【第39話】解決
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「さて、君の名前は山崎だったかな」
楓が勅使河原へ詰め寄る。
「へ、へえ。俺の事知ってんのかい」
勅使河原は震える声で答える。
「勿論。碌な人じゃないって有名だよ」
楓の言葉に、勅使河原の顔が段々と渋くなっていく。
「さっき聞こえて来たセリフだけでも、随分と非情じゃないか」
楓は更に勅使河原に近づいて行く。
「このことを誰かに見せれば、君達はどうなるだろうね」
「そ、そんな証拠どこにもないだろ」
勅使河原は精一杯と思わしき反論を返す。
「理解力の無い人だね。君は今反論できる状況なのかな? 私にはとてもそうは見えないけどね。それに、証拠ならあるよ」
楓はスマホの画面を勅使河原に見せる。そこにはさっきの一部始終を収めた動画が流れている。
「な……いつ、どうやってこんな」
勅使河原は顔がどんどん青くなっていく。そしてこの映像が撮られていたであろう方向へと目を向ける。
そこには物陰に隠れた京さんが、怯えながらスマホを抱えていた。
「お前か!」
勅使河原は怒りながら京さんの方へ歩き出す。しかしその瞬間、楓は勅使河原の襟を掴み、行動を阻止する。
後ろから急に止められた勅使河原はバランスを崩し、その場に倒れ尻餅をついた。
「駄目だよ。まだ話は終わってないんだから」
楓は勅使河原を乱暴に起こし、顔を覗き込む。
「いいかい。私が言いたい事はつまり、君の今後なんてどうにでも出来るってことだよ。正直言って私は君のことが嫌いだし、どうなろうが知ったことじゃない。むしろ徹底的に……いや、それ以上はやめておこうか。慶はどうしたい?」
「え?」
突然の事に俺は驚くが、直ぐに落ち着いて自分の心情を話す事にした。
「俺は正直、これ以上関わらないってんなら何でもいい。変に騒いで余計に面倒くさい事になるのはご面だ」
何事もなくいつもの生活に戻れるならそれがいい。また注目の的になるのは面倒だ。
「分かったよ。と言う訳で、慶と私を含めたその周りの人にこれ以上関わらないと、ああ、ついでに慶のデマも訂正して貰おうかな。誓うなら、君はこのまま解放される。誓わないのなら、私はやるべき事をするまでだよ」
楓は淡々とした声色でそう答える。
「や、山崎。要求飲んだ方がいいって!」
「そうだぜ! 俺たちの立場が悪すぎる!」
取り巻き達からも降伏を薦められ、勅使河原の混乱は加速する。周囲を必要以上に見渡し、どうにかこの場から逃れたい様子だった。その様子を見た楓は再び勅使河原へ詰め寄る。
「私は部活を抜けてきていてね。出来れば早く決めて欲しいんだ。私の口調がまだ丁寧な内にね」
楓はトーンを更に落とし、冷たい声を出す。
その光景に肝を冷やしたのか、勅使河原は下を向き、小さな声で承諾した。
「よかったよ。じゃあもう話は終わりだから、私の視界から消えてくれるかな。今すぐに」
言葉の内容とは裏腹に、楓の表情は笑顔だった。
その光景に恐怖心を煽られたのだろうか。勅使河原は情けなく這いつくばり、最後は取り巻き達に支えられてこの場を去って行った。
勅使河原は楓の要求を飲んだ。つまり、ここ数週間俺に纏わりついた問題は、たった今解決したという訳だ。
あっけないと言えば嘘になるが、意外にもあっさりと決着がついたな。




