第14話 俺は死んでも立ち上がる
始めの方はクレア視点になります!わりと難しいデス!
少し前、具体的に言えば昼食を食べ終わった後くらいからアリスの調子が悪い。
――緑色の髪をした少女、クレア・フェイシスは自らの横を歩く少年、もとい男装をした少女を見ながらそう考える。
さっきまで食堂で、私とアリス、それとレイザックくんと一緒にお昼ご飯を食べて、その後の何気ない雑談をしている間も別段変わった様子は無かったのに。なのにいまのアリスはさっきまでとくらべて、顔が青白くて、足取りがおぼつかない。アリスは隠してるようだけど私には筒抜けだった。
「アリス、大丈夫?顔色悪いけど...」
「ん、あぁ...大丈夫だ」
心配して声をかけてみても、アリスは何事もないように装って返事をした。
しかし、時間が経つにつれて、アリスの体調は悪化するばかりだった。
目の焦点は合っていないし、私が話しかけても反応が鈍い、顔色もさっきよりもさらに悪い。しかしアリスはフラフラと歩きながらも平静を装って歩き続けている。
私はアリスのことが良く分からないでいた。
あの日、アリスと始めて会った日。綺麗な男の子だと思った。しかも男の子のクセに力も体力もない、ちょっと動いては倒れて、動けるようになったらまた倒れての繰り返し。遂には病気にかかり、その病気も大したものではないにもかかわらず生死を彷徨うほどの重症になった。そしてその度にアンジェさんが心配して、病気が治ったあとはアリスに対して過保護になってしまった。
そしてアリスが来てから少し経ったある日、私は特に用事もなくブラブラしていたら何故かアリスの部屋の前にいた。本当に何かがしたかったわけじゃないのだけれど、もしかしたら好奇心からか、私はノックもせずにアリスの部屋の扉を開けた、そこには下着姿のアリス。ノックしなかったのは反省します。
結果から言えばアリスは男の子ではなく女の子だった、それなのに普段は男の子みたいな格好をして、乱暴な言葉を使う。身体はすぐに倒れるくらい弱い女の子なのに。
何故なのか聞いたらそれがいつも通りだと言っていた。見た感じは嘘はついていないように感じた。その後に笑ったアリスの笑顔はまるで天使のように輝いていた。
それから私とアリスは仲良くなった、同年代で同じ女の子ということもあったかもしれないけれど、私がアリスが女の子だと知っているということが一番大きかったのかもしれない。
私とアリスが出会って、大体半年は経っている。それでもアリスの考えていることはよく分からない。でも、それがアリスのいいところかも知れない。
(取り敢えず、アリスをなんとしてでも保健室へ連れて行かないと、誤魔化して引きずってでも連れて行ってやるんだから!)
私がそう思ってアリスを振り返った時、アリスは口とお腹から血を流しながら、廊下に倒れるところだった。
「ア....リス...?」
「フヒヒ...」
「アリスっ!!」
私は慌ててアリスに駆け寄りうつ伏せになっていたアリスを仰向けにした、お腹からは大量の血が流れ出ている。大量の血を見たことがない私は、その光景と血の匂いで吐き気と頭痛に襲われるが、そんなものは無視した。
近くには不気味な笑みを浮かべた男の子が立っていた。手には血がベットリと付いた刃渡りの短いナイフが握られている。私は一瞬で理解した、コイツがアリスを刺したんだと。
いまの時間はほとんどの生徒が食堂か、その周辺にいるため、この廊下にもあまりというか、私とアリスとナイフを持った不気味な男子生徒、その3人くらいしか人がいなかった。
私はアリスを刺した男の子の方を見る、その顔を見た瞬間、体中に虫唾が走り、吐き気がした。いろいろな感情が混ざった顔だ、気持ち悪い。
そしてその男の子が口を開いた。
「アヒ、ヒヒヒ...こ、これで邪魔者はイなくなった、よ?」
「...え?」
その男の子は、さも自分が良い事をしたような口振りで私に話しかけてきた。
「き、キミという花に集る、が、害虫は、ボ、ボクがく、駆除したよ?さァ、これでもう、安心、だよ。いっしょにイこう?」
「な、なにを言ってるの?」
「ボ、ボクとキミは、う、運命にヨってむ、結ばれてイるんだよ、神様も、ソうイっていたンだ」
「運命...?神様...?」
「ウン、そ、そうだよ。ボクとキ、キミは運命で結ばれているんだ、よ?で、でもね、その害虫がイるかぎりはダメだってい、イってた」
もう、何が何やらサッパリ分からない。
だけどなにが言いたいのかは分かる、要するに、私目当てだと言うことだ。
「さ、さア。その害虫をスてて?ボ、ボクとイこう」
彼は手を取ってというように私に手を差し出してきた。
私は彼にどうしようもない嫌悪感を抱いていた。だから、彼の手をそのまま右手で弾いた。
「ナ、ナにするの!?」
「触らないで!」
手を払われた彼は慌てて私に触れようとしてきた為、反射的に大声を上げてしまった。
それが逆鱗に触れたのか、彼は突然声を荒らげた。
「ナ、ナんで!?ボクとキミは運命で結ばれてイるんだよ!?」
彼はそのあと狂ったかのように頭を掻きむしった後、突然落ち着いて、背筋が凍るような言葉を言い放った。
「アぁ、そうか、ボクとキミは運命で繋がってイるんだ。今世は害虫のせいで少し狂ってしまったけど、なら来世に託せばイイよね?さぁ、死のうか」
「え?」
彼はそう言うとナイフを振り上げた、そしてそのまま振り下ろす。
私は怖くなって目を瞑った。
でもいつまでたっても私がナイフに傷つけられることは無かった。恐る恐る目を開けると、そこは変わらずに真っ赤な廊下、私も無事だった。
でも、私の目の前で倒れているはずのアリスの姿が無くて、アリスが流した大量の血液があるだけだった。
「そんなはずはない」と思いながらも私を殺そうとした彼の方向を見ると、そこには血だらけになったアリスの後ろ姿が映った。
しかもアリスの下には既に血溜まりが出来ていた。
「キ、キサマ!ナ、ナんで死んでなイんだ!?毒を盛っても死ななイから!この毒をヌったナイフで刺したのに!ナんで!!」
毒?もしかしてアリスの体調が悪そうだったのってそれが原因なの?
そんな考えのよそに状況はどんどんと進んでいく。
「あぁ、毒だったのか...なんか調子悪いと思ってたら、そういうことか」
鈍ったもんだ、とアリスは小さく呟いた。彼はそんなアリスを見て、怒り狂ったようにナイフを振り回し始めた。
「ガアアァァァァァァアアアァァアアアアァァァアアア!!!!!」
「うっさい」
勝負は一瞬だった、正直何が起こったのか分からない。いつの間にか、彼はナイフを落としていて、壁に叩き付けられて気絶していた。
「はぁ...はぁ...はぁ...ゴプッ」
さっきまでが嘘のように、アリスは力尽きたかのようにまた倒れた。口から血の塊を吐きながら。
私は嫌な予感がした。このままアリスが死ぬのではないか、と。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
頭が痛い、身体が動かん。視界もぼやけてるし、音もかすかに聞こえるほどで何が何やらサッパリだ。
俺は倒れてから仰向けにされた、顔は分からなかったが緑色だしクレアだろう、俺のなかでは緑=クレアになりつつある。
さっきから治癒魔法を使おうとしているが上手く魔力が使えない、俺が風邪で死にかけたときと同じようなものか。クソ、ミスったな、こんなことなら多少のリスクは冒してでも治癒魔法を使うべきだったか?
そんな俺をよそにクレアと俺を刺した犯人であろう人物との会話はどんどんと進んでいった。
俺も必死になって耳を傾けるが、よく聞こえない。オーラを集めて聴力を強化しようと試みたが、オーラも上手く扱うことができずに、効果は薄かった。しかしないよりはマシだと思って俺はその作業を続けていた。そして、微かにだが2人の会話が聞こえるようになったときには、既にクライマックスのようだった。
「―――ぁ、死のうか」
「え?」
は?殺す?クレアを?俺を?誰を?いや、アイツはクレアに向かってナイフを振り上げている。クレアを、殺す気か?お前が?クレアを?
俺の頭にはある光景が浮かんだ。
床には夥しい量の血、そして壁には胸に剣が刺さり、半分ほどが赤く染まった緑髪のハイエルフ。メイフィス・エレア。俺は姫様と呼んでいた。
クレアの緑色の髪でフラッシュバックしたのかもしれない。
瞬間、俺の視界がクリアになる。身体も軽い、頭痛もしないし腹の傷の痛みもない。
俺は慣れたように目を瞑ったクレアの前に出て、ソイツの手首を掴む。
「キ、キサマ!ナ、ナんで死んでなイんだ!毒を食べても死ななイから!この毒ナイフで刺したのに!ナんで!!」
――あぁ、毒だったのか...なんか調子悪いと思ってたら、そういうことか。ったく、俺も鈍ったもんだ...
「がアアァァァァァァアアアァァアアアアァァァアアア!!!!!」
――うっさい
俺はナイフを振り回すソイツから、ナイフを叩き落とし、顎からキメて壁まで吹っ飛ばした。顎とか危ないとか言われるかもしれないが仕方ないだろう、もう限界なんだ。
俺はアレを吹っ飛ばすと、糸が切れた人形のようにまた力が抜けて、倒れた。
あぁ、まただ。これで3回目、いや、1回目はよく覚えてないから2回目か、この、死の感覚は。
俺はこの世界から意識を手放した。
なんか、僕いますごい楽しいです。やっぱり戦闘が入ってこないとダメですよね!ちゃんと書けてるかどうかは別として...
さぁて次回は一週間以内になります!これからずっとこのペースで行くと思った方々には申し訳なく思います。でも!仕方ないんです!ランキングに入った小説を読んでたら、気付いたら12時過ぎてるんです!全部僕のせいですね!サーセン!
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