表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

序章8

「ここにいる神や女神のいずれかが地上と死の国へ降りて、水の女神を探せばいいのだ。神や女神ならば水の女神の気配がわかるだろうし、来た道をたどり天上に連れ戻すことも可能なはずだ」

 太陽の女神の提案に、三人は黙り込みました。

 いくら神でも地上や死の国に降りる勇気のある者は、今までほとんどいませんでした。

 地上や地下に追いやられた神や女神は、決まって何らかの罰を受けた者ばかりで、自分から赴こうという者などいなかったのです。天上にいる限り神々は年老いることもなく、生き物のような死も存在しなかったのです。

「ぼくが行く」

 火の神が名乗りを上げます。

「ぼくが地上や死の国に降りて、水の女神を探してくる」

 風の神は驚いて彼の横顔を見、大地の女神は両手で口を覆います。

 太陽の女神は真剣な顔つきで火の神を見つめています。

「本当に地上や死の国に行くのか? 下手をすれば、二度と天上に戻れないかもしれないのだぞ? それでも水の女神を探しに行くというのだな?」

 一度地上や地下に追いやられた神や女神で、再び天上に戻れたものなど今までにいなかったのです。

 しかし火の神は恐れた様子を見せず、力強くうなずきます。

「はい。たとえどんな困難が待ち受けていようと、ぼくは諦めたりしません。必ず水の女神を探し当て、二人で一緒に天上に戻ってきます」

 太陽の女神は火の神をじっと見つめていましたが、やがて視線をそらし力なく微笑みました。

「わたしにも、その決意があれば、月の神の苦しみをわかってやることが出来たのかもしれない。しかしもう、遅すぎたな」

 一筋のちぎれ雲が日の光を遮るように、太陽の女神の顔に暗い影が落ちます。

 太陽の女神は暗い考えを振り払うように軽く頭を振り、火の神の肩に優しく手を置きます。

「お前が道に迷ったとき、

 太陽の光が暗い道を照らしてくれるように。

 お前が苦境に陥ったとき、

 それに立ち向かう勇気を与えてくれるように。

 たとえお前が闇夜にいても、

 必ず朝日が差し込むように。

 お前の頭上に太陽の祝福を与えよう」

 太陽の女神は歌うように祈りの言葉を唱え、火の神に自分の力の一部を分け与えます。

 火の神は自分の体の中に小さな光が灯ったようでした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ