ついにパーティに仲間が加わる?(1)
世界がどんよりしているのは、今に始まったことじゃない。
もともといた世界―――日本だってそうだった。
もちろん、平和だ。けれど、何処かに陰鬱とした何かが漂っている。目には見えない、何かが。
「ほら見てみなさい。ここ、魔王城周辺をふよふよ浮遊しているのがソウルよ」
魔王城の最上階。そこには、さっきまでの禍々しい見た目の内装とは打って変わった小さな神殿のような空間があった。
そこに設置された大きな窓からは、外のようすが見える。そこら中に存在していた魔物たちの姿はそのままに、さっきまでは視認できなかった『ソウル』と呼ばれる浮遊物を確認することができた。
「この『ソウル』は、魔王によって無惨に殺されてしまった人々の残滓―――言わば、この世への未練のようなものね」
「でもさ、その魔王はついさっき君が―――」
「ぶっ倒していたじゃないか……って言いたいのね? 確かにそう。あの魔王に関しては、私が無力化させたわ」
このミアという名の碧眼ガールは、俺の目的たる『この異世界からの脱出』に必要と思しき『魔王の討伐』を、既に済ませてしまっていた。俺が壁抜けで魔王城へ到達したときには、この世界の魔王の命はミアの手の中にあった。
それ(魔王討伐)により、一件落着―――というわけにはどうやらいかないらしい。そのことは、ミアの言った『あの魔王』発言からも読み取れる。
ゲームみたいな造りを成しているこの異世界においては、もしかすると西の魔王とか東の魔王みたいな並列ボスが存在するのかもしれない。昔のゲームではありがちだが、ラスボス前の四天王みたいな。
だとしたら、彼女が俺に結婚を申し込んできたのも何らかの打算的理由があってのことだろう。例えば『結婚による双方のステータス上昇』とか。
俺がそこまで考えていると、ソウルを見つめていたミアが悲しそうな顔をしてから言った。
「……で、アンタのその格好は趣味? 分かってんのよ、精霊魔術の使用に伴うデメリットに『服を脱がされる』なんてものが無いことくらいは」
俺の格好? 何か奇抜な装いでもしていたっけ……
正面ガラスに反射した自身の姿が、裸であることに気づいた。すっかり忘れていた。ここ一週間ほど、元の世界に帰るため無我夢中で壁抜けしまくっていたのが裏目に出た。ちょっと恥ずかしい。
俺はかろうじて見せることのできる、自身の背面を彼女に向け、誤魔化すように話した。すると、ミアが『この世界の攻略の仕方を教えるわ―――それと、結婚システムについても』と、口の端をわずかに緩めて言った。




