表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

思考&トラップ

 邪魔者を蹴散らしたところで、大通りを歩き出した。人は普段に比べ、かなり多いが、道が大きい分割と楽に進める。

 このくそ寒い中、大声を出してチラシを配る青年に、ミニスカサンタの携帯姐さん。それと、やっぱりカップル達。

 何が嬉しいのか、身を寄せ合って笑っている。

 俺はなんでクリスチャンでもないのに、人々が祝うのかが疑問だ。まあ、日本人に有りがちな傾向なんだろうな。それに俺もクリスマスパーティーに誘われた身。人のことはとやかく言えない。

 他にも疑問はある。こっちの方が重要だ。サンタは何でも欲しいものをくれるというのに、どうして人は平和を願わないんだ?あれだけ平和を願い、欲しているにも関わらず、こういった時には誰もがその願いを忘れて、サンタにそんなことを願う奴は誰もいない。人は眼前の欲望に目がくらみ、後の待つ苦痛を知らず生きている。

 まあ、それも当然のことだな。誰もが他人なんてどうでもいいはずだ。口でなんと言おうとも自分が一番大事。その証拠に戦争は終わってねぇ。平和は訪れない。人は自分のために争い、自然を消し飛ばす。醜いかもしれないが、それが道理ってもんだ。

 だけど、俺はそれは間違ったことじゃないと思う。批判する人もいるが、自分のためだけに生きることのどこが悪い。自分のために生きることは、最も大切なはずだろ。

 そんなくだらない事を考え始めていた。いつもこの季節になると、考えてしまう。答えなんてどこにもない。見えそうで、見えない。そんなものだ。

 思考していたせいか、前方が不注意になっていた。視線を元に戻したときには、もう遅かった。目の前には、本日二組目の「バカップル」様ご一行がいた。しかも、先程と同じ、一つのマフラーを二人で使っている。違うといえば、マフラーがやや長いってところだけだ。

 カップルの方が先にこちらの存在に気付いたらしく、組んでいた腕を放し、二手に分かれた。

 (なにっ!なんでこんなことしてんだ、こいつ等!)

 二人に挟まれることになった男の道は、ただ一つ。真ん中を通り抜けるしかない。長いマフラーがピンと張り、棒のようになっていた。

 (くそっ)

 咄嗟に体を仰け反らせてかわす。

 その姿は、あの弾丸をかわすことで有名なマロリックスのような感じだった。カッコイイ。

 ……最後の言葉は無視しよう。

 見事に危機を脱出した男は、後ろを振り返り、カップルを見た。二人は、またより添い、楽しそうに歩いている。

 (一体なんだったんだ)

 突然のトラップに困惑したが、すぐに切り替える。

 腕時計を見ると、予定の時間が迫ってきていることを知った。

 (さっさと行くか)

 男は目的地まで急いだ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ