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【第28話】俺の話題

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ポイントの方よろしくお願いします。

 昼休み。俺はいつもと同じように弁当を持って階段へ向かう。楓は昨日みたいになる事を危惧したのか、先に行っていると連絡が入った。

 

 俺が階段に到着すると、楓の隣にもう一人の影が見えた。


「慶さん。お邪魔してます。その、楓さんにお呼ばれしまして」


「せっかくなら三人で食べようかと思ってね」

 

 楓は風呂敷を広げて弁当を取り出し、ふたを開ける。それから目をつぶってウンウンと頷き、小さな声で「今日も美味しそうだ」と呟いた。


「ほいか。俺は別にいいけど京さんは大丈夫?」


「はい。その、私もいつも一人で食べてたので、誰かと一緒に食べるのは楽しみです」

 

 京さんは弁当の蓋を開けて箸を手に取る。


「じゃあもう頂こうか。今日はお魚なんだね」


「昨日の晩飯で作ってな。美味かったし弁当にも入れようと思って」

 

 楓は弁当に入った鯖の塩焼きの切り身を箸で掴み、口へと運ぶ。


「やっぱり君の作るご飯は美味しいね」

 

 楓は今日も満足気だ。これを見るだけで毎朝早起きする甲斐がある。

 

 俺がある種の達成感を味わっていると、京さんが不思議そうな顔をこっちを見ているのに気が付いた。


「どうした京さん」


「あ、いえ。その、もしかして楓さんのお弁当って慶さんが作ってるんですか?」


「そうだな。もう1か月になるか」


「1か月。毎日ですか?」


「休みの日以外は」

 

 京さんは心底驚いた顔をした。


「それは、お二人は凄く親密な関係なんですね」


「そうだね。慶は私にとって始めての友達だから」

 

 楓は弁当を半分近く平らげ、話に食い気味に入り込んできた。


「なるほど。親友ということですね」

 

 京さんの事を聞いた楓は「親友」と小さく呟いて固まった。誰かと友達になる事すらままならなかった楓にとって、親友という響きは刺激が強すぎた様だ。


「でも慶さんって、色んな事が出来て凄いです。時々頼りになりますし」


「そうだろう? 慶はすごいんだ」


「なんでお前が誇るんだよ」

 

 それと時々頼りになるっていつもは頼り無いって事? ふーんまあどうでもいいけどね。どうでもいいけど家に帰ったらいつもよりも多めに寝よっと。


「そう言えば、楓は今日ずっと京さんと一緒に居たのか?」


「そうだね。基本的には一緒になって行動してたよ」


「皆さんからの視線が凄かったですけど、楓さんとお話するのは楽しかったです」

 

 ふむ。楓と京さんの仲は上々な感じか。勢いだけで進めたにしては上出来だ。


「それは良かった。どんな話したんだ?」


「慶の話をしたよ」


「へ? 俺の話?」


 会話の話題として予想外の回答が返って来た。俺って会話の話題として選出されるほど何かしてたっけ?


「私と楓さんの共通の話題って、慶さんしかなくって」


「何か済みませんでした」


 そこら辺何も考えてなかった。そりゃ俺の話題しか無い訳だ。


「慶の色んな話を聞けて楽しかったよ。面倒くさいからの一点張りで教師陣の無理難題を押しのけた話なんて最高だった」


「私は宗教勧誘の人に未知の言語で対応した時の話を聞きました」


「俺ってそんな破天荒な奴だっけ?」


 教師陣に意見したのは覚えてる。だって「図書室の本一斉整理するからお前らやれ」なんてて言うんだもん。

 

 面倒くさい以外の感想出てこなかったし、京さんもやりたくなさそうだったし。

 

 宗教勧誘は、確か学校の帰りに駅前で女の人に絡まれて、輪廻転生がどうとかって意味わかんない単語羅列されたから適当に返したんだ。客観的に見ると俺破天荒だな。

 

 因みに未知の言語を話す時は巻き舌をするとリアリティが出るぞ。


 「それが慶の魅力だよ。どんな状況でも自分を出せるからね」


 楓は何故か誇った要ようにそう言った。

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