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第13話 モルガン伯爵家。

初夏。もうすぐ夏休み、というあたりで、試作品が出来たので、お嬢さまの兄上様とお嬢様で、モルガン伯爵家に呼ばれる。旦那様はクロエお嬢様が来たのを見てご機嫌である。


「今日はね、ちょうどジュリアンが帰ってきているので、挨拶がてらモデルにしようと思うんだ。入ってこい。」


兄妹は並んでお茶を頂いていた。私はその後ろに控える。


失礼します、と入ってきたのは…紺のスラックスに白のシャツ。そこに今回の夏用の制服としての紺色のベスト。ジュリアン様が羽織ってきたのは襟付きタイプのベスト。丁寧に所属を表すラペルピンを付けている。本来なら上着の立ち襟につける物。髪は邪魔にならないように後ろで一つに結んでいる。


「初めまして、パトリス様。そして、3日ぶりだね、クロエ。お土産を後で渡すからね。」


「……あ…」


「ああ、じゃあ、後姿も見せてもらっていいですか?」

「はい。」

ウエスト部分を調整できるように、尾錠が付けられている。動きやすいようにやや大きめに、丈も若干長い。


熊男、改め、パトリス様に言われて、ジュリアン様はモデルさんのようにくるりと回った。

「どう?クロエ?」

「……イイトオモイマス。」


まあ、どんな顔なのかは見なくてもわかる気がする。後ろから見ても…耳が真っ赤だ。


次にジュリアン様は詰襟型のベストを着て入ってきた。この場合はラベルピンは立った襟についている。…あら、こっちもいいわね?


ジュリアン様が、くるりと回って、お嬢様に微笑んでいる。

…いや…楽しんでる。


「お前としては、着た感じはどうだ?」


ふむふむ、と見ていた旦那様がジュリアン様に質問している。


「そうですね…夏ならやはり、襟付きの方が、詰襟よりは涼しそうですね。シャツだけよりはきちんとしますし。いいと思います。生地もさらっとしていますね。スラックスも涼しい気がします。」

「そうなんだよ。パトリス君が開発した、サマーウール、ってやつさ。軽いだろう?」


(へえ~。なかなかやるのね?熊男…。)


「はい。クロエ?どうかな?」

ジュリアン様がお嬢様に意見を求める。

「…イイトオモイマス。」


「では、着替えてまいりますね。」

にっこり笑って、ジュリアン様が部屋を出る。そして…戻ってきた彼は…

近衛の正装をしていた。


(こいつ…絶対わざとだろう?)


「なんだ、せっかく帰ってきて婚約者と久しぶりに会ったというのに、また呼び出しか?」

「ええ。午後から殿下と式典に出ますので。時間があまりないので、良かったらクロエと少し散歩したいのですが?」


(お、お嬢さま?気を確かに!ハンカチは持ちましたか?鼻血は出ていませんか?)


「イ、イイトオモイマス。」


護衛はいらないと言われたので、ジュリアン様とお嬢様が手に手を取って中庭に向かうのを見送る。お嬢さまの歩き方がぎこちない。


窓越しに…上着を脱いだジュリアン様とじゃれあいながら散歩するお嬢様が見える。何を言っているのかは…想像できる。


多分…制服を着せようとしているに違いない。



応対室は旦那様とパトリス様が生地の製造についての打ち合わせを始めたところだ。


「麻糸を織り込んでみたくて試行錯誤していたんですが、どうしても縮みが出てしまって。その過程で、できるだけウールの糸を細くしたくて、動力に水車を使ってみたんです。」

「ほう。麻の混紡か。それも涼しそうだがな。」

「完成したら、進呈いたしますよ。それより伯爵殿、うちは紡績専門ではありません。原材料の調達の問題もありますし。どなたか、生業にしている方に技術を提供する形にしたいのですが。」


(あらまあ…この熊は欲のないことで。)


「なら、その改良した紡績機を特許申請するか。軍のお抱えな…しっかりとしたところを選んでおこう。」

「ご面倒をおかけします。量産するならその方が間違いないので。」

「欲がないな。まあ、パトリス君とは親戚になることだし…いいところと縁が結べたようだな。」



皆で緑の濃くなった中庭を眺める。


今度は二人仲良く追いかけっこが始まっている。それを見て、旦那様が、おやおや、と笑う。


(多分…制服を着せようとしているだけだと思うけど。)







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