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宇宙戦闘は護衛艦乗りの日常

「第3波、引きました」

「了解。損傷は?」

「本艦も護衛対象のラビット・スキップも損傷なしです」

「よし、引き続き警戒」

「了解」


 逃げてゆく3隻の宇宙海賊を見送りながらシンノスケは操舵ハンドルから手を離して肩の力を抜く。


 シンノスケとマークスがソル民主共和国の商船組合に登録して、自由商人として活動を始めてから1ヶ月程。

 とりあえず近場の宙域での護衛任務を何度か引き受けてみたが、特に問題なく実績を重ねている。

 新しく手に入れたシラヌイも、艦首下部の速射砲をガトリング砲に換装した以外は特に手を入れていないが、中古船とはいえ、なかなか使い勝手がいい。


 だが、護衛任務を遂行する上での懸念もある。


「しかし、この辺の宇宙海賊はなかなか厄介だな」

「確かに、低スペックの船を運用している割に、脅威度は高いですね」


 この1ヶ月間の護衛任務の際に何度も宇宙海賊との戦闘を繰り返しているが、護衛任務は問題なく完遂できているものの、その中で宇宙海賊を撃沈したのは3隻のみ。

 

 というのも、シンノスケ達が航行する宙域周辺に出没する宇宙海賊は軽武装、高速の船を運用する3隻から5隻程度の小集団が多い。

 そして、その小集団が一撃離脱を繰り返し、獲物の損害と披露を蓄積する戦法で、護衛対象から離れることができない護衛艦にとっては非常に厄介な相手なのだ。


「まったく、ケヴィンは厄介な仕事ばかりを回してくるな」


 シンノスケがボヤく。

 組合職員のケヴィンが斡旋してくるのはリスクの高い仕事ばかりだ。


 実際、多くの艦船が航行する他の宙域は、宇宙海賊の出没はあってもここまで厄介なものではない。

 様々な事情等で時間的ロスを避ける船が危険を承知の上で航行するこの宙域に問題があるのだ。


「しかし、ケヴィンに煽られて、売り言葉に買い言葉で仕事を引き受けているのはマスターですよ」


 マークスの言葉にシンノスケは憮然とする。


「そりゃあそうかも知れんが、ケヴィンの言い草は『カシムラさんの能力を踏まえての斡旋ですが無理ですか?無理ならもっと簡単な仕事を斡旋しますよ』だぞ。しかも、無表情で事務的な口調でだ!そこまで言われて引き下がれるか」


 結局のところ、ケヴィンにいいように扱われているだけなのだが、そんなケヴィンに乗せられたシンノスケは結果を出し、着実に実績を積み重ねているので、シンノスケの船乗りとしての能力も確かなものの、ケヴィンの方が何枚も上手で、優秀であることは間違いない。


『ラビット・スキップからシラヌイ。もう少しでこの宙域を抜けて中央ステーションの管制宙域に入ります。護衛任務、最後までよろしくお願いします』


 加えて厄介なのが、この護衛対象である貨物船ラビット・スキップだ。

 ラビット・スキップは女性の船長であるカトレアが1人で運用している中型貨物船だ。

 このカトレアがなかなかに曲者で、物腰は柔らかく、言葉遣いも丁寧なのだが、リスクの高い仕事ばかり請け負って荒稼ぎしている自由商人だ。

 

 しかも、ラビット・スキップは高速の貨物船だが、自衛用の火器は装備しておらず、航行の安全は護衛任せで、雇われた護衛艦は高リスクの仕事につきあわされる上に、時間節約等の目的でやたらに危険な宙域を通りたがるのである。


 故に、カトレアからの護衛依頼は多くの護衛艦乗りが忌避するのだが、それでもケヴィン達組合職員の尽力でカトレアからの依頼を滞らせたことはないそうだ。

 ただ、最近はケヴィンの尽力の矛先がシンノスケに集中して向けられており、現にここ3回はカトレアからの依頼を連続で受け(させられ)ている。


「シラヌイ了解しました。まだ危険宙域を抜けていませんので、ラビット・スキップも警戒しつつこのままの航路を維持してください」

『ラビット・スキップ了解しました。ところでカシムラさん、この仕事が終わりましたら直ぐに次の仕事が入っているのですけど、護衛を引き受けて下さいませんか?』


 今の仕事が終わっていないのにこの有様だ。

 

「・・・あ〜、その件についてはこの仕事が終わりましたら依頼の内容を精査して、慎重に検討します」

『そうですね。今のお仕事が終わっていませんので、ちょっと性急でしたね。分かりました、このお話は無事に帰還してからにしましょう。組合のケヴィンにもよくお願いしておきます』


 シンノスケはため息をついた。


「マスター。マスターの女難は相変わらずですね」

「余計なことを言うなマークス」


 シンノスケは納得していないが、結局はカトレアからの依頼を引き受け(させられ)ることになるのである。



【護衛艦カグヤ】

 ミリーナ、セイラ、リナ、マデリアの女性4人組が乗る護衛艦カグヤは6325恒星連合の宙域を航行していた。


「さて、ここまでは順調でしたけど、この先はリムリア銀河帝国の領域ですわ!」


 カグヤの艦長席に座るミリーナ。

 現状でカグヤを操縦できるのはミリーナとマデリアのみだ。

 艦長の資格を取得して間もない新米艦長のミリーナには数ヶ月に及ぶ長期間の航行は難易度が高いかに見えるが、そこはそれ、何でも完璧に近い状態で熟すミリーナには難しいことではない。

 ミリーナに加えて万能型ドールのマデリアがいれば全く問題ないのである。


「航行ルートの設定を行いました。少し遠回りではありますが、帝国領の端、ダムラ星団公国側ギリギリのルートを通ります」


 セイラが設定したルートを確認するミリーナ。

 戦後の混乱もまだ落ち着いていない現在、リムリア銀河帝国とダムラ星団公国の間の国際宙域の治安はまだ回復していないため、リムリア銀河帝国の領内を航行するルートだ。


「少し遠回りすぎません?国際宙域を通らないなら、帝国の領内を突っ切ってしまった方が早いのではありませんの?」


 ミリーナの言うとおり、帝国領のど真ん中を突っ切る方が早い。

 しかし、帝国皇帝のウィリアムが国内秩序の回復に努めているものの、戦争で打撃を受けた宇宙艦隊の再編もままならぬ有様で、帝国領内といえども安全が確保されていないのである。

 むしろ、国境線に近い宙域の方が宇宙軍や沿岸警備隊の目が光っていて安全な程だ。


「ダメですよ。急がば回れって言うじゃないですか。シンノスケさんを迎えに行くためには安全第一です。私はセイラちゃんの案がいいと思いますよ」

「そうですわね。確かに、セイラの案が最適ですわね」


 セイラの案を支持するリナの言葉を聞いて素直に頷くミリーナ。


「それじゃあ、このルートで帝国領内の通行許可を申請しちゃいますね」


 船の運用には手出しできないリナだが、自由商船組合の優秀な事務職員であり、各種申請手続きなどはお手のもの。

 必要な申請手続きを速やかに、滞りなく済ませてしまう。


「まだ先は長い道のりですが、シンノスケ様に悪い虫がつく前に急いで迎えに行きますわよ!」 


 ミリーナはカグヤの速度を上げた。


【ミリーナ達がソル民主共和国に到着するまで約半年】

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― 新着の感想 ―
ケヴィンが男で良かった。リナもそこまで怒るまい。悪い虫代表カトレアかぁ…アクネリアまでついて来そうだな
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