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第9話 ここは楽園ではない、地獄だ

「へぇ、こんなところがあったのか...」

「そっか、アリスは来たことなかったねー」


 王立シルバニア学院が存在するこの街、シルバニアはノクタスやその他周囲の街に比べてかなり大きな街である。そして大きいということはそれだけ栄えているということであり、このシルバニアの街には俗に言う商店街とよばれるものが存在する。

 数ある店には服や食べ物、さらには武具から魔導具といった類までさまざまなものが売っている。

 俺はクレアに誘われて、今現在そんな商店街に来ている。女子の買い物は長いっていうからな、大丈夫だろうか、暇になったら魔力量のトレーニングでもしとくか。


「で、何を買うつもりなんだ?」

「う~ん、服とかアクセサリーとか、かな?」


 あ、これ長くなるな。

 俺が買い物するときはあらかじめ買うものを決めてかうから凄くはやい。店に入って目的の品取って買ってさよならバイバイだ、俺というか男なら基本こんな感じだろ。

 なぜ決めない、服とか見て何が楽しいんだ?俺には全く理解できん、身体が女になったからといっても精神は男のままだからな。

 ところでお前ら孤児院の孤児なのにそんなもの買う金あんの?という疑問があるがそれは問題ない。子供でも、自分の小遣いを稼ぐ手段はいくらでも存在する。あっち系やそっち系のものは存在しないが、簡単に言えばアルバイトのようなものだ、街のあちこちに設置されている掲示板に張り紙を貼ったり剥がしたりする仕事や、店の掃除や皿洗いなどなど、主に裏方の雑用だ。

 子供は低賃金で雇えるため、使えるものは使うの精神で雇う店は非常に多く、需要と供給のバランスが取れている。クレアもノクタスの街で、ジェニーと一緒に働いているらしい。たまに孤児院のやつらがいなくなるのはそのせいだったか。

 兎も角、クレアはそうやって稼いだ金を今日はパーっと使うんだそうだ、俺の脳裏には仕事帰りのおっさんたちが浮かんだ。

 ちなみに俺は働いていない、おいニートとか言うのやめろよ、涙出てくるだろ。

 それに俺は働いてないんじゃなくて働けないだけだ、主にアンジェさんのせいで。俺が目を覚ましてからの初めの一週間で倒れに倒れて死にそうになったために、あの勘違いをしているアンジェさんから俺に外出禁止が言い渡された。

 いまではだいぶマシになったが、アルバイト禁止みたなことを言われている、一回こっそりやろうとしたが店側が青い顔で「すまん」って言ってきたから俺は諦めた、あの顔はヤバイ。ちなみに霊獣車の乗車賃はアンジェさんから渡されている、なんか心が痛む。

 だがしかし!今日から俺には”倉庫”がある。”倉庫”には全盛期(チート)のときに俺が貯めた金が全て入っている、もちろんその額も凄い、幸い1000年前と硬貨が変わってなかったのでそのまま”倉庫”内の金は使える、ここにきての所持金チート。

 大体どれくらい入っているかと言うと、一番価値の高い水晶貨が数百枚、次に価値の高い白金貨は数え切れない、金貨はもはや石ころだ。”倉庫”はいくつの部屋が存在し、水晶貨、白金貨、金貨はかろうじて一つの部屋に収まっているが、銀貨と銅貨はもはやゴミのように大量にある。ちなみに部屋一つにつき10㎥ほどある、数はいくらでも作れるため、足りなくなればその都度増やしていったせいですごくたくさんある。たくさんだ。

 まぁそんな”倉庫(チート)”を持った俺だが、あまり使おうとは思わない、俺のような子供が金貨をジャラジャラと出せば目立つに決まっているし、それに目がくらんだ馬鹿が襲ってきても面倒なだけだしな。まぁ銀貨数枚あたりなら大丈夫だろう。

 そんなことを考えていると俺の手を嬉しそうに引いて歩いていたクレアが立ち止まった、そして俺は逃げだした。


「じゃあまた後でっ!」

「ふっふっふ、逃がさないよ~」


 だが俺を掴んでいる手が離れない、くっ!こいつのどこにそんな力が!

 クレアの顔はこれまで見たことないくらいに輝いている。こわいこわいこわいこわい!さらにこの店に恐怖を覚える!

 俺の目の前にそびえるのは服屋、売っているのは女物だが。いや別に女物の服屋に入るのが嫌とかそういうんじゃないんだ、見えたんだ、下着が!そして横には不敵に笑うクレア、ホラーかなにかですか!?

 なんかこう、ゾワワっときたね、でも逃げられないんだろうなぁ。オーラ使ったら逃げれるけど、絶対クレアが怪我するし...こんなしょうもないことで怪我させるのも忍びないしなぁ。

 そういうわけで俺は無駄に抵抗することもできずにズルズルと店の中に引きずり込まれていった、というか俺いま男装してんだけど、女子に引っ張られて女物の服屋に入っていく男子。すっげぇカップルっぽいな、しかし現実は違うのだよ、俺いま汗だくなのだよ、まだ外は寒いのになぁ。

 店内は幻想的というか、元男の俺から見ればここは未知の世界というわけで、恥ずかしいというか嬉しいというか、さまざまな感情が入り混じった結果、俺の頭は沸騰した。


「ア、アリス!?大丈夫!?」


 ううん、大丈夫じゃない。

 いやね、俺みたいなガラスのピュアハートを持った超健全男子がこういう店に入っちゃダメなんだよ。


「あぁ、うん、大丈夫だ。ちょっと風当たってく―――」

「逃げちゃダメだよ」

「ウィッス」


 ダメでした。あぁ、俺もうダメかもしんない。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇




「......もうヤダ」

 俺の目の前にはキャッキャとはしゃぐ2名の女子、いやひとりは結構いい年齢だと思うが。一人はもちろんクレア、手には次に俺が聞くであろう服をお持ちになっていらっしゃる。もうひとりはこの店の店長の女性だ、彼女はミレイ・ベルモント、アンジェさんの姉にあたる人物である。

 俺がこんなことになっている訳を簡単にお話しようか。

 まず俺が店内に入ってすぐに、唯一の店員であり店長でもあるミレイさんに俺が女だということを看破され、その後、別にしなくてもいい口止めをクレアがしたあと、その対価として俺が着せ替え人形に、という訳だ、なんでだ。

 クレアはこうなることを予測していたのか、恐ろしい娘!

 兎も角、着せ替え人形と化した俺は、奥の部屋に連行され、ミレイさんの驚異の手さばきで一瞬で服を剥がれた挙句、身体のサイズを測られ、見事に少女少女している服を着せられた。初めのうちはできるかぎりの抵抗をしていたが、「顔赤くしちゃってかっわいー!」と叫ぶクレアと「あらあら...恥ずかしがり屋なのねぇ...」と微笑むミレイさんを見ているうちに俺は悟った、もうダメだなって。

 そうして今に至る。もう何着着たのか分からない、というかさっきからミレイさんが目にも止まらぬ速さで俺の服をとっかえひっかえしているんだがこの人何者なの?最初に俺を剥いだときの動きを戦闘のそれだったぞ。アンジェさんもすごい魔法使いっぽいし、遺伝か...親も凄そうだな。

 その後も俺の精神をゴリゴリと削っていき、ようやく落ち着いてきたらしい、良かった、解放される。


「じゃあ次は下着だね」


 解放なんてなかったんや。

 さっきまで服を持っていたはずのミレイさんは今はメジャーらしきものを持っている、怖ぇ!


「はいはい、じゃあちゃっちゃと測っちゃうからクレアちゃんはちょっとここで待っててねー」

「えー、私を一緒に測りたいですー」

「アリスちゃんのためよ」


 どうやら採寸は別の場所でやるようだ。そしてクレア、お前もうなんなの...俺お前が怖ぇよ、羊の皮を被った狼かよ...

 ミレイさんはそんな俺の気持ちに感づいたのか、クレアに待機を命じた。覗きに来そうだけどなぁ。

 俺はミレイさんに言われた通りに下一枚の状態になる。ミレイさんはさっきまでが嘘のように落ち着いていて、ちゃくちゃくと俺の身体の採寸をしていく、さすがプロという感じだ。


「アリスちゃん、クレアちゃんと仲良くしてあげてね」


 ふと、ミレイさんがそう言った。

 クレアの第一印象は静かな美少女だったが、一緒に過ごすにつれてだんだんと化けの皮が剥がれてきたように思う。だがまぁ、学校では変なことはしないし、クレアがああなるのは俺とか仲のいいやつらだけなんだと思う。俺もクレアのおかげでいろいろと助かってるし、いろいろあるが俺がクレアを嫌うことはないと思う。


「俺は仲良くしているつもりですけど。何かあったんですか?」

「えぇ、まぁ...いろいろと...ね」


 俺が聞き返すとミレイさんは少し声のトーンを落とした、クレアの過去にはなにかあったのだろうか、まぁ俺にはなにも関係ないし、過去になにかあるのは俺も一緒だ、逆に仲間意識みたいなものが湧いてくるぞ。

 その間もミレイさんは作業をする手を止めることはなかった、さすがプロ。


「はい、終わったわよ。はいこれ」

「アリガトウゴザイマス...」


 ミレイさんから俺の身体のサイズが書かれた紙を渡された。スリーサイズだと?言わんがな。

 まぁしいて言うなら、これからの成長に期待、と言ったところかな。

 それからはまたさらなる地獄が始まったのだが、先程よりかは幾分かマシだった。マシになって良かった。

 俺がここに連れてこられた理由なんだが、どうも俺を心配したアンジェさんがいろいろと手を回していたらしく。俺の事情(勘違い)を姉であるミレイさん話し、それを聞いていろいろと理解したミレイさんが、クレアに俺をここに連れてくるようにお願いしていたらしい。お前らグルだったのか。

 兎に角、俺がここに連れてこられた一番の理由は下着や服の購入なんだそうだ。俺は別に下着は替えが数枚あって、服を数種類くらいあれば満足なんだが...アンジェさんは違ったらしいな。

 ともあれ、せっかくだし俺は適当に見繕ってもらったものを買った。クレアがおごるとかほざいていたが、俺も”倉庫”が使えるようになって、金には困っていないので普通に払った。俺がどこからともなくだした銀貨に、クレアは驚いていたが、俺はかの有名な「乙女のヒミツ」で乗り切った、これすごい便利。

 金額は2000z、銀貨20枚だ。zは現在この周辺の国で使われている共通通貨で、ジルという。銅貨一枚が1z、1z=10円かな、そうなると。


 帰ったらアンジェさんには満面の笑みでお礼でも言っておくか、ここまで来たら逆に真実を告げるに告げれない、いつの日か自力で勘違いに気づくことを祈っておこう。

 

 そうして俺とクレアはミレイさんの店を出た。なぜかほくほく顔のクレアと若干やつれた顔の俺、はたから見れば、女子の買い物に付き合って心身ともに疲れた男子のように見えなくもないと思う。

 クレアは店に入る前よりもいまのほうが元気がいい、お前エナジードレインとか出来んじゃねぇの?

 まぁいろいろと大変だったが、こういうのも新鮮で嫌いじゃないな。俺は先程買ったものが入った紙袋を見てそう思った。

お久しぶりです皆様!僕ですよ!

14日から修学旅行というなの研修に行かなくてはならないので、その間に予約投稿でもしようかなと思ってましたがスタックが作れませんでした!すみませぬ!

帰ってきてから頑張ります!


さて次回の更新は日曜か来週の月曜あたりになると思います!期待しないでね!


もうすぐ1月も折り返しですね!お気入り登録または評価よろしくお願いします!! 

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