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【第5話】2度目の救出

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ポイントの方よろしくお願いします。

 俺は助けてと言う黒崎を抱え一階の保健室まで来ていた。黒崎の体調は俺の予測した通り悪く、体温も高い。


「失礼します。ちょっと見て貰いたい奴が……っていねえな」

 

 保健室のドアを開けて先生を呼ぶが、出てくる気配がない。保健室って先生が常駐してるイメージだったけど、そうじゃないみたいね。


「しゃーねえな。取り敢えずそこのベッドで横になってろ」俺は黒崎をベッドに寝かせ、机の引き出しから体温計を取り出す。


「随分と手慣れているんだね」


「ん? ああ常連だからな」

 

 俺は危機管理能力が高いため、少しでも頭痛がしようものなら保健室に駆け込む。耐える、我慢するという言葉は俺の辞書にない。

 

 ほとんどは氷袋貰って終わりだけど。実際あんま病気にならないんだよな。


「三十七度二部か。うん、熱だな。取り敢えず氷袋持ってくるわ」

 

 熱あるときに頭冷やしても意味ないってどっかで聞いたけど。気休めぐらいにはなんだろ。

 

 貼ってたらなんか気持ちいいし。体感ちょっと楽だし。


「すまない。2回も助けてもらって」


「気にすんな。自分で体調不良に気づけただけ進歩だ」


 この前みたいに気づけなくて放置せず、俺に助けを求めたのはいい判断だったと思う。

 

 俺が黒崎の進歩に感心していると。


「ごめんなさい。ちょっと野暮用で外出てたの。あら? 涼川君また頭痛いの?」

 

 保健室の先生が降臨した。


「いや、今日は俺じゃなくてそこで横になってる奴です」

 

 俺はベッドにいる黒崎を指さす。


「熱計ったんすけど七度二部ありました」


「あら。ほかに何か異常は? 咳が出るとか、頭が痛いとか、気分が悪いとか」

 

 先生は黒崎の額に手を当て、熱いわねと呟くと机からカルテを取り出した。


「咳は、出てないです。ただ気分が悪くて」


「うーん。最近何か体に負担かけるようなことした? もしかしたらストレスが原因かも」


「それは……」


 黒崎は少し黙り込む。

 

 いや、あるだろストレス。この前階段でふらついてたばっかだろ。

 

 忘れてくれって言ってたし、もしかして先生でも知られたくないのか?

 

 面倒くせえが、ここは一肌脱ぐか。


「あー俺最近体調悪かったから、俺の中の病原菌が移ったのかもしんないです」


「あら、そうなの? そんな風には見えなかったけど」


「それはほら、鍛えられた強靭な肉体がカバーしてたんで」

 

 実際朝はだるいし昼は眠いし。それなのに夜だけテンション高いから、何かしらの病気かもしれん。


「それはそれとして困ったわね。早退する? 家にご両親は?」


「今はいません。その、仕事で」


「んー困ったわねえ。一人で帰らせるわけにはいかないし」


 先生は首を傾げた後、何か名案を思いついたような表情で俺の方をちらっと見た。


 なんだ一体何をさせる気なんだ。


「ねえ黒崎さん。あなたさえ良ければなんだけど、涼川君に送ってもらうのはどう? 彼なら変なことはしないから。勿論断ってもらっても大丈夫よ」


 いやそうはならんだろ。


 なんで? 俺の了解は?


 何故か信用があるのは別としてだな。これでもちゃんと日本国民で基本的人権があるはずなんですけど。


「なら、お願いします」


 だからなんでそうなんだよ。

 

 俺に対してなんでそこまで信用があるんだよ。1回会って助けただけだし実質初対面みたいなもんだろ。

 

 いや別に変なことしないけど。変なことしないけどそれはそれ、これはこれだから。


「先生? 俺の意見は?」


「あら別にいいじゃない。どうせ早く帰りたいんでしょ? 一緒に早退させてあげるから」


 全くこの先生は。俺の意見ガン無視じゃねえか。とんだ大問題教師だ。


「早く用意して帰りましょう。黒崎の容態は一刻を争いますから」


「ホント扱いやすいから助かるわ」


 先生は褒めてるのか、馬鹿にしてるのか、よく分からないことを言う。


 多分、というか絶対馬鹿にされてるけど。


「そう言えばあなた達先生に保健室行くって言ったの? 今授業中でしょ?」


 時計を見れば授業が始まって十分程度経っている。

 

 授業サボれてちょー嬉しい。


「あーここに来る途中で別の先生とすれ違ったんで多分伝わってます」


「あらそう。なら私は二人の荷物取ってきてあげるからここで待ってて頂戴」


 先生は保健室を後にする。


 そして残された俺と黒崎は、先生が帰ってくるまで気まずい時間を過ごすことになる。


 ていうか俺ってこれから黒崎を家まで送り届けなれければならんのよな。滅茶苦茶気まずいじゃねえか。早く帰れるってことに引っ張られてそこまで考えてなかったぜ。


「その、すまない。送り迎えまでしてもらうことになってしまって」


 黒崎は少し下を向いて、何だか申し訳なさそうだ。


 こいつと会ってから俺謝られてばっかりだな。


「別にそんな謝らなくたっていいぞ。こっちはどさくさに紛れて早く帰れるし」


 変に噓をつく必要も無いので、俺はありのままの真実を黒崎に伝える。


 皆が熱心に授業を受け勉学に励んでいる中、悠々と帰宅するのは素晴らしい行為だしな。


「ていうかお前はいいのかよ。数分話しただけの俺を信用して」


 俺は理性の制御に長けている一流の男子高校生だから問題ないが、女と聞くだけで欲情するそこらの三流男子高校生なら大変なことになる。


「君は、先生の言う通り変なことするようには見えなかったから」


「いやそういう問題じゃなくだな」


 黒崎はもう少し人を疑うということを覚えたほうがいいのかもしれない。かもしれないというか絶対覚えた方がいい。


 俺は頭に手を当ててため息をつく。こいつの将来が心配でならない。

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