仲間と願い
どれくらい時間が経ったのだろうか。大して時間は経っていないはずだが。腕時計で確認しようとする前に、目の前にどアップの時計が飛び込んでくる。
慌てて後ろに顔を下げる。
「ふふ、相変わらずの反応ね」
零児は相手の顔を確認すると、
「はぁ、誰かと思えば未央か。どうした?」
「どうしたって、時刻確認したかったんでしょ?」
「まあ、それはそうだけどさ」
「それに、レディに対してその態度はいけないわよ」
人差し指で、額を小突かれる。
零児は額をさすりながら、答えた。
「そんなこと言ったってしょうがないだろ。俺にどうしろってんだ?」
未央は呆れたといわんばかりに肩をすくめた。
「あなたに期待した私が馬鹿だった」
「どーいう意味だよ」
「そのまんまよ」
「訳わかんねー」
「ふふ、分からなくていいの。それに、零児のそーいうとこ嫌いじゃないしね」
全く女ってのはよく分からん生き物だ。なんでいつもこっちのこと見透かした態度で、接してくるんだ?全くわからねー。
零児は再び振り返り、騒いでいる暴君共を見る。どいつもこいつも、癖のある連中だが、いい奴だ。こいつらのためなら、どんな時でも、どんな奴が相手でも戦って守ってやる。
もし、世界で誰もサンタに平和を願わないなら、俺が願ってやる。こいつ等の平和を。世界の平和を。だから少しくらい、俺の願いを聞き届けてきれよな、サンタさんよ。でなきゃ、恨むぜ?
零児は残ったレッドアイを一気飲みすると、立ち上がった。
「おっしゃー!野郎共、盛り上がってるかー!」
零児の声に全員気付きこちらを見て、叫んだ。
「零児、来てたのか」
「あたりめーだ!盛り上がってるぜ!」
「うんうん、最高に楽しいよ〜」
「零児も早くおいでよ!」
「そうだ!早く来い!お前がいないと締まらねぇ」
さっきまで見向きもしなかったのに調子のいい奴らだ。しょうがねーなぁ。
隣に座っていた未央に視線を配る。
「ほら、行こうぜ」
「……しょうがないわねぇ」
皆のところに歩き出す。最高の友のところに。
「待たせたな!これからテンション上げてくぞー!」
「あんたたち、折角の二人きりを邪魔してくれた罪は重いわよ!覚悟は出来てるでしょうね!」
「イエッサー!テンション上げる出であります!」
「未央ちゃん手加減してね〜」
様々な反応が返ってくる。俺と未央は顔を合わせて笑うと、輪の中に入っていった。
くだらない集まりだが、至福の時間。俺たちは毎年こうして、この時を一緒に過ごす。一体いつまで出来るかなんて、見当もつかない。でも、きっといつまでも続くはずだ。さっき、そのために平和を願ったんだしな。
俺以外の人もこのクリスマスを楽しんでるんだろう。だけど、俺にはそんなことは知ったことじゃない。俺が良ければ、いいんだから。
こうして、それぞれの夜が過ぎていく。ほんの一瞬の時を忘れないために。普通の日と変わらない、そう言えばそれだけだが、今日は違う。
今日だけは俺もクリスチャンになるか。ここに来るまでに思っていたことなんて、忘れていた。なんだかんだで、俺もこの日が楽しみだったってことか。
それじゃ、これから俺はこいつ等の相手しなきゃならないから、この辺でお別れだ。どんなクリスマスを過ごすのかは知らねーが、楽しめよ。年に一回しかねーからな。っと、本当にもう時間だ。俺を待ちきれなくて、暴れだしてる奴がいる。
んじゃ、本当にさよならだ。
では、皆さんにとって最高のクリスマスでありますように。
これは、もう一つのサンタに対する願いだ。
よいクリスマスを……。
これにて終了です。お付き合い頂きありがとうございました。宜しければ、感想等お聞かせ下さい。それでは、皆様、よいクリスマスをお過ごし下さい。