【第14話】お揃いのネックレス
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俺と楓はCD屋に向かって歩き出す。
中に入るといきなりシャイニーズのCDがずらりと陳列されていた。
流石シャイニーズだ。
「お前どんなの聴くんだ?」
軽音部だしバンド系かな。案外シャイニーズかも。
「気に入ったのはジャンル関係なく聴くんだけど、最近は、これかな」
数あるCDの中で、楓がチョイスしたのは意外なものだった。
「これって五十年くらい前のバンドじゃねえか」
楓が持っているCDは俺らが生まれるずっと前に発売された海外のロックバンドのものだ。
平和を謳う歌詞と乗りやすい曲調で、長年愛されている名盤中の名盤。
俺も好きなバンドだ。
ただ楓も好きというのが意外というか、正直イメージがなかった。
「君も知ってるのかい?」
「俺も好きなんだよこのバンド。お前もこういうの好きだったんだな」
「ギターとドラムが心地よくてね。歌詞も共感できる部分が多いから、聴いていてのめり込んでしまうよ」
「分かる」
思わずギャルみたいな相槌を打っちまった。でも仕方ないんだよ。今までこのバンド聴いてるやつと出会ったことないから。
「まさか慶も好きだとは思わなかったよ」
「まあ、俺の場合はこればっか聴いてるってわけじゃないだけど」
「そうなのかい? なら、君が他に聴いてるのも教えてくれないかい?」
「他の?」
「君のことをもっと知りたいんだ。趣味嗜好が結構一致している気がしてね」
「なるほどな」
俺の心に火がつく。
これは人生でも滅多にない好きな物を惜しげなく布教するチャンス。こんな日のために随分前からオススメ用リストを作っておいたんだ。無駄にはせんぜよ。
「そうと決まれば早速行くぞ」
俺は楓の手を握りリストのCDが置いてある場所に向かう。
ロック、ヒップホップ、それとアニソン。年代やジャンル、洋楽邦楽関係なく俺は楓におすすめの曲を全て教えた。
途中熱が入ってしまい、早口で色々ウンチク言ってしまったのと、思っていたより店内が広く、あっちこっちへ楓を振り回してしまったのが反省点だ。
「お前本当にそれ全部買うのか?」
シングルが四枚、アルバムが六枚で合計十枚。
全部で万は平気でいくそれらを、楓は両手に抱えレジまで持って行こうとしている。
「ああ。せっかく君が教えてくれたんだし全部聴きたくてね」
楓はCDの山をレジに運ぶ。
合計金額は俺が買ったシャツの値段を何倍も超えていた。
それよりもチラッと見えた楓の財布に、札がびっしり入ってることの方が衝撃だった。
俺の生涯年収ぐらいあるんじゃないか? だとしたら俺の人生この先どうなるんだ?
「ありがとうございましたー」
楓は店員からパンパンになった袋を受け取る。
「片方持つぞ」
「ありがとう。お願いするよ」
俺はCDが入った袋を受け取る。
「次どうする?」
「慶はどこか行きたい店はあるかい?」
「うーんそう言われてもな」
俺は夏服さえ手に入ればよかったし、格別欲しいものも無い。どうしようかと迷っていたその時、俺は横目にある店を見つけた。
パット見た感じ、アクセサリー類がたくさん売られている店だ。
「あの店行かないか? なんとなく」
「アクセサリーか。確かにいいかもしれないね」
俺と楓はアクセサリー店に入る。
店名は読めん。多分英語ですらない。
「ネックレスにピアスに指輪。色々あるな」
それ以外にも缶バッチやストラップなど、多種多様な商品が売られている。
「このピアスいいね。値段は高めだけど本物のダイヤモンドだよ」
楓はピアスが入ったケースを眺めそう言った。
「分かるのか?」
「母が宝石類を集めていてね。小さい頃、よく付き添って店に行っていたんだ」
「へー」
思わず素で感心してしまう。
俺だって小さい頃母ちゃんに連れられてスーパー行ってたし、それ上位互換みたいな感じだろうか。
絶対違うと思うけど。
「買うのか?」
「いや、私はあんまり趣味ではなくてね。もっとシンプルなのが好きなんだ」
「シンプルなのね」
「例えば、これなんかいいね」
楓はケースに詰められたピアスを取り出す。
派手な装飾も無く、ただ円形のピアスだ。
「まあ確かに、俺もこう言うのの方が好きだな」
ダイヤモンドの付いたピアスなんて着けても似合わないってのが本当のところなんだけど。
まあ単純に俺もあんまり趣味じゃないからな。
「慶もピアス着けるのかい?」
「いや。ただネックレスとかは指輪はたまに着けるな」
ピアスの穴って開ける時痛そうだし。痛くないって言うやつもいるけど、俺に開ける度胸はない。
その点ネックレスは安心だ。なんてたって首にかけるだけだからな。
「へえ。ならこれなんていいんじゃないかな? 慶にも似合いそうだ」
楓は俺の前にシルバーのスティックが付いたネックレスを差し出す。
「確かにいいなこれ」
俺はネックレスを手に取ってまじまじと眺める。
値段も結構お手軽だし、落ち着いた雰囲気で俺の趣味と合致してる。
「買うのかい?」
「そうだな」
「なら私も」
楓は俺の持っているリングと同じものを棚から取り出す。
「お揃いだね」
「いいのか? 俺とお揃いで」
「お揃いの物を身につけるのは友達の証なんだろう?」
「そうなのか?」
どこから仕入れた情報なんだそれ。少なくとも俺は聞いたことないぞ。
「だから、お揃いにしいないかい?」
楓は笑顔を俺に向ける。
眩しい。眩しすぎる。
「別にいいけど」
「じゃあお会計に行こうか」
俺はルンルン状態の楓と一緒に会計へ向かい、ネックレスを購入した。




