チートな親に溺愛させる系主人公の最初の価値を暴落させてみた
ドーラン王国、王城の中庭にあるガゼボ。
10歳を超えたであろう少年が、目の前で座る金髪碧眼の愛らしい少女を睨みつけていた。
「なぜ、僕の婚約者でありながら、ドレスに僕の色が入っていないんだ?」
「お父様が選んで下さったドレスなんですよ」
少年の怒気などどこ吹く風、と少女が嬉しそうに笑った。
そこへ若々しい容姿に老成した気配を纏う男が近づいてきた。
「マリア」
「お父様! お仕事はどうされたの」
満面の笑みで少女が立ち上がって男へ駆け寄る。
「ちょうど一区切りついたところだから様子を見に来たんだ」
男はそう言って少年を見る。
「どうやら殿下はお加減がよろしくないようだ。今日はもう帰ったほうがいいだろう」
「はい!」
「待て! まだ茶会の時間は終わっていない!」
「でしたら私の娘を睨むのはやめてもらえませんか?」
「それはマリアが婚約者としての義務を怠っているからだ!」
少年の言葉に男が口元に嘲笑を浮かべた。
「こちらは王より服装は自由に選んで良いと許可を貰っています。婚約者であるあなたよりも父親である私の方がマリアに似合うドレスを選べますから」
「お父様」
マリアが少しだけ困ったように男の服を引くが、それ以上は何も言わない。
「それに、我がロンニール公爵家はわざわざ王家と縁を結ばずとも十分な立場。婚約に不満があるならいつでも解消してくださって構いませんよ」
「貴様?!」
「では、行こうか。マリア」
「はい、お父様!」
マリアをエスコートし、男、ロンニール公爵が中庭を去っていった。
──うわ、これマジで近親相姦してんじゃね?
ピッタリと寄り添って去っていく二人の後ろ姿に、脳裏にそんな声が過った直後、大量の記憶が頭に叩き込まれ、“私”は思わず頭を抱えてたたらを踏む。
「メンドール、どうした? 体調でも悪いのか?」
それに気づいた殿下が私に声をかける。
「いえ、単なる寝不足です。それより、殿下」
「なんだ?」
「ロンニール公爵令嬢の顔以外に何がお好きなのですか?」
私の問いに殿下がぎょっと目を見開く。
「確かに彼女は可愛らしい容姿をもっております」
お茶会の時に父親に向けてきた満面の笑みに一目惚れして王へ、懇願し、この婚約は成立したのだ。
「そして、龍人であるため、おそらく殿下が死ぬまで美しい若い容姿を保つでしょう」
「……彼女は強大な魔力を持っている、それを取り込むのは王家にとって有益だろう」
殿下がしばらく黙り込んだあと、絞り出すように言った。
確かに龍人は普通の人より魔力が多い。その上、寿命も長くて老化も遅い、“神が産み出した完璧な人種”なんて呼ぶ者がいるくらいだ。
そしてロンニール公爵家は建国以来この国の防衛を一手に担っていると言っても過言ではないほど、代々の当主の魔力が多い。この国で最も血の濃い龍人だからだ。
それを傘に王家に社交の免除を公認させたり、他家を見下す態度をとっても相手は涙をのんで黙り込むしかない状態なのだ。
「お子に受け継がれるであろう美しい容姿と魔力、そのメリットに対して、ロンニール公爵の干渉を生涯受け続けるというのはデメリットが大き過ぎると思うのですが」
「彼女たちだっていずれ親離れ、子離れするだろう?」
「あの様子から見てその可能性は低いと思われます」
低いどころではない。彼らが互いから離れることはないだろう。
『龍姫はチートで過保護な父親に溺愛されている』。
前世の私が読んだ小説であり、今の私にとってはある意味“予言書”となる話だ。
普通の人と魔力・身体能力ともに優れた龍人が暮らす剣と魔法の世界で、龍人と人間のハーフである公爵令嬢が、自分を溺愛する父親とともに、浮気をした挙句冤罪までしかけてくる婚約者の王子へザマァをする小説だ。
前世の妹がハマっていた小説だが、私から見ると“18歳”にもなる娘がいつまでも父親に甘えている時点でドン引きだったし、何度もハグや頬や額へのキスシーンも出てきていた上、描写がねちっこくて気持ちが悪かった。感想をよこせと言われてなかったら、その時点で投げ出していたところだ。
どうやら公爵は妻が命を賭して産んだ娘をとにかく大事にしているだけ、と書かれていたが、今のを見ると信憑性が薄れてくる。
「殿下、もし令嬢の顔と魔力が理由であるならば、お時間は掛けますがなんとかなるやもしれません」
「何?」
私の言葉に殿下が眉を顰めた。
「何をするつもりだ?」
「ご心配なく、違法なことはするつもりはございません」
私は王子の言葉にニコリと笑みを浮かべた。
このまま原作通りにいくなら私は殿下を窘めきれず廃嫡される未来が待っている。せっかく侯爵家に生まれたのに、そんな未来はまっぴらごめんだ。
そして、2年後に殿下とマリアの婚約が解消され、さらに10年後。
「レオナルド第1王子、ミランダ・グレゴール侯爵令嬢のご入場です!」
入って来た二人の姿に拍手が響く中、私はマリアとその父親が目を見開いているのを見てニヤリと笑った。
殿下にエスコートされている10歳程の少女はマリアを幼くしてそこに少し冷淡さを加えたような容姿をしている。
マリアが勢いよく自分をエスコートする父親を振り仰ぎ、何かを尋ねるが父親は何度も首を横に振り、そして私を見つけて睨みつけた。
私がロンニール公爵家の使用人を買収して、公爵家のゴミを買っていることにはやはり気付いていたらしい。そこに紛れた髪などを媒体に魔法を使って呪われたとしても返り討ちにできると、高を括っていたのだ。
しかし私がやったのはそんな短絡的なことではない。
彼らの髪を使い、魔法によって彼らの遺伝子を持つ精子を作ったのだ。病気で子種がなくなった分家の当主のために家のお抱え魔法使いが産み出した魔法だ。
それを使って派閥内の訳あり令嬢たちに支援と引き換えに、妊娠して貰ったのだ。
そうすればお手軽にロンニール公爵の血を引く子どもが出来上がるというわけだ。
流石に髪を手に入れるために買収した使用人達は辞めさせられるだろうが、同じように産まれた子どもが10人、妊娠中の女性が5人。人工精子は材料ともどもまだまだ余裕がある。
それに子供たちも抜け毛を提供してくれているから作り放題でもある。
他の高位貴族との縁談をまとめていけば、いずれこの国の貴族の大半が龍人の血を引くことになるだろう。
同程度の容姿と魔力。それなら厄介な舅がついたファザコン箱入り娘よりも貴族としてきちんと教育されたうちの子のほうが遥かに良いだろう。
既にロンニール公爵家を避ける形で噂は広げ始めている。こうやってミランダ《完成品》を見た者たちが私の方へよってくるのも予定通り。
一人娘のマリアしかいないロンニール公爵家にいつ、どんな入婿が来るか今からでも愉しみだ。
手前味噌ですが、小説を書く中で「こんなのが欲しい」と思い、自分でアプリを作ってみました。
●ガラパゴスプロッター
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もし創作活動や作品探しのお役に立てそうでしたら、よければ一度お試しください。




