第16話 冒険者になろう
いろいろ考えた結果、今回から新章になりました!
何章までいきますかねぇ
つい最近、俺が毒を盛られた挙句、その犯人に毒ナイフで腹を刺されるという事件が起きた。
しかし、その事件が表沙汰になることはなかった。学校や国が隠蔽したという訳ではない、単に目撃者がいなかったというだけだ。いや、実際には俺とクレアと件の男子生徒とが目撃者というか当時者になるのだが、男子生徒は俺とクレアを襲った記憶がないらしく、俺が医務室で休んでいると、そいつが友人と思われる生徒ともにやってきて、「気がついたら顎外れてて、頭も痛いんです」と言ってた。嘘をついている気配は無かったし、なにより雰囲気が全くの別人だった。
クレアにも、昼休みの時に口止めしておいた。まだ誰にも言ってないようだったので、これで、事件のことを知っているのは俺とクレアのみになった。
どちらにせよ、俺には傷跡すら残っていないし、俺が刺されたことで出来た血みどろの廊下も、バハムートのおかげで綺麗さっぱり元通りになっている。事件のことを話しても、頭がおかしい人を見るような視線をくらうだけだろう、そこのところを含めてクレアは口止めした。クレアも何か言いたそうだったが無理やり言いくるめた。
その後は何事もなく時間が過ぎ、俺の体調も無事に回復した。
そして今は7の月の下旬、前日は終了式、おわかりだろうか。そう、今現在、王立シルバニア学院は長期休暇、夏休みである。
今日は記念すべき夏休み初日だ。
長期休暇と聞いて期待していた夏休みの宿題なのだが、無かった。え、聞こえなかった?仕方ないな、もう一度いってやる、夏休みの宿題は、ない!
そして、いつもの俺なら暇を嘆くのだろうが、今回は一味違う。俺はこの暇すぎる夏休みを有意義に過ごすための最高の暇つぶしを思いついた。
それはなにか、それは冒険者になることだ。昔にもあったものだが、この冒険者はギルドに所属しており、さまざまな依頼を請け負う所謂便利屋だ。それは魔物の討伐、捕獲だったり、薬草などの採集であったり、荷物運びから掃除まで、その種類は様々だ。
冒険者になる方法は至って簡単、冒険者ギルドに行って、ギルドカードを発行してもらうだけ、簡単だ、猿でもできる。
容姿の問題は認識阻害魔法の【ハイド】を使えば何ら問題はない、ということはない。
【ハイド】は使っている間、ずっと魔力を消費し続けるもので、以前の俺の馬鹿げた魔力量ならどうにかなったのかも知れないが、いまの俺の魔力量では数時間が限度だ。しかもこれを使うと、面接行って次の日行ったらアンタ誰状態になってしまうのでどっちみち使えない。ローブか何かで身体を隠せばいいのかも知れないが、そんなやつを雇う店なんかいないだろう。
しかし、冒険者なら大丈夫だ、すごい偏見だが、冒険者は大体がゴツイ鎧を着ていたり、怪しげローブ姿だったりするので、俺がローブを頭からかぶってもあまり目立たない、と思う。
兎に角、俺は暇つぶしの為に冒険者になろうと思う。アンジェさんは...どうにかなるだろう。
俺は”倉庫”からいい感じの黒のローブと、動きやすい服を取り出す。服に関しては、少し前に商店街で買ったもの、もちろんというか男物だ。俺はローブを纏って、髪の毛に魔法をかける。その魔法は認識阻害魔法のひとつの【カリング】というもので、髪の毛や肌の色を偽装するものだ、残念ながら瞳の色は変えることは出来ない。俺は自分の髪を黒色に変えた、別に銀髪のままでもいいのだが、黒のローブから銀色の髪が見えているのはどこか似合わない気がするので黒にした。昔っから黒色が好きなんだ。
髪を黒に変えたことで、身体を黒いフードで覆い、隙間から除く服も黒、靴も当然黒、上から下まで真っ黒の超絶怪しい人物が完成した。フードの影で顔も見えづらいが、その奥で光る青い瞳がどこか不気味だ。
腰のベルトに半年ほど前に買ったあの短剣を身に付け、俺は孤児院を出た。目指すはノクタスの街にある、冒険者ギルドのノクタス支部だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
さて、さすがにノクタスの街中をこの姿で歩き回るわけにはいかないので、裏道を駆使したり、面倒くさくなって冒険者ギルドの周辺まで屋根伝いに走っていったりした。
そして現在地はノクタスの街の中心あたりにそびえ立つ冒険者ギルド手前。なかなかに大きい建物だ。
俺は西部劇に出てきそうな、スイングドアを押して、冒険者ギルドの中に入る。中には、依頼は貼ってある掲示板、受付嬢がいる受付カウンター、それと、内装の半分程度が酒場のようなものになっており、そこでは依頼を終えたであろう冒険者たちが酒を飲み交わしていた。
シルバニアの街でもノクタスの街でも、あまり冒険者を見かけなかったのだが、廃れた訳ではないようだな。しかし、冒険者を見てみると心なしかひ弱そうな雰囲気がにじみ出ている、優男ばっかだし、女性の割合もかなり高くなっている。冒険者はあまり女性には人気のない職業だったハズなんだが、ここ1000年で変わったのか。
取り敢えずギルドカードを作るために受付に向かう、受付に人が並んでいなかったので、俺はそのまま受付嬢に話しかけた。
「すいません、冒険者になりたいんですが」
ちなみに、いまの俺の声は、風魔法の応用でいつもよりも低い声になっている。普段の声は論外だが、普通に低い声を出してもショタっぽくなってしまい、この格好でそれらの声はないわと思い至り、風魔法を使って俺の発する声を低くしている。声が幼いといろいろと面倒ごとに巻き込まれやすいしな。それに、最近はあの声を出すのもしんどくなってきた、喉が痛い。
受付嬢は俺の姿に若干驚いた表情を見せて、すぐに何事もなかいように対応した、さすがプロ。
「はい、新規の方ですね。それではこちらに手を置いてもらってよろしいでしょうか」
「はいよ」
受付嬢が出してきたのは一枚の石版のようなもの、詳しい構造の説明は省くが、これに手を置くとギルドカードが作られるという代物だ。これは1000年前から変わってないんだな。
しかしながら、俺はこれを正直に受ける気はない。そのまま行けば、これは俺の名前と性別が出てくるハズだからな。名前と性別が出てくるのはいろいろと面倒だ。名前はもちろんのこと、俺が女だとバレるとまた馬鹿なやつが寄ってくるからな、俺はそれなりの容姿だし。
この世界は男尊女卑のようなものが根付いている、冒険者稼業は特にそうだった。1000年経ってもそこらへんは変わってないだろう、地球のほうでもいろいろと問題になってたしな。俺はなるべく目立ちたくない、ただでさえこんな格好なのに、さらに変な輩に付きまとわれるとか論外だからな。昔は目立ちすぎて、いろいろと面倒ごとになったしな。
俺は石版に手を当てるまえに、無詠唱術で独自魔法の【コンシール】を使う。他にも用途はあるが、この魔法を使えばこのギルドカードを偽装することができる。ギルドカードは依頼を受けるときなどにも使うのだが、ギルドカード自体を偽装している訳ではないのでそこのところは問題ない。
そんなことをしらない受付嬢は、そうして偽装されたギルドカードをみて、また驚いた表情を少しみせて
ギルドカードを手渡してきた。
「こちらが貴方のギルドカードになります。紛失された場合は再発行に金貨1枚をいただきますのでご注意ください」
「ういっす」
渡されたギルドカードは昔と変わっておらず、金属のような感触のもので、表面は白く縁どられ、そこ以外は黒っぽい色で、そこにいろいろと表示されている。
==============
レイク・ドレヴィア 男
ランク:F-
受諾依頼
なし
==============
良し、名前も性別も変わってるな。名前は適当に作ったが、なかなかいい出来だと思う。
そのあとに、冒険者ギルドの説明の有無を聞かれたので、一応してもらうことにする。1000年も経ってるんだから、どこか変わってるかも知れないしな。
「それでは、冒険者ギルドについてのご説明をさせていただきます。まず、冒険者ギルドに登録されている冒険者の方々は25段階のランクに分けられています。ランクはF-、F、F+、E-と続いていき、A+の次は、S-、S、S+、SS-、SS、SS+、そして最後にSSSとなっております。ランクはある程度の量の依頼を達成されますと自動で上昇し、1年の間まったく依頼を達成されなかった場合は3段階下がります。また、問題を起こしたり、一定数の依頼を失敗しますと、1段階下がってしまいます。それから、冒険者ギルドの不利益になるような行動を取られた場合には、冒険者ギルドから追放されてしまいますのでご注意ください。他になにかご質問はございますか?」
「あ、大丈夫です」
「それでは、冒険者としてのご活躍を期待しております」
ふむ、そんなに変わったところはなかったな。あるとすれば、ランクアップ試験が無かったことだな、昔の冒険者ギルドでは、ギルドカードが発行されたあとに、各々の実力を見てから、ランクを再度決めるための試験があったのだが...まぁいいか、レベル1からやったほうが楽しいしな。
ひとまず、無事に冒険者になった俺はとりあえず依頼を受けてみることにする。昔の俺の初期ランクはC-、これはランクアップ試験で上昇する最大ランクなんだが、基本的に、ここまでランクが上がるともう採集系の依頼はもう張り出されていない、基本的には討伐系の依頼ばかりで、俺もそっちのほうが報酬が高いので、採集系の依頼というのは実のところ受けたことがあまりない。
今の俺はF-、Fクラスの依頼は基本的に、ギルドが常に張り出しているものが多い。その多くが薬草だのなんだのを集める採集系の依頼だ。冒険者は、始めはこれらの危険性の少ない依頼を受けてランクを上げていく。まぁ1日2日あればE-にまで上がるらしいので大丈夫だろう。
この長期休暇は約1ヶ月程度、目標は長期休暇が終わるまでにCクラスにまでランクを上げることだ。
遅くなりました!どうも皆さん!僕です!
はわわ!もうすぐ評価ptが1000超えるんですよ!やりました!
自分の作品が評価されるのは嬉しいですね!
え?バレンタイン?何言ってるんですか皆さん、僕はそんな日は知りませんけど?(白目)
次回は一週間以内ですぞ!
皆様!お気に入り登録!または!評価!よろしくお願いします!