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第34話 疑惑・疑念

 「ユーイチロウ……」


 僕を殺し、先輩から神の力を奪おうとした救世主様。

 どうしてここに? 他所の世界に島流しされたんじゃなかったのかよ自主的に。


「久しぶりだな、末永」


「とうぶん会わないんじゃなかったのかよ」


「そのつもりだったんだが、ちょっとある噂を小耳に挟んでね」


「噂?」


「霧素……今は霧乃か。霧乃がとある世界のポインターになってるって噂」


 ポインター。

 また変な単語がでてきたな。

 その噂自体どこで聞いたんだよ。

 そもそもこいつの話を鵜呑みにしていいのかも怪しいね。


「ポインターって?」


「世界から世界へ渡るのは非常に難しい技術だ。俺でさえ、俺一人を移動させるだけで精一杯。だから普通は、みんなで異世界旅行、なんて楽しいピクニックはできないのさ。ものすごく時間と技術をかけて準備しないとね」


「らしいね。霧乃から聞いたよ」


「でも、ポイントをあらかじめ設定しておけば、その難易度は半減するんだ」


「……目印、ってこと?」


「そう。例えばAからBの世界に行きたいとき、Aの世界の人間の一部をBの人間と同化させれば、ポインターとなる」


「そのままAのやつを目印にすりゃいいんじゃないのかよ」


「無理さ。AとBが同化した人間じゃないとダメなんだ。Bの世界にいるAは、いわば存在しないはずのイレギュラー。世界から認められていない幽霊なんだ。Aの世界から探すこともできない」


 どういう理屈だ?

 一応これはSF? 苦手なんだよなぁSFって。

 リアリティ重視してますよ、みたいな面しておいて普通にめっちゃファンタジーなんだもん。

 なんでもありじゃん。『高度に発達した科学』みたいな設定。


「はいはい。で、霧乃がそのポインターなんだって? なにを根拠に」


「ピユシラの世界から人や怪物が頻繁に来てるだろ、こっち。俺がまだいたころから多かった」


「ピユシラが犯罪者だから?」


「追手が来るのは頷けるが、頻度が多すぎる。ありえない間隔だ。ポインターがいるとしか思えない」


「なんで霧乃になるんだよ」


 ふふ、とユーイチロウが鼻で嘲笑った。

 僕の無知加減に呆れているように。

 いちいち腹の立つ野郎だ。


「さっきの解説の続きになるが、じゃあこうはならないか? 適当な人間をさらってポインターにすればいいだろ。とね」


「まぁ」


「でもね、無理なんだよ。ある意味幸運なのかな。この世界の人間の肉体は繊細でね、よその世界の人間の一部を取り込んだら、中毒で間違いなく死ぬんだ。全員じゃないけどね、俺や巡姉ちゃんは平気だし」


「だったら霧乃も……」


「忘れたのか? 霧乃は人間じゃない」


「…………」


「人間の真似事をしているだけで、人に近いだけの人ではない存在。化け物なんだ」


「…………あっそ、知らん。勝手に異能バトルやってろ」


 歩きだしてユーイチロウを横切る。

 人間ではなく化け物。だからポインターになれる。

 知るかそんなの。

 知ったことか。


 理屈はそうだとしても、どうにも我慢ならない。

 霧乃は化け物じゃない。鼓動する心臓はなくても、人工的に作られたとしても、彼女は人間だ。


 僕の、僕の……僕のそこそこ仲の良いクラスメートなんだ。


 ていうか僕からしたらお前のほうが化け物だぜ、ユーイチロウ。


「忠告はしたぞ末永。悪いが俺はもう行くぞ。長居するとSOBAに勘付かれるからな」


 うるさい。

 二度と僕の前に現れるな。


 だいたい、仮に霧乃がポインターとやらで、ピユシラの故郷と繋がっていたとして、ピユシラを排除したがる理由は……。


「僕のせい?」


 僕と巡凪先輩のせい?

 でもそのためにわざわざ他所の世界の住人をよこすくらいなら、SOBAがピユシラを抹殺すればいいだろ。

 そのポインターの件、SOBAも気づいているのか?


 くそっ。気になる。

 霧乃、お前の望みは何なんだ。


 って、信じてんじゃないよあいつの言葉。


「…………」


 先輩に電話をかける。


『わー!! アヤメくんから電話してくるなんて珍しいわね!! くふふ』


「ちょっと、お願いしたいことが。……ん?」


 雨が降ってきた。

 あれ、でも冷たくない。

 服も濡れないし。

 それに、妙だな。空がーー赤い?


 夜なのに。


『え!? 結界? しかもこんなに広範囲!!』


「結界? これが?」


『アヤメくんも結界内にいるの!? 一般人は除外されるはずなのに』


「へ? は?」


 結界ってことは、異能バトルがはじまるってことだよな。

 どういう仕組みなのか知らないが。


 適当に歩いてみる。

 人の気配がない。

 車は走っているのに、誰も運転していない。


『あっ、ごめんなさいアヤメくん。任務用携帯に着信だわ』


「そんなのあるんすね」


『任務中はスマホじゃなくてガラ……ガラクタ携帯? なのよ。丈夫で扱いやすいから』


 ガラケーのガラはガラクタのガラじゃないぞ。


「僕のことは気にせずでてください」


 こっちにも着信が入った。

 霧乃からだ。

 一旦先輩との通話を切って、霧乃からの着信に応答する。


『末永さん、聞こえますか?』


「う、うん」


『ですよね。わたしが結界に入れました』


「うん?」


『トラブルが起きてから張るのが結界。一般人が感知できない裏の世界を構築してそこに敵や味方を強制隔離する。今回、わたしは結界が張られるタイミングであなたも隔離対象にしました。人手が足りなくなると踏んで、わたしが独自に判断しました』


「そ、そうなんだ。なに? ついに僕も異能バトルに参加? わかった、強敵のヤバさを演出するために殺されるモブをやればいいんだな」


『ふふ、違います。この結界の理由はとある土着信仰によって生じた悪霊の暴走。しかし、わたしはこれをブラフだと考えます』


「というと」


『最近、ピユシラさんの世界からいろんなものが来るんですよ。SOBAでも調査しているんですけど、原因は不明。たぶん、本格的にピユシラさんを捕まえに来たのかもしれません。あくまで、憶測なんですけど』


「悪霊騒ぎにかこつけて、ピユシラを殺そうとしている?」


『たぶんです。SOBAの意識がそっちに向いていれば、こっちの世界に侵入しても気づかれにくい。……なので末永さん、ピユシラさんのところに向かってください。戦えなんて言いませんけど、ピユシラさんにはあなたが必要なんです』


 煽るだけ煽って、霧乃は通話を切った。

 ピユシラを守れだって?

 そりゃ守れるなら守りたい。

 不安で心配だ。


 でも、引っかかる。

 ユーイチロウの言葉を信じたわけじゃない。

 わけじゃないけど。

 どうしてそこまで、ピユシラを守ろうとする。

 霧乃が。


 霧乃、お前は……。

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