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【第30話】デマ情報拡散

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ポイントの方よろしくお願いします。

 それから日が経ち、1週間も終わりを迎えた。その間、勅使河原は絡んでこず、変なプリントも入っていなかった。

 

 お陰で安心して日々を過ごす事ができ、京さんと楓も順当に仲を深めていた。

 

 土曜日はアキラとヒロトに呼び出されてペットボトルロケット野球世界大会に出場した。因みに出場者は合計3名。

 

 日曜日には楓と先週行きそびれたパンケーキ屋に行き、干したての布団みたいにフワフワなパンケーキを楽しんだ。

 

 楓と、今度は京さんも連れて行こうなんて話をして別れた次の日。

 

 俺は良い物を食べた余韻を残して弁当を作り、学校へ向かう。

 

 途中の駅で楓と会い、校門付近で京さんと会う。そして色んな奴から視線を集める。もうすっかり習慣付いた一日のルーティンだ。

  

 ただ今日は少し違った。いつもは有名人を見る様な目だったが、今日は犯罪者を見るような目で俺の事を見てきた。

 

 廊下を歩いていてもその目は変わらない。それは教室に入ってからもだった。

 

 皆、俺が入って来るや否やヒソヒソと陰口を叩き始める。訳が分からないまま俺は自分の席に向かうと、俺がアキラとヒロトが血相を変えて寄って来た。


「慶君! 大変だよ!」


「おおう。どうした一体」


「ちょっと今回のはシャレにならん。これ見てみい」

 

 アキラはスマホを操作して画面を俺に見せてきた。そこにはSNSのタイムラインが映っており、幾つかの投稿が表示されていた。

 

 内容は俺に関することだ。


『涼川慶は女をとっかえひっかえしてるクソ野郎』


『他所の学校の女に手を出して堕ろせと強要した』


『黒崎楓の事は奴隷としか思っていない』


『図書部の女に金を貢がせている』


『どっかの社長の情婦をやってる』

 

 等々と、複数のアカウントからありもしない事が大量に書かれていた。


「俺の所にまわって来たんは昨日やねんけど、どうも先週辺りから拡散されとるみたいでな。他のSNSとかでも拡散されて、土日の間に一気に広まったみたいや」

 

 成程。それでさっきからやたら白い目で見られてるのか。


「出元は特定できないのか?」


「無理やな。ハンドルネームも変な文字列やし、俺らに特定する技術はないな」


「なるほどな」

 

 しっかし、まさかここまでの事態になるとは。

 

 プリントからいきなりハイテクになり過ぎだろ。これがデジタルトランスフォーメーションってやつか。


「どうしよう慶君。もう取り返しのつかないとこまで来ちゃってるよ」


「うーんそう言われてもな。どれもこれも、身も蓋も無いデマだし、俺がどうかしようとして解決できる問題でも無いし」


「風化するのを待つしかないって事?」


「それしか無いな。人の噂も四十九日って言うし」


「死んどるやんけ」


「だからだ」

 

 俺だけが何か言われるならどうって事はない。名前も知らない誰かに何を言われたって、俺は特に気にしないし、何のダメージもない。被害者としてヒロトに癒してもらうだけだ。

 

 だがあのメッセージを見るに、矛先は楓や京さんにも向いている。

 

 俺と関わる事で、楓が今まで必死に努力して積み上げてきた周囲からの信頼や評価を落とすことになんてなったら。俺がずっと傍にいるなんて大それたセリフを吐いたって、それが原因で楓のトラウマを再び蘇らせる事態になりかねない。

 

 京さんも京さんで、今まで誰かの目に晒される生活なんて送ってこなかったんだ。それがいきなり注目されるようになって、まだその状況に慣れてないのにこれだ。

 

 変な噂が立つような態度を取っていた俺にも非があると言われれば一ミリ位はそうだが、だとしたってこれはやり過ぎだ。

 

 どうする? このまま楓や京さんと関係を断ち切るか? あの時吐いた言葉を嘘にしてしまうが、楓にはもう京さんがいる。ここで俺は身を引いた方が得策なんじゃないか? 

 

 頭を抱えてらしくもない事を考えていると、向こうから今あまり見たくない顔が近づいてっ来た。


「よお涼川。久しぶりだな」

 

 勅使河原は取り巻きと思われる数人を引き連れ、気色の悪いニヤニヤ顔で俺に話しかける。


「どうしたんだ? 元気がないぞ。社長の相手で疲れたのか?」


「それか2号の相手か?」


「他の女かもな。いや、男ってこともあるかも」

 

 そいつらは口々にそう下らないセリフを吐くと一斉に笑い出した。

 

 こうも下らないと、一周まわって清々しい。

 

 どうやったらここまで程度の低い人間が出来上がるのか。アメリカかどっかの大学で研究してみて欲しい。被検体なら目の前にいるからいつでも連絡してくれ。


「それで、要件はなんだ?」


「おいおい。用がなきゃ来ちゃいけねえのか?」

 

 勅使河原はまたしても、嫌な笑い面を浮かべる。


「俺はただご学友に朝の挨拶と、今日の調子を聞きに来ただけだ」


「それはどうもご苦労様。調子なら比較的良いぞ」


「そうは見えねえな。困ってるって顔だぜ。どうした? 相談があるならのってやるぞ」

 

 表情筋が固まったのか、勅使河原はずっとけったクソ悪い顔のまま、喋り方も半笑いだ。


「相談を持ち掛ける程お前は俺と親密な関係でもないだろ」

 

 俺の発言が面白くなかったのか、勅使河原は小さく舌打ちをした。


「相変わらずノリの悪い奴だな。もういい。朝から時間を無駄にしたぜ」

 

 なんてセリフを吐いて勅使河原とその取り巻き達は去っていく。できればもう二度と来ないで欲しい。


「相変わらず山崎君って性格悪いよね」


「ああ。とてもヒロトや京さんを輩出した中学校を出てるとは思えんな」


「鷹がトンビ産んどるな」


「あいつを平凡枠に入れるんじゃねえよ」

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