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【第6話】王子様の家へ行こう

 あれから少しして先生が俺と黒崎の荷物を持って保健室へ戻ってきた。

 

 他の先生には話を通したのでもう帰って大丈夫とのこと。ちなみに俺は発熱で早退ってことになっているらしい。

 

 しかし早く帰れると喜んでたのも束の間。黒崎の体調はさっきよりも悪くなっていた。

 

 立つだけでフラフラしてるし息も荒い。

 

 伝説の智将と呼ばれた気がする俺は、黒崎を一人で歩かせるのは困難だと判断。色々考えた結果、黒崎は俺の腕に抱きついてバランスを取る形で進むことになった。

 

 傍から見たら公の場でイチャつくバカップルだが、人命救助という真っ当な理由があるので問題ない。


「階段は危ないからエレベーター使うぞ」


「ああ、うん」

 

 俺は黒崎を抱え、エレベーターでホームに上がる。

 

 電車は案の定来ておらず、十分ほど待たなければならない。

 

 取り敢えず俺はフラフラの黒崎をベンチに座らせ、近くの自販機に向かう。投入口に小銭を入れ、左上にあったスポーツドリンクを購入する。

 

 熱出したときはこれがいいんだ。効率よく栄養が摂取できるうえに、熱を出した時不足しがちな水分も補給できる。

 

 俺も熱出した時母ちゃんによく飲まされたものだ。調子乗って三リットル近く飲んで吐いたけど。


「ほら、これ飲め」

 

 俺はさっき買ったスポーツドリンクを黒崎に渡す。

 

 また「そんなの申し訳ないよ」みたいなこと言われるかと思ったが、案外素直に受け取ってくれた。


「このお礼は必ずするよ」


「そんな気にすんな。俺の勝手なお節介だ」

 

 まだ何か言いたそうな黒崎をよそに、俺は腕時計で時間を確認する。十分間なんて案外すぐなようで、そろそろ電車が到着する時間だ。


「ほら、電車来たぞ。肩貸せ」

 

 俺はさっきと同様黒崎を抱きかかえ電車に乗る。電車はいつも通り、ガラガラで座り放題だ。

 

 黒崎をドア近くの座席に座らせ、俺もその隣に座る。


「お前の駅って室塚だっけ?」


「ああ。3つ先の駅だからすぐだと思うよ」

 

 電車で3駅先って結構近くに住んでんだな。駅からどれぐらい歩くのか知らないけど。


『間もなく、室塚、室塚』

 

 車内にアナウンスが響く。

 

 本当にすぐ着いたな。すぐに帰れてちょっと羨ましいぞ。


「ほら、立てるか?」

 

 俺は手を伸ばし、黒崎の身体を起こす。


「君には頼りっぱなしだね」

 

 熱のせいかどうかは分からないが、黒崎は少し顔を赤らめながら俺の手を掴む。

 

 俺は手を自分の身体の方へ引き、黒崎を起こす。そのまま黒崎を肩に掴まらせ、改札の方へ歩く。

 

 それから改札を通り駅の外に出ると、そこは普通より大きめの家が建ち並ぶ住宅地だった。


「そこを左だよ」

 

 俺は黒崎の指示通りに道を歩いていく。

 

 さっきからすれ違う車も高そうなのばっかりだし。俺みたいな庶民とは住んでる世界が違うのがひと目で分かる。

 

 きっと買い物する時もセールが来るまで待ったりとかしないんだろうな。資本主義の犬共が。

 

 富は皆に分配すべきだと思わんか? 俺は独占するけどな。


「ここだよ。ここが私の家だ」

 

 黒崎が我が家だと言う家は、白を基調とした外観の四角い豪邸だ。なんで金持ちって四角い家に住みたがるんだろうか。

 

 周辺の家に比べれば少し小さめの家だが、俺基準からすれば十分広い。我が家を北海道とするなら黒崎の家はユーラシア大陸ぐらい広い。

 

 それは少し言い過ぎたからオーストラリア大陸位にしておこう。とにかくそれくらい広い。


「えっと、一人で大丈夫か?」

 

 家に着いたとは言え、こいつが一人で歩くこともままならないことには変わりない。

 

 両親も留守って言ってたし、ここで別れた瞬間倒れて取り返しのつかないことに、なんてのは後味が悪い。


「どうだろう。一度試してみようか」

 

 黒崎は俺の腕から離れ、玄関の方へ歩き出す。しかし途中でふらついて倒れそうになったので、俺は慌てて黒崎の身体を支える。


「まいったね。どうも真っ直ぐ歩けないよ」

 

 俺の顔を見ながら黒崎は笑う。


「はあ。どこまでなら大丈夫だ?」


「どこまでとは、どういう意味だい?」

 

 黒崎は首を傾げる。


「女の家に男がずかずかと押し入る訳にはいかんだろう。見て欲しくないのもあるだろうし」 

 

 実際黒崎が俺の腕に抱きついて歩いてるってのでもだいぶマズイからな。本当に改めて俺が一流男子高校生でよかった。


「君なら構わないよ。私の為にやってくれているのだから」


「あーそうなの? じゃあお邪魔します」

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