フィールドに巣食うボス(1)
俺は、幼い頃からゲームが好きだった。小説も好きだったのだが、その二つには共通することがある。
物語である、ということだ。
そして、物語には法則性がある。
例えば、ピンチになると『今だけ共闘しますよ!』とかつての敵が出てくるなど。
ゲームのプレイ時間や、読んだ小説の数が増えるにつれ、何となく次の展開が予測できるようになった。
俺の特技とも言える。
***
俺は、部屋中央部にある『治癒アイテム』に触れた。触れる前に逡巡しなかったわけじゃない。むしろ『これ触ったら、多分ボス出てくるだろ』と思った。
しかし、そこのところは準備万端である。
仮にボスみたいなのが出現しても秒速で逃げられるよう『治癒アイテム』が設置されている台座を壁に見立て、壁抜けの予備動作(スクワット34回)を完了させておいたのだ。これにより、俺はアイテムを回収し次第、スクワット1回を行えば壁抜けが可能である。
「よ、よし……取る。取るぞ。絶対にボスみたいなのが出てくるから取ったらすぐ壁抜けするぞ」
待っていて綺羅羅ちゃん。これが俺の異世界脱出の第一歩目だよ!
左手に火炎放射器、右手には掴んだ『治癒アイテム』。
想像はしていたが、けたたましい警報が鳴り響いた。
ダンジョンの名前が『地下』と言うだけはあって、音の反響がひどい。耳に響いて……たまらないなこれ。うるせー……
しかしだ。ボスが出てこようと、俺はこの台座に向かって壁抜けを発動するだけだ。そうすれば、事実上の透明に変化した俺の身体は、スライドするようにダンジョンの厚い壁をすり抜ける。
そう、この台座に向かって―――!?
「だ、台座が無い……」
まさか、アイテム回収したら沈んでいくタイプの台座だったのか。終わった、終わった俺。
壁抜けには、当然のごとく壁が必要だ。闘技場のような形のこの部屋は、かなりだだっ広い。全力で走っても、円周を形作る壁に到達するには20秒……いや、それ以上かかる。
同時に、部屋全体がぐらぐらと揺れ始めた。さっきまでの通路で無限湧きしていた骸骨たちが、鳴りを潜めていたこの大部屋でもわらわらと湧き始めた。その数、およそ10体ほど。
「……ちょっとヤバそうだな。来た道を引き返すか」
火炎放射器が有能だったのは、横幅の狭い一本道だったからだ。この円形の部屋では、いくら無限燃料と言えどもあまり頼りにならない。それこそ、囲まれたら詰みだ。
万事休す。仕方なく、道を引き返すべく振り向くと、あったはずの道は消失していて『ボス撃破まで通行不可』とのポップアップが。あぁ〜あ〜!
「……リトライとかあんのかな、このダンジョン」




