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第27話 アラクの迷宮

 あれから俺は、受付嬢のミンクさんに言われた道具屋に行き、アイテムバッグを購入した。購入したアイテムバッグはそれなりに良いものらしく4万ジル、金貨4枚した、そしてそれを2つほど購入したわけだ、2つ買った理由?もう1つは予備だ。

 まぁそれは置いていて、俺はいま、そのアイテムバッグを肩に担いで、森の奥地にある迷宮、通称”アラクの迷宮”の目の前にまで来ている。ここまでの道はすべて整備されており、この洞窟のような入口の先がアトラクションだと言われても、何もしらない人なら彼氏彼女と一緒に入ってしまいそうな雰囲気だ。

 現に、アトラクションではないのだが、これから迷宮に潜る冒険者を標的にした商人たちが露店のようなものを開いている、万が一に備えて護衛も雇っているし割と本気だ。

 売っているのは主にポーションとか砥石とか携帯食料とか、迷宮を潜るために必要なものばかりだな。

 あとは、ノクタスの街にもいたあの霊獣車もいるな。おそらく迷宮から出てきた冒険者を街まで届けるような仕事をしているんだろう。あれ?これもしかして逆もあるんじゃないのか...チッ、きちんと調べておけば...

 まぁ兎に角、俺はその露天商たちを無視してそのまま洞窟内部に入る。

 しかしまだ迷宮は始まらない、そこにいたのは巨大な鬼の石像、ま、ただの石像じゃあないな、魔力が通ってる、ゴーレムかなにかの類だろうな。

 洞窟の内部には巨大な両開きのドアがあり、その両脇に門番のような形の巨大な鬼の石像。どこの地獄門ですかこれは?

 俺が扉の前まで移動すると、右の石像の目が光り、唐突に喋り始めた。


「汝、我に力を示せ」


 ミンクさんの話しでは、ギルドが発見済みの各迷宮の入口には門と門番が設置されているらしく、その門番にギルドカードを提示することで、迷宮の入口の門が開くらしい。

 これは、実力不足の冒険者に無茶な迷宮探索をさせないための対策であり、迷宮から魔物が出ないようにしているらしいのだが、なぜだか迷宮の外から内部に魔物が入ってくるし、街に襲撃仕掛けてくるし、前者には効果が出ているが、後者には全くの無意味のようだ。

 俺がギルドカードを出して、石像のほうに面倒臭そうに見せると、この薄っぺらいカードからなにを感じ取ったのか、石像の目が再び光り、扉が開き始めた。


「よかろう」


 な~にが、よかろう、だよ。


 扉の中に入ると、すこし歩いた場所にしたに降りる階段があった。階段の方にすこし歩くと、後ろから扉が閉まるような音がした。

 さぁて、楽しい迷宮探索の始まりだ。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




 この”アラクの迷宮”は現地点で16階まで階層が確認されているらしい、まぁこの程度の規模の迷宮なら大体数十階層くらいで終わるだろうし、この際一番したまで行ってみるか。


「おっと」

「ギャッ!」


 俺がのんきに迷宮を歩いていると横から魔物が襲ってくる、襲ってきたのはあの森でみたクリムゾンウルフ、いま俺がいる階層は2階、クリムゾンウルフは、だいたいC-かCランクの魔物だったし、まぁこんなもんか。

 迷宮は各階層ごとに環境が全く違うことが稀にある。通常は洞窟のような感じなのだが、レンガ造りの要塞の内部の様な階層だったり、沼だったり、森のなかだったりと様々だ、迷宮のなかで太陽を見たときは驚いたな。

 ”アラクの迷宮”の2階層は洞窟だった、基本的に真っ暗。俺は”倉庫”のなかから所謂暗視ゴーグルのような効果をもつ魔法道具を身につけているため、特に困らない。

 匂いで気付く魔物や電磁波やらなにやらで暗闇に耐性がある魔物にはあまり効果はないが、他の冒険者からは見つかりにくいし、こちらからは灯りの付けている冒険者は見つけやすいので、面倒事に巻き込まれる可能性が低いと感じた俺はいつもみたいにちんたら魔物と戦わず、なるべく一撃で屠っている。面倒事に巻き込まれたときはその時だ。

 飛びかかってきたクリムゾンウルフを避けて首を深く切り裂く、周囲に赤い体液が飛び散り、クリムゾンウルフはすぐに息絶えた、俺はそれを”倉庫”にしまう。え、アイテムバッグ?あれはダメだ、面倒臭いから。

 ”倉庫”からの出し入れはかなりスムーズなんだが、アイテムバッグとか例のポートはいちいち手を突っ込まないと中身を取り出せないし、魔物の毛皮とか入れるの面倒だし、というか魔物から毛皮剥ぐのがまず面倒だから。慣れないことをするものじゃないな。”倉庫”の中は時間止まってるし、あとで狩った魔物の毛皮とか全部剥ぐか。こんなときに、よくある解体してくれる便利な魔法があればいいんだが、残念ながら俺は知らない、知りたい。


「グルァ!」

「せい」

「ピャ!」


 次に襲ってきたのは熊のような魔物、ダウンベアーだな、たしか。羽毛みたいな毛皮をもつ熊だ、戦闘能力はあまり高くないが、移動速度が高い。羽毛だからなせる技なのか。この熊の羽毛のような毛皮から羽毛布団が作れるらしい。

 さっきから魔物が襲ってきてウザったいな、まぁ迷宮だから仕方ないんだが、ゴールドスプレーとかないのか。

 俺が迷宮に潜ってる目的は宝箱探しなのだが、まだ見つからない、もう少し下にいかないとダメなのか。


「お...あれは...」


 あった。

 俺の目の前には木で作られた木箱の様なもの、所謂宝箱だ。すこしだけ距離をとって魔力やらなんやらを探ってみたがただの木箱だった、ミミックではないらしい。

 俺は周囲を警戒しつつその宝箱に近付き、鍵の付いていないそれを開ける。


「来い!良い武器!」


 俺が宝箱を開けるとその中にはなんと―――


「...ッ!」


 ひのきのぼうがッ!!!

 いらねぇ、果てしなくいらねぇ、よく乾いてるから薪のかわりにはなりそうだが武器にはなりそうにないな。あれか、冒険者が持ってた木の棒がたまたま宝箱の中に入ってたのか。

 まぁ迷宮内の宝箱は基本的に迷宮が不必要だと感じたものを一時的に保管しておく場所だからな、たしか。ハズレがあるのは仕方ないと言えば仕方ないんだが...木の棒は昔でも数回しか出たことがない、迷宮に潜る冒険者の間ではある意味ネタとしての希少価値が高いものではあるんだが。いらねぇ。

 とりあえず木の棒は記念に”倉庫”に入れて置くとして、次の宝箱を探しに行こうか。

 迷宮は、各階層ごとがかなり広い、洞窟のような階層は迷路のような構造になっているし、森のような階層は、迷路にはなっていないが、下の階層へ続く階段らしきものがなかなか見つからない、そのため本格的に迷宮に潜るとなると、遅くなると一ヶ月ほど迷宮から出てこないやつもいたな。1つの階層に数日はかかるとか言ってたっけ。

 だが俺には【エコーロケーション】という魔法があるからな、よかった、覚えておいてよかった。まさか自分が魔法を使わないと周囲の地形が分からないなんて事態になるなんて昔は思わなかったからな。備えあれば憂いなしとはこのことだな。

 その後、俺は【エコーロケーション】を使いながらどんどんと下の階層に進んでいった。




 だいたい体内時計で3日経った、はず。迷宮に潜ると高確率でいま外が朝か夜かわからなくなる。まぁ当然なのだが、慣れていないと外が恋しすぎていろいろイカレることもあるとかなんとか。

 とはいえ俺も大分参っている、昔は数日迷宮に潜るなんてことはザラにあり、それほど苦痛も感じなかったのだが。確かに昔は迷宮内で野宿したときに地面硬いなーとは思ってたが、この身体になってから野宿をするとキツイなんてものじゃなかった、ただでさえ魔物に襲われないように気を張りながら寝なければいけないのに、それに加えてこの寝にくさ、そして背中痛い、腕痛い。そういえば、いつもオーラとか使って身体能力とか強化してるけど、俺の身体自体は強くもなんともない12歳の少女なんだよな、そこのところを再確認させられた数日だった。

 さて、今の階層は18階層、16階層はいつのまにか突破してた。しかし、この階層にまでなってくると、身体の疲れもあってか、魔物が強く感じる。というか1、2階層の魔物が可愛く思えてくる魔物しか出てこない、魔物の量自体は上の階層より幾分かは少ないんだが、その魔物が、昔でもかなり高ランクの魔物ばかりだった。まぁ魔物のほとんどがドラゴンとかゴリラみたいな魔物ばかりなのだが。ちなみにドラゴンと竜は別の種族だ、簡単に言えば知能があるのが竜、ないのがドラゴンだ。

 昔ならこれくらいの魔物なら指一本で十分だったんだけどなぁ、向こうも弱体化してるだろうがそれでも元々かなり強力な魔物だ、いまの俺だとキツイ。Bクラスの迷宮とか楽勝だと思っていたが...今更だが昔の俺基準で行動するのはかなり危険だな、無事にここから出られたらいろいろと勉強するか、俺の生命がいつ消えるか分かったもんじゃない。

 魔物たちの攻撃も、躱しきれなくなってきたため、外套が所々破けてしまっているし、また新しいの出さないといけないな。

 当初の目的だった宝箱だが、たしか15、いや17だったかな?その当たりで良いものを引いた。いまの俺のサイズとぴったりのレイピアだ。金色で蔦のような装飾がしてあって綺麗だった。それに見た感じ、俺が使っていたあの剣よりも良質の金属が使ってあったため、それを見つけてからは俺はそちらのレイピアを装備している。重さはあまり変わらなかった。

 そんなこんなで、なるべく魔物に見つからないように進んでいると、下の階層へ続く階段を見つけた。次は19階層か、そろそろ終わりも近いか。

 俺は疲れて回らなくなっている頭を、頬を両手で叩いて頭を覚めさせる。


「よしっ!」


 俺はその外見には似合わない可愛らしい声を響かせながら階段を下りていった。




 19階層は、遺跡のような階層だった。それにやけにひらけている。少し進むと奥の方がなにか赤く光っていた。


「...迷宮の...コアか...?」


 遠すぎて良く見えないが、あれはおそらくコアで間違いないだろう。

 いや待てよ...コアということはここが最終階層だと言うことだよな...確か最終階層には...


 そこまで考えて、ふいに、上の方から風切り音が聞こえた。


「チッ!!」


 俺が一瞬でオーラを纏って素早くその場を飛び退くと、次の瞬間、遺跡風の迷宮の床が爆音と共に弾け飛んだ。土煙が立つなか、俺はその場から距離をとり、レイピアを構える。

 ふいに強風が吹いたと思うと、土煙が一気に払われる。

 今思えば18階層から19階層までの階段が他の階層よりも長かったような気がする。

 最初の攻撃、そして何かがはばたいて(・・・・・)起きたような強風、これらの情報から導き出される答えは―――


「ゼラアアアアアアア!!!!!」


 赤いい鎧のような鱗、何故か発光している黄色い瞳、鋭い牙、爪、その独特の鳴き声。

 スカーレットドラゴン、昔の知識だが、確かSS-ランクの()だったはずだ。そう、竜だ。赤竜とも呼ばれていた。

 迷宮の最終階層には迷宮のコアとそれを守護する所謂ボスのような魔物が存在している。Bクラスの迷宮にもかかわらず、なぜ赤竜のような大物がいるのかは分からないが。


「クハハハハハ!!久しぶりの客人だ、楽しませてもらうぞ!」


 竜とドラゴンの違いは知能のあるかないかだが、知能があるかないかではかなり違ってくる。実際、本来貧弱な人間が、自分よりも強い生物に勝つことにできるのは、人間の知能が他の生物に比べて圧倒的に高いからだろう。ドラゴンが敵を見つけると見境なく襲ってくるが、知能がないため、その行動パターンは読みやすく、避けやすい、そのためドラゴンの討伐依頼は、昔なら低くてCランク程度から出てくることも稀にある。

 しかし竜は違う。竜は相手の行動を読み、さらにそれぞれ違った思考回路を持つため、竜が違うと対処方法も全く変わってくる。よく表現しにくいが、竜とドラゴンではその戦闘能力は段違いだ。ドラゴンの最低ランクがCランク前後なのに対して、竜の場合はSランク前後だ。結論から言えば、ヤバイ。


「チッ、余力を残してる場合じゃあ無さそうだな」


 俺は内心冷や汗をかきながらも外套を脱ぎ捨てる、つい上の階層までは、余力を残して戦っていたが、さすがにこんな強敵相手にまでそんなことをしていられる余裕はない。俺は全力でオーラを身体とレイピアに纏う、纏うオーラはハイオーラ、いま俺が纏える最高のオーラはバトルオーラだが、そっちはまだ実戦で全身に纏えるまでには至っていない、できてレイピア分、腕一本分くらいだな。

 俺がオーラを纏うと、竜は関心したように声を上げた。


「む...すこし雰囲気が変わったな...」


 あるほど、オーラを知らないのか。

 それならば勝機はあるのか....ならば先手必勝。

 俺はレイピアにだけできるだけ高濃度のバトルオーラを纏う、そしてそのままレイピアを竜に向かって突き刺すような動作をとる。

 突き出したレイピアからバトルオーラが勢いよく発射される、俺の得意技の1つだ。

 一応、いま現状で出来る最高の物理攻撃だが。

 しかし――


「む...なんだ?」


 弾かれた。

 その赤い鎧には傷1つついていない。いや、なんというか、ヤバくね?これ俺の技の中でもかなりの貫通力誇ってるですけど...これが通らなかったら俺のオーラによる物理攻撃は通じないも同然なんですけど。

 俺を殺したあいつから得た教訓もあるため、それによる硬直はなかったが、竜は自分に一撃を入れてこない俺に対し、先手を譲ると感じとったのか。


「ならば...我からいかせて貰おうか!」


 嫌な予感がした、直感だけで、俺は左半身にオーラを集中させる。

 次の瞬間、来たのは強い衝撃。竜は尻尾を薙ぎ払って俺に当ててきたらしいが、俺はそれだけでこの階層の壁まで吹っ飛ばされた、かなり距離があったはずだが。

 骨が折れたのか左腕と肋骨の周辺と右足が痛い、内蔵にダメージが入ったのか、口から血の塊を吐き出した。

最近誤字とかいろいろ酷い作者の僕です!感想のほうに誤字報告をして下さる方、助かっております!自分でも読み返すのですがなぜか毎回スルーしてしまいます、なぜなのでしょうか。


次回更新は21日、金曜日の18時です!戦闘は書くのが楽しいなぁ


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