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第7話 学院生活が始まりました。

いよいよ、念願のご自身の制服姿で、お嬢さまの学院生活が始まりました。


モルガン伯爵家から、馬車を回そうと申し出を頂きましたが、市井の生活を知るためにも、と、もっともらしい言い訳をなさって、お嬢さまは今日も乗合馬車で学院に向かいます。もちろん、お昼御飯用のサンドウィッチも忘れずに。


紺の上着に赤のチェックのスカート。一年生のタイの色は赤。黒髪をみっちり三つ編みおさげに結って、登校です。私ももちろん同行します。

高位貴族の皆様は自分専用の控室をお持ちですが、それ以外は、侍女用の休憩所を使います。


私的には…正直王都は苦手です。ましてや侍女の控室あたりで、私の過去を知る者が揶揄ってくることは想像の範囲内ですし。


…ロイク家はよかったな…

そんなことを考えてしまいます。過去を詮索する人もなく、私はアメリーとして、やるべきことをこなせばよかったので。みなさんに大事にしていただきましたし。


お嬢様を送り出し、気合を入れて、侍女用の控室に入り、おとなしく本を読んだりしていましたが、他の侍女さんたちがレース編みをしていて、私にも教えてくれました。若い侍女さんが多く世代が違うので、私の知り合いはいないようで少しほっとした。


「私、今日、学院の医務室に行ったのよ。」

「え?ケガですか?どこですか?」


帰宅時間に、お嬢さまがそう言うので、青ざめる。お預かりしている大事なお嬢様に傷なんかついちゃったら、ジュリアン様に申し訳ない!

「アメリー、違うのよ。入校式で緊張したのか、貧血を起こして倒れちゃった子がいてね。あわてて背負って、医務室に駆け込んだの。」

「そうでしたか。」


すこし、ほっとする。しかも、力持ちだな。知ってたけど。


「そうしたらね…」

「え?」

「そこの医務官が素敵でねえ!」

「……」

「白い白衣、ほんのり薬品の香り…もう…その子と一緒にベッドで眠りたかったわ!はああっ。」

うっとりと医務官(の制服姿)を思い浮かべて、お嬢さまがため息までつく。

「……」

「聞いてる?アメリー?」

「…お嬢様?だからと言って、医務室に入り浸ったりするのはやめてくださいね?いいですね?医務室は具合の悪い人用ですから。」

「そ、そうね。知ってるわよ、その位。」

「覗きもダメですよ!」

「え~」


その医務官(の、制服姿)が、いかに素敵だったかを、乗合馬車に乗った間中、お嬢さまから聞かされる。


「そういえば、他の学生の制服姿はいかがだったんですか?」

医務官の話をそらそうと、話を変えてみる。


「そうねえ…男の子は上着にネクタイでしょう?発見が無いのよね。詰襟が良かったわ。」


なるほど。制服なら何でもいいわけじゃないんですね?

しかも、よくよく聞くと、9つ違いのお兄様が学院に行く前に、これまた従兄からのおさがりの制服を着て見せてくれたらしい。当時、お嬢さまは6歳。制服姿が素晴らしいものだと開眼した瞬間は…そこ?あの熊男?あの熊男ねえ…。


「詰襟って…ロマンがあるわよね。騎士養成校は詰襟らしいのよ。他の女の子たちが話してたの。」

「……」

「私…」

「お嬢様?お嬢さまが騎士養成校に行かれるのはお勧めしかねます!」


「あ、あら…そう?」










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