第22話 襲撃
朝、俺は周りの騒がしさのせいで目を覚ました。部屋にある窓から外を見てみると、冒険者らしき人々や、衛兵があたりを走り回っている。冒険者が向かっている方向は全員一緒だ、たしかその方向にあるのは...
「冒険者ギルドか...」
みんながみんなギルドに何の用だ?
取り敢えず身なりを整えて一階に降りる、外はかなり騒がしかったんだがおばさんは普通に受付にいた。俺はおばさんに外の状況について聞いてみる。
「この街は近くに迷宮があってねぇ、その影響で度々モンスターに街が襲撃してくるんだよ」
「迷宮ですか...」
「おや、知らないかい?結構有名なんだけどねぇ」
「取り敢えずいまのこの状況は...」
「十中八九モンスターの襲撃だろうねぇ、たしか冒険者ギルドで緊急依頼を出していると思うよ、それで冒険者たちがギルドに向かってるんじゃあないかねぇ」
「なるほど、ありがとうございます」
俺はそう言うと、部屋の鍵をおばさんに返し、宿を出た。
宿の中ではあまり分からなかったが、外に出てみるとその騒がしさがさらに増した。兵士は焦ったような顔でそこらかしこを走り回っているし、冒険者も焦ったような顔をしている者もいれば、嬉しそうな、獣が獲物を見つけたような顔で冒険者ギルドがある方角へ走り去っていく。
俺は今日この街を出ようと思っていたが、すこし予定変更だ、まぁどっちみち10日以内にノクタスの街まで戻るのは不可能だろうし、1日2日遅れたくらいでどうってことないだろ。そう思い至った俺は、他の冒険者に混じってギルドに向かって走り出した。
「緊急依頼です!受注可能ランクはD-ランク以上です!D-ランク以上の冒険者の方々は依頼を受注した後に前線または後方支援に回ってください!」
ギルドの中に入ると、そこには昨日とは比べ物にならないほどの人だかりが出来ていた。依頼が貼ってある掲示板には、周りの依頼用紙を押しのけて、大きな依頼用紙が複数枚張り出されている。依頼内容はこのコウクンの街の衛兵たちの援護だ。報酬は、受けるだけで全員に銀貨50枚、だいたい平均月収の2.5倍か。他にも魔物の討伐数などの街への貢献度で追加報酬が出るらしい。
俺は長蛇の列を作る受付の中で一番短そうな列を選んで最後尾に並ぶ。ちなみに一番列が長かったのは昨日俺が話した受付嬢だった。
待ってる間はかなり暇なので俺は周囲を見回していた。こうしてみるといろいろな格好の冒険者がいるな、昔と同じく全身金属鎧のゴツイ奴もいれば革装備の身軽そうな奴もいる。だが優男のほうが割合てきに多いのが少し不安だ。ここまで人が集まっているので、チラホラと女性の冒険者も見かける。戦士のような装備をしている人もいたが大概は魔法使いっぽいローブを来て杖を持っていたり、弓を持っていたりする人が多かった。
女だろうが男だろうがオーラを使えば身体能力は全くと言っていいほど変わらないんだがな、いまのこの世界じゃそういうわけにもいかないのだろう。力仕事は男みたいな感じになってしまっている。
そんなことを考えていると俺の番が回ってきたようで俺は受付にギルドカードを手渡すと緊急依頼を受けることを告げたのだが、受付嬢は、身長が低いため、身体の先ほどしか出ていない俺を見て、宥めるようにこう言ってきた。
「ごめんね?この依頼はD-ランク以上の人しか受けれないのよ...」
何を言っているんだこいつは、せめて俺のギルドカードを見てから喋ってはくれないだろうか。
「すまないが、俺はこう見えてDランクなんでな、身長で人を判断するのは良くないぞ」
「えっ?...ウソ!?...えーコホン、先ほどは失礼しました」
俺が指摘すると受付嬢は俺とギルドカードを見比べたあと、羞恥心からか少し頬を赤く染めて俺に謝ってきた。
「えぇと....はい、依頼の受注を完了しました、それではお気を付けて」
受付嬢から受け取ったギルドカードを見てみると、カードの受諾依頼の欄が更新されていた。
==============
レイク・ドレヴィア 男
ランク:D
受諾依頼
0-01
==============
良く分からんが多分これで大丈夫だろう。俺は移動している冒険者の波に抗わずに一緒に移動することにした。
そうして着いた先は昨日俺が入ってきた街とは別の門だ。ギルドにいた冒険者の数よりもだいぶ少ないな、他の門にも行っているのか。門には装備からして強そうな冒険者と兵士が最前列に、その列を抜けてくる魔物を追撃するためにそれ以外の冒険者や兵士が散らばっている。さらに前方の門の上には魔法使いや弓兵などが待機している。迎え撃つ気満々じゃないか。
俺は最前列には出たくないので、すこし守りが薄そうな場所を選んだ。周りには大人しそうで戦闘ができなさそうな優男しかいなのだが、大丈夫なのだろうか。不安しか残らない。
しばらくすると最前列の隊長っぽい兵士が大声を上げた。
「来たぞ!!」
その声を聞くと、全ての冒険者と兵士が武器を抜き、その方向を見つめる。しかし向かってくる生物が自分たちの知っているものではなかったため、ほぼ全員が驚きと恐怖の声を上げる。
「な、なんだあれ!!」
「見たことねぇぞあんなの!」
「ヒィ!バケモンだぁ!」
弱そうなやつらがうろたえる中、最前列の奴らと、見込みのありそうなやつらはその生物をジッと見つめて冷や汗を流していた。なんだ、こいつらはアレを知らないのか。
俺はアレを知っている、というか知らないはずがないだろうと言ってやる。だが、昔の俺ならアレの事を魔族と呼んだんだろうな、今だから言えるがアレと魔族を良く間違え続けたものだ、そう考えれば教皇も末恐ろしいと感じるが。
話が逸れたな、俺の視線の先にいる生物は、全身が黒っぽい赤だったり紫だったり青だったり、はたまたそのまま真っ黒だったりする。背中にはコウモリのような膜のある羽根が2枚から4枚、手足は長く、耳も尖っている、尻尾も生えている。武器はやけに長い剣だったり、トライデントだったりと様々だ。俺がよく知るあの生物は...
「悪魔...」
この地上とは別の次元に存在する世界、冥界に住む生物だった。
悪魔は身体能力が並の人間の数倍はある、しかし注意すべきなのはそこではない。冥界に住む生物は、地上の生物よりもなにかと魔法についての能力が高い、悪魔はその影響が濃くでている種族で、非常に強力な魔法をドンドン使ってくる、しかも身体能力が高い、肉弾戦ができる魔法使いほど厄介な敵はいないとは、俺の昔の知り合いの言葉だ。
俺の予想が正しければ悪魔もほかの生物と同じように弱体化しているはずなのだが、もしその予想が外れた場合はとにかく厄介なことになる。
そうこうしているうちに、先頭の悪魔がもう百数メートル先にまで迫ってきていた。敵は最前列に数匹の悪魔、その後ろには普通の魔物を引き連れている。そして先手必勝と言わんばかりに魔法使いと弓兵が遠距離攻撃を始めたことで、戦いの火蓋は切って落とされた。
どうも皆さん!お久しぶりです、少し更新が遅めになってしまいましたすいません!
今回は戦闘に入る直前で1度止めたかったのですこし文字数が少なくなってしまいました。しかし次回は戦闘、すこしでも分かりやすく表現できればなと思います!
次回の更新はいつも通りです!
それではお気に入り登録または評価よろしくお願いします!