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【第8話】さて何を話そうか

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ポイントの方よろしくお願いします。

 あの後こっちだと思って進んだ道が全くの逆方向だった上、さらに道が分からなくなるという事態に遭遇。

 

 運に身を任せ道なりに進んだ結果、本来なら10分で着い駅に一時間かけて到着するという、常人には到底真似できない偉業を達成した。

 

 その後数駅乗り越し最寄駅に着いた俺は、競歩選手かと言われるぐらいの早歩きで道を進み、自宅であるマンションに到着した。


「早く来いよ。5階に何があるんだよ」

 

 何故かいつもエレベーターが五階でずっと止まっているのはマンション七不思議にカウントしてもいいだろう。後の6つは知らん。

 

 2、3分ほど待ってやっと降りてきたエレベーターに乗り、家がある十階まで上がる。


「おっほ怖え」

 

 廊下で手すりの下を覗く行為は高所恐怖症の俺には恐怖でしかないが、何故か癖になってやめられない。


「ただいま」


「おかえりー洗濯するからさっさと着替えてね。もうすぐご飯できるから」

 

 俺が家に入ると、やたらと家庭的な妹がおかんみたいな事をいいながら出迎えてきた。

 

 そう、この妹こそ俺のマイエンジェル涼川小春だ。

 

 1歳年下で、俺とは違う高校に通っている。腰まである長い金髪は、やっぱり兄妹なんだなと思わせる。

 

 きっと学校でもモテモテなのだろう。絶対そうだそうに違いない。


「小春、母さんは?」


「夜勤だって」


「またか」

 

 俺の母親は薬剤師でよく夜勤に駆り出される。父親はジャーナリストで世界中を飛び回っているため、家どころか日本にすら滅多に帰れない。

 

 そのため家の家事は俺と妹である小春の二人で当番を組んで生活をしている。今日は小春が当番の日だ。


「と言うか料理ぐらい俺がやるぜ?」


 自慢なんだが俺は洗濯以外の家事は基本できる。料理は趣味だし最早特技の部類だ。料理できる男ってカッコイイという理由で死ぬほど練習した。


 洗濯は未だに柔軟剤とか漂白剤の違いが分からないからできない。


「いや、お兄ちゃんやたらと凝った料理作るから時間かかるじゃん。しかも味濃いし」


 中々心にくる事言うなこいつ。誰に似たんだ一体。


「味濃い方が美味いだろ」


「ザ男の味覚って感じだね。それにずっとそんな食生活したら栄養偏るでしょ」


 こいつ、この歳で栄養面まで考慮しているのか。


 いい嫁さんになる。間違いない。貰い手は始末するが。


「だから大人しくしといてね。それにもうご飯できたから」


 小春は俺に悪態をつきながらテーブルに晩飯を並べていく。


「お、今日は野菜炒めか」


「時間なかったから余り物で作ったんだー」


「へー」


 余り物でこんな色とりどりの飯が作れることに感動しながら、俺は椅子に座る。


 小春の作った野菜炒めは野菜本来の食感と味を残しつつも、俺好みの味付けに仕上げられていた。


 俺は小春の料理を楽しみつつ、先の楓との会話を思い返していた。


 改めて考えると、俺は今日女子と友達関係になった訳だ。今までの人生で、女子とは偶に話したり、告白されたりみたいな関係になったことはあった。


 しかしこうもしっかりと、面と向かって友達になってくれと言われたのは初めての経験だ。


 そして友達になった以上、今までとは違い気さくな関係になったということ。


 そこで問題になるのが会話の話題だ。偶に話す程度の仲なら気にする事は無いが、友達となると流石に話題が持たない。


 普段ヒロトとかアキラと話してる内容は多分通じないだろうし。しかも楓って異性だし。


 これからも友達として接していく中で、やっぱり会話は重要だ。そこで楓に苦労かけるのも申し訳ないしな。


 どこかに異性との会話を教えてくれる奴がいればいいんだけども。


「ん?」


「どうしたのー? キャベツの芯は栄養あるから頑張って食べてね」


 生まれてこの方ずっと一緒にいるから忘れてたがよくよく考えたら小春って女なんだよな。俺と違って人当たりが良いから男の友達も多いし。天使だし。


 いるじゃん。ここに適材適所の人材が。


「なあ小春。1つ質問なんだが」


「何ー?」


「異性と何を話せば良いと思う?」


「……好きな人でもできたの?」


 さっきまでのふわふわとした雰囲気から一変し、小春のトーンは低くなってた。目も何というか世界の滅亡を見たような感じだ。


「いや、女子の友達ができてな。話題がないから何か教えてもらおうかと」


「なるほどねー」


 小春の表情が段々と戻っていく。


「話題かー。最近だとシャイニーズとかの話してるよー。どのグループが好きー? とか」


「シャイニーズ? 男もそんな話すんのか?」


 シャイニーズといえば言わずと知れた男性アイドルグループの大御所だ。曲を出せばランキングを独占。年末の歌番組にも毎年出席するイケメン揃いの集団。


 俺のイメージ的には女子には人気あるけど男は興味ないって感じだが。


「案外するんだよー。それにシャイニーズのメンバーだって、シャイニーズのファンだった男の人じゃん」


 なるほど。そう言われてみればそうだな。テレビとかで元々ファンで誰々に憧れて入ったって言ってるメンバーって結構いたし。


 でもなー、楓ってシャイニーズ好きなのかな。あいつ自身がシャイニーズみたいなもんだし。


「他は?」


「んー、あとはドラマとか、好きなバンドとか。ていうか、人と話すならまずその人の事よく知るべきだよー」


 よく知るか。薄々思ってたけどやっぱりそうだよな。


「わかった。今度聞いてみよう」


「よく分からないけどお役に立てたならよかったよー。あ、そうだ」


 小春は何か思い出したように喋り出す。


「明日、小春委員会で早く家出ないといけないから。お兄ちゃん遅刻しないでね」


「俺が寝坊するようには見えるわけ?」


 俺は今まであんまり寝坊したことがない。あんまりないだけでゼロでない。


「寝坊はしないけど小春がいなかったら普通に二度寝するじゃん」


 小春さんは手厳しいな。暖かい布団の誘惑に負けちまうのは、人類の性質上仕方ないのさ。


「とにかく、明日は朝の用意自分でやってね。朝ごはん凝り過ぎて遅刻しないようにね」


「おいおいそんなの当たり前じゃないか。俺を誰だと思ってんだ?」


「社会に順応できるかできないかギリギリのラインにいる人?」


 はは。相変わらず小春さんは本当に手厳しいな。お兄ちゃんちょっと涙出てきちゃったよ。

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