレアは「やっぱりな」というような顔をしているが、アンジェさんは手で顔を覆いながら溜め息をついた。
「アリスちゃん...いますぐ冒険者を辞めなさい」
「え、なんでですか?」
俺がすっとぼけてそう返すとアンジェさんは溜め息を追加した。
「あなたは、一国のお姫様なのよ?それが冒険者だなんて...」
あ、その勘違いまだ解けてなかったんですか?てっきりこの一週間でクレアとか院長が解いているものだと思ってたんだが。
院長とクレアは口を押さえてプルプルと震えている、院長は我慢しすぎて顔真っ赤だ。
...そろそろアンジェさんが可哀想だな、ここらでいっちょ誤解を解いておくか。
「あぁ、アンジェさん。俺は一国の王女とかじゃあありませんよ、ただの一般人です、孤児ですけど」
「えっ」
「まぁそれでもアリスくんが女の子なのは変わりないけどねぇ」
「たしかに女の子一人で冒険者をするのは危険だと思うので私も冒険者になります」
俺がアンジェさんにそういうと、さっきまで笑っていた院長とクレアが真顔になって俺に続いた。いや、ちょっとまて、最後のは――
「クレア?お前何言って――」
「それがいいね、クレアくん、頼めるかな?」
「はい!」
「ちょ――」
「でもあまり危険なことはしないようにね」
「分かりました!」
「...アリスちゃんはお姫様じゃない?...え?じゃあ私はいったい...」
え、なにこれ。
3章スタートしました!なにをするかは決めていません、勢いで行ければなと思っております!
一応舞台は学園に戻るかと思いますが...!
次回は一週間以内、大まかなストーリーを考えて行きたいです!
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