第23話 門の上は死亡フラグ
前方の門の上で待機していた魔法使い、弓兵が一斉に攻撃を開始した。
魔法使いは初級から中級の魔法を放ち、弓兵はテンポよく矢を放っていく。弓兵の矢はともかく、魔法使いの魔法は炎、水、風、土などのさまざまな属性を放っているため、いまは向こうの空の色合いがすごいことになっている。
しかし、向こうの悪魔もジッと見ているだけじゃない。ふいに悪魔の正面にうっすらと壁の様なものが出現し、魔法と矢をすべてそこで止めた。あれは防御魔法の【ウォール】と呼ばれる魔法だ、防御魔法は結界魔法から派生した魔法で、製作者はたしか人間の賢者と呼ばれる魔法使いの爺だったはずだ。
だがあの魔法も一応古代魔法のはず、しかも向こうは普通に魔力を制御してるし。こっちは俺を除けば魔法武具とかいう補助アイテムに頼らないと魔法を使えない魔法使いしかいないんだぞ。だがさすがに十数人の魔法を防ぎきることはできなかったのか、悪魔の作った【ウォール】に亀裂が入り、バラバラと崩れ去り、破片はだんだんと薄くなり実体を失った。
悪魔の作った【ウォール】が消え去ると、魔法使いと弓兵の攻撃の第二陣が始まる。
悪魔はさきほどの【ウォール】で魔法の威力を察したのか、今度は【ウォール】を使わずにそのまま突っ切ってくるみたいだ。攻撃を妨げる壁がないことで後ろの魔物がところどころ攻撃をくらってはいるが倒れるまで至る個体は少ない。悪魔にも魔法や矢がいくつか当たるが何事も無いように走っている。
このまま門を突っ切るかと思われていた悪魔だが、急に立ち止まり、後ろを向いたあと、門の上に視線を移す。そして数体の悪魔はニヤリと笑い、手を門の上へかざす。その動作にハッと息を飲んだ兵士の隊長が門の上の魔法使いと弓兵に向かって大声で叫ぶ。
「逃げろ!!攻撃がくるぞ!!」
その言葉を聞いて素早く動けたのは優秀な者たちだけだろう、門から素早く退避する者、門の上を走って回避し、なおも攻撃を続ける者、しかし大多数の者は隊長の叫びをキョトンとしたような顔で聞いていた。そして後ろから悪魔の放った魔法が門に直撃し、爆発する。爆発に巻き込まれた者は粉々に吹き飛んだり、そのまま門の上から落下して地面に激突したりする。辛うじて助かった者も身体の部位を数箇所ほど持っていかれているため、あまり長くはないだろう。俺の魔法で治すことは可能だが、今の俺の魔力量でそこまでするほどの余裕はない。
しかも見たところ、悪魔は俺の予想通り弱ってはいるが、俺の思っていたほどの劇的な弱体化はしていなかった。あの悪魔はおそらく末端の末端もいいところだろうが、弱体化しまくっているいまの人間が相手じゃあ少しばかりキツいか。
そうこう言っているうちに遂に悪魔が門の敷居を跨いだ。後ろからは魔物も接近中だ。数体の悪魔はそれぞれ1体つき最前列の者が数人ずつ対応した。そして後列の冒険者と兵士が一斉に門の外にでる。本格的な戦闘の始まりだ。
俺も少し遅れて外に出ると、いきなり横から殴りかかってくる魔物がいた。豚面の魔物、オークだ。俺はオークの振り下ろしてきた粗末な槍を腰の剣を鞘から抜き、威力を殺しながら横に受け流す。オークの振り下ろした槍は俺のすぐ横に叩きつけられ、俺は槍を受け流した反動を使ってオークの首を切りつける。流石にオーラを纏ってないと力不足で切断まではいかなかったが、太い血管が切れたようで夥しい量の血を流しながら力無く崩れ去った。
俺がオークを倒したのもつかの間、倒れたオークの後方からさらに数匹の魔物が突撃してくる。右からオーク、ブラックウルフ、オーク、ボブゴブリンだ。
そしてブラックウルフが口を大きく開けて俺に飛びかかってくる、とりあえず弱点の口を無残に晒しているので遠慮なく俺はブラックウルフの口に下から剣を突き刺し、そのまま頭を真っ二つ...にするには力が足りなかったみたいでそのまま頭を串刺しにしている剣を引き抜く、どっちにしても致命傷だったためブラックウルフはそのまま横に倒れ息絶えた。俺が剣を引き抜くと同時にオーク1体とボブゴブリンが左右から追撃してくる。
オークは先ほどのオークと同じ槍、ボブゴブリンは刃こぼれが酷い剣。俺はオーラを纏ったあと、オークを槍ごと身体を切り裂き、ボブゴブリンの振り下ろす剣を足で蹴り折った。
しかし俺の腕と剣が短いのか、真っ二つにしたと思ったオークの胴体は少ししか切れていなかった。オークは少し胴体が切れて体液が周囲に飛び散る、ボブゴブリンは俺が剣を蹴り折ったのに動揺していたようだが、その剣を捨てもせずに、その折れた剣を俺に突き刺そうとしてきた。
それと同時に身体を切られていない方のオークもボブゴブリンと反対方向から俺を槍で刺し殺そうとしてくる。俺はボブゴブリンの剣を俺の剣でいなし、オークの槍は身体を捻って避ける、オークの槍は俺の後ろにいたボブゴブリンの肩に突き刺ささり、身体を突き抜けた。ボブゴブリンはそれによって悲鳴をあげ、オークは動揺したような声をあげる。
俺は槍が仲間に突き刺さって動揺しているオークの一瞬というかかなりの隙に乗じて首に剣を突き刺す。首に剣を刺したせいで俺にもオークの返り血がかかってしまった、くさい。
剣を引き抜くと、オークは持っていた槍を離し、喉元を抑えて後ずさる。その内に未だに刺さった槍を引き抜こうとしているボブゴブリンを頭からたたっ斬り、ボブゴブリンは頭の先から首の下あたりまで真っ二つになり、体液を吹き出しながら地面に伏した。残ったオークは普通に素手で突っ込んで来たので容易く屠る。
ここまででまだ倒した魔物の数は僅か5体ほど、他の奴らがいないなら魔法で一気にケリを付けるんだがなぁ。状況確認のため、素早く周囲を見渡してみると、かなり悲惨な状況だった。冒険者や兵士はすでにかなりの数がやられてしまったようだ、しかも大体が見るからに弱そうなやつ。そんなやつらよりも少しだけ良い武器防具を持っているやつらが辛うじて助かっているみたいだ。
しかし俺の出番も終わった訳じゃない、魔物の数もかなり多い、街の中にも数体入ってしまってるんじゃないのか?しかしいまは目の前の敵が優先だ。さらにオーク、ボブゴブリン、ブラックウルフの連合軍が俺に襲いかかってくる。
相手の攻撃をいなしては斬り、避けては斬り、気づけば辺りは魔物の死体とその体液でグロテスクな世界が出来上がっていた。そして魔物の数を最初の比べるとかなり減ってきたようだ。
ふいに横の方から女性の悲鳴と怒声が聞こえてくる、そちらの方を見ると数人の女性のみで組まれたパーティーがオークの集団に襲われている最中だった。しかもその一人がオークに押し倒されて装備を剥がれてあられもない姿になってしまっている、その姿を見て今の俺は無性に腹が立ってくる。そういえばボブゴブリンはゴブリンと違って人は襲わないけどオークは人間の女も襲うんだよな、なるほど、さっきから俺のところによってくる魔物の割合が高いのがオークだという理由が解けたぞ。
俺は取り敢えず女性パーティーを襲っているオークの頭に懐から出すように”倉庫”から出した投げナイフを投げ、突き刺しておく。頭にナイフの刺さったオークは怒り狂い。襲っていた女性から視線を俺に移し、突撃してくる。その女性パーティを襲っていたオーク全てにナイフを突き刺したため、そのオークを含めて全部で5体いる。武器は全員槍。
俺は突撃してきた最初のオークの槍をいなして首を切りつける。後ろのオークもバラバラに襲ってきたので同じように全員の喉を切り裂いておく。そして俺の後ろにオーク5体の死体が出来上がった。
しかし落ち着いたのもつかの間、次は門の方角で大きな音がした。たしか向こうは悪魔と交戦してるんじゃなかったっけ。そちらを見れば、あの先陣を切っていた悪魔がこちらを見つめていた。その表情はニヤニヤと笑うでもなく、歯を見せて怒るでもなく、圧倒的な無表情、逆にそれが恐怖をそそるようで、近くにいた冒険者も青い顔をしていた。その悪魔と戦っていたはずの冒険者や兵士の隊長は、さきほどの爆発音の原因のせいなのか、片膝を付いたり、地面に突っ伏したりしていた。他の悪魔たちとはなおも交戦中、なるほど、あいつを殺れば今回はなんとかなるかもしれないな。
そして悪魔がその薄気味悪い4枚の羽根を広げ、地面から少し浮く。そして次の瞬間――
――悪魔は俺の目の前にいた。
やった!明日から5連休ですよ!ストックが貯まればいいなぁ(白目)
あ、それと2話くらいまえから字下げをしていなかったので、ちょっくら直しておきました!
次回はいつも通りです!はい!
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