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第10話 もうすぐ冬ですが夏物の相談です。

「ねえ、アメリー。どなたか、軍に顔の利く方を紹介して!」

「…え?」


木の葉も散り急ぐ季節になった頃、お嬢さまが言い出した。

ちょうどお嬢さまのご実家のロイク家からリンゴが3箱と荷物が届いたところ。


「ですから…モルガン伯爵家のお茶会に呼ばれたとき、あんなに、行っておきましょうって、私、申し上げましたよね?」


りんごの木箱を二人で台所に運び込みながら、お嬢さまに言い聞かせます。(先ほど、一つはララ食堂まで運び込んだ。)


「…うっ。」


「う、じゃございません。お嬢さまの婚約者のジュリアン様のご実家で、春からずっとお茶会やら晩餐会やら…ご招待いただいておりましたね?」


「え…はい。」


「勉強が忙しいだの、風邪を引いただの、お腹を壊しただの…病弱な婚約者だと思われたらどうしますかと、あれほど…。」


「ねえ、アメリー?さっきから…モルガン伯爵家のお茶会と、軍と、何の関係が?」


「大ありです!モルガン伯爵、ジュリアン様のお父上は、軍の管理参謀をなさっております。説明いたしましたよね?私、説明いたしましたよね!じゃあその上司は?そう…陛下ですから!!」


「あ…はい。すみません。」





【ジュリアン様


クロエお嬢様はようやく、モルガン伯爵家のお茶会に出席なさいました。

旦那様と奥様は大変歓迎してくださり、お嬢さまのお体の具合などを気になさっていらっしゃいましたが…まあ、あの方は実は元気そのものでございます。


お手持ちはご実家から届いたばかりのリンゴ一箱。

これは、お迎えに来てくださったモルガン家の御者さんに積み込んでいただきました。


うちうちのお茶会ということで、お嬢さまはジュリアン様がお誕生日に贈ってくださった、深い緑色のワンピースを着ていかれました。お贈りされた貴金属関係が皆無でしたので理由を尋ねると、子爵家の金庫に入っているとのこと。いつかまとめて返そうとお考えの様です。致し方ございませんでしたので、お嬢さまのおばあさまから頂いたというシトリンのネックレスとイヤリングを付けました。色が合ってよかったです。


こう言っては何ですが…きちんとした格好をなさり、口を開かなければ、お嬢さまは流れるような黒髪とくりっとしたエメラルドの瞳…大変可愛らしい方でございます。



さて、お嬢さまの目的は前回の手紙でお知らせしました通り、兵士の夏の制服の改善です。国元からリンゴと一緒に送られてきたのは、生地のサンプルの様です。


旦那様と早速、生地の見本を出して、議論なさり…製品サンプルが出来上がったら見ていただける確約を取り付けられたようです。素晴らしい制服愛。さすがの旦那様も押され気味でございました。】




奥様はそんなお二人を楽しそうにご覧になっておられました。


「うちは男の子二人だったでしょう?思春期になると親と口きいてくれなくて…女の子は良いわねえ…あんなに楽しそうな旦那様も久しぶりに見たわ。うふふっ。」


…ほとんど、制服の話しかしておりませんがね?










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