第19話 痺れて飛んで投げられて
言い忘れていましたがクラスとランクの違いをここで説明しておきます!
ランクは話しの中でも説明したとおり25段階に分かれており、クラスはSSSを除くランクを3つずつまとめたものです!
FクラスならF+、F、F-の3つ。EクラスならE-、E、E+の3つ、といった感じです!
それでは!
あれから20日ほど過ぎた。今の俺のランクはつい最近Dランクに上がったばかりだ、もう少し早く上がるかと思っていたが、Dクラスにもなるとある程度時間がかかる依頼も増えてきたため、日帰りで済む依頼を選んで受けていたので仕方ないだろう。このペースだと、夏休み中にCクラスにまで上げることは無理そうだ。
いまはDランクの”ブラックウルフ”と呼ばれる黒い狼の討伐依頼を終えて、依頼の達成報告をするためにギルドへ向かう途中だ、始めは見慣れなかった東門周辺の景色もだいぶ見慣れた。
ちなみに東門といえばあの兵士がいるのだが、内容は割愛するがあのあとも事あるごとに絡まれており、その度に俺の怒りゲージが振り切りそうになったのは言うまでもない。
東門周辺は、他の門に比べて比較的冒険者ギルドが近くにあるためか、飲食店や宿屋が多く集まっている。いい匂いの漂ってくる街道を歩きながら、俺はいつものようにギルドを目指していた。
俺が冒険者ギルドの目の前までたどり着いたとき、事件は起きる。
いつものように扉を開けようと手をかけた瞬間、俺の身体全身が金縛りをうけたように動かせなくなってしまった。
(っ!【パラライズ】か!?)
【パラライズ】とは補助魔法の1つで、淡く黄色に光る球を作り出し、接触した生物を麻痺させる魔法だ。しかし、未だに雑だが一応魔力を感知できる俺の周囲で魔法が使われたような感じはしなかったし、俺の通常の感知範囲である10メートルより外から【パラライズ】を使ったとしても、あの魔法はどれだけ早く放っても他の魔法に比べればかなり遅いほうなので、当たる前に避けることなど容易いはずだ。
ここで気付いたが、首が動かないため何故か動くパーツの1つである眼球が動く範囲で見た限りでは、ギルド内部の人間も、全員が俺と同じ状態に陥っているようだ。そういえば周囲の人間の気配も全て動きが止まっている。おそらくだが、ここ周辺の生物全てが俺と同じ状態に陥っているということか!?
(この規模じゃまず普通に【パラライズ】を使っただけじゃあ無理だな、となると...魔術、か?)
魔術とは、ご存知の通り、床や壁や紙、はたまた空中に、魔力や感知されないように特殊なインクを使って魔法のルーンを再現した魔術式、または新規の魔術式を作りだし、インクの場合はその魔術式に魔力を流し魔法を発動させる技のことだ。この魔術式は俺が魔力を感知できなかったからおそらくインクのほうだろう。魔術は魔術式に注がれた魔力が尽きるまで発動し続ける。俺の無詠唱術も実を言えば魔術からヒントを得たものだ。
おそらくだが、いまここら一帯は【パラライズ】の魔術のせいで、全員麻痺っているのだろう。しかし、この規模の魔術を展開するとなると、昔の魔術師や魔法使いならいざ知らず、いまの時代の平均的な魔力量はおおよそ昔の十分の一ほどしかない、その程度の魔力でこの規模の魔術を発動させるのは不可能だ。複数人で発動させるという手もあるが、その場合は魔術の発動がかなり遅れる。どっちにしろ、魔術が発動すればその魔力を俺は感知できるはずなのだが、俺が感知する前に発動したということは1人で発動させたようだ。まぁクレアが大体昔の一般的な魔力量だと思うのだが、あいつのような人間が他にもいるということだろうか。
【パラライズ】による麻痺はもちろん魔法で治せるのだが、この場合は治した直後に再び魔術で麻痺をくらうという無限ループを味わうことになり、このループから抜け出すには、魔術式の魔力切れを気長にまつか、自分の魔力を操作して、魔術式を切断、または破壊するかの2択。もちろん俺は後者、たぶんこの魔術終わるまで3日くらいかかるくらいの魔力つぎ込んであるみたいだし。
という訳なので、さっそく俺は自分の少ない魔力を使って魔術式を切断しようと試みる。ちなみ魔術式を切断、破壊するには、人間の太い血管を引きちぎれば死に絶えるように、魔術式のどこかを自分の魔力で切断、インクの場合は魔力の他にも、消えにくいが手のように具現化させたオーラや生身でそのままインクを消せば、おのずと魔術式は発動しなくなる。魔術式は精密機器みたいなものなんだ。
おそらく【パラライズ】であろう魔術式の一部に俺の魔力が触れた瞬間、さらにもう一つの魔力で作られた魔術式が出現した。
(っ!?これは...転移魔術か!?)
転移魔術、俗に言うテレポートやワープのようなものの一つだ。ちなみに転移魔法も存在するが、転移魔法は短距離しか移動できず、基本的に転移系は長短の転移が可能な魔術が基本的だ。
その転移魔術の魔術式が【パラライズ】の魔術式の上に重なって出現した。
(ただでさえ魔力消費量の多い転移魔術式をこの規模で瞬時に展開しただと...?いや、それよりもこの魔術式...【ランダムテレポート】か!)
【ランダムテレポート】は相手を指定範囲内にランダムで飛ばすことができる転移魔術だ、指定範囲はこの規模の魔術式の場合は、最小で数百メートル、最大で数千キロにもなるだろう。
魔力で魔術式を切断しようと思ったが、すでに遅かったようだ。周囲に展開された魔術式がまばゆく光りだし、俺は妙な浮遊感におそわれた。魔術式が発動したのだろう、ヤベェ、転移した先がマグマの上とか嫌だぞ。
数秒の浮遊感のあと、急に後ろに引っ張られるような感覚に襲われる。重力が働いたのだろう、しかも後ろとか、背中から落ちるのか確定かな。
引っ張られる感覚が急に強くなった、そう、まるで何かに投げれているような感覚だ。次の瞬間、俺の背中に強い衝撃が走った。
「がはっ!?」
は?なんでなの?転移魔術ってこういう落ち方はしないはずなんだが...
と、その疑問は、痛みで瞑っていた瞼を上げたことで解決する。目の前に魔物がいた、黒と赤の毛並みを持った狼だ、体調は約2メートル、さっきの引っ張られるような感覚は、あの狼によるものらしい。まわりの景色は、街から森になっていた、しかし”魔の森”ではなさそうだ。”魔の森”以外の森はかなり離れた位置に存在するはずだ。夏休みが終わるまでにノクタスの街にまで帰れるだろうか。
狼の魔物の名前は”クリムゾンウルフ”、名前も容姿もかっこいいが、その名と姿に似合った強さを持つ強力な魔物だ。
20日ほどの冒険者生活の中で分かったことがいくつかあるのだが、その一つは魔物の弱体化だ。おそらく全てではないのだろうが、大半の魔物がこれにあたると思う。目の前のクリムゾンウルフも1000年前は体長が3メートルはあったはずだし、おそらく弱体化しているだろうが弱体化しているのは俺も一緒だ、油断はしてはいけない。
「グルルル...!」
クリムゾンウルフは牙をむき出しにして唸り声を上げ威嚇をしてくる。俺も戦闘態勢を取ろうと、もしものために装備していた短剣を抜こうとしたのだが、そこにあったのは鞘だけであり、短剣そのものは無かった。おそらく転移したときに落としたのだろう、なんと運の悪い。まぁ別にそんなものなくても戦えるが。
「グルッ!!」
クリムゾンウルフが大きな声を上げたあと、前足を蹴って俺に接近してくる。流石にまだどの程度の強さか分かりきっていない状態で、接近戦は危険だな。
という訳で久しぶりに、昔の魔法、古代魔法を使うことにする。
「グルアァ!!」
「我が力を喰らえ、風を我が手に、我が道を阻む者を打ち払え、【エアブロウ】」
クリムゾンウルフは口を開けて俺に噛み付こうと飛び上かかってきた。俺はそれに向かって下位の風魔法の【エアブロウ】を放つ、【エアブロウ】はそれなりの風の塊を前方に放つ魔法だ。
俺の放った【エアブロウ】は、飛びかかってくるクリムゾンウルフの大きく開けた口に吸い込まれていき、そのまま頭が吹っ飛んで木っ端微塵になった。
いや...違うんだ、これは事故だ。俺の知る限り【エアブロウ】はそんなに威力はないはずだし、いまの俺の魔力じゃあさらに威力は落ちるだろうし、まさか頭が吹っ飛ぶとは思っていなかったんだ、クリムゾンウルフを吹っ飛ばす程度だと思っていたのだが...いや、たぶん当たり所が悪かったんだろう。
取り敢えず”倉庫”から剥ぎ取りをする為のナイフを取り出し、クリムゾンウルフの毛皮と爪を剥いでいく、確か牙も売れた筈だが、さっきの事故のせいで残念ながらどこかへ行ってしまった。毛皮を剥ぎ取ったあとに残った肉も、”倉庫”から取り出した布に、一応部位ごとに切り分けて包んでいく。クリムゾンウルフの肉はそれなりに美味しかったはずだ、弱体化したせいで味も落ちたというのは無いことを願おう。
肉を包んだ布と剥ぎ取ったモノも全て”倉庫”に入れておく。取り敢えず、ここがどこなのか分からないと帰る方向すら分からないな。
俺はそう思い、周囲が見渡せる場所を探すため、見知らぬ森を歩き出した。
なんか書きあがったので投稿した次第です!僕です!
前話がかなり悲惨な出来だったのですが、今回で少しでもマシになっていればいいなと思います!
次回は一週間以内!更新は18時です!更新はなるべく早くする予定です!
それではお気に入り登録または評価よろしくお願いします!