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序章14

 火の神は困りました。

 白い頭巾の神が本当のことを言っているのか、黒い頭巾の女神が本当のことを言っているのかわからなかったからです。

「それ以上何か尋ねたいのなら、この死者たちの列に順番にならびなさい」

 真ん中にいる灰色の頭巾の老いた神が口を開きます。

 火の神は言われたとおり、列の最後尾まで戻り、その一番後ろに並びました。

 死者の列はゆるやかな坂を上り、朝焼けの中を進んでいきます。

 長い列は少しずつ進み、やっと火の神の番になりました。

 火の神は二つの門の前に並ぶ、三人の神々に尋ねます。

「水の女神がどこに行ったか知りたいんだ。それを知っているはずの死の国を治める月の神はどこにいるんだ? 教えて欲しい」

「どこにでもいる」

 白い頭巾をかぶった右の神が答えます。

「どこにもいない」

 黒い頭巾をかぶった左の女神が答えます。

 火の神は考え込みます。

 右の神が嘘をついているのか、左の女神が嘘をついているのか。風の神にもらった賢さをもっても、判断がつきませんでした。

 そこで火の神は死者の群れが、右の門と左の門のどちらかに進んでいったのを思い出します。

「右の門と左の門は、どこへ通じているんだ?」

「どこにでも通じている」

 と右の神。

「どこにも通じていない」

 と左の女神。

 火の神は石で出来た二つの門を見比べ、目をこらしました。

 すると中央にいる灰色の頭巾をかぶった老いた神の背後が、太陽の光に照らし出されました。

 それは太陽の女神にもらった力でした。

 中央の道は太陽の光にあふれ、輝いて見えます。

 火の神が中央の道を進もうとすると、それを遮るように手が伸ばされました。

「この道はどこへでもいける道。あんたの探している人は、この道を進んで行ったよ。だがこの道を進むつもりなら、あんたの神としての力半分と、記憶半分を置いていってもらおう」

 中央の神は火の神に枯れ木の枝のような細い手を差し出します。

 火の神は持ち前の勇敢さから、ためらわず自分の神としての力半分と、記憶半分を渡すと約束しました。

「あんたの物怖じしない勇敢さはわかった。あんたは地上で、必ずや探している人を見つけ出すだろう」

 真ん中の神は満足そうにうなずき、先に進むよううながしました。

「後悔するだろう」

 白い頭巾をかぶった右の神はそう言って見送ります。

「後悔しないだろう」

 黒い頭巾をかぶった左の神はそう言って見送ります。

 火の神は中央の光に照らされた道を通り、地上にたどり着くことが出来ました。

 しかし地上に行くためには、地上の生き物に生まれ変わらなければならず、その途中で天上のことも、風の神や大地の女神のことも、愛しい水の女神のことさえも忘れ去ってしまったのです。


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