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【第12話】王子様と買い物に行こう

読んでいただきありがとうございます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマーク、ポイントの方よろしくお願いします。

 時間は流れ日曜日。ヒロト、アキラとの何の生産性も無い、ペットボトルロケット野球の試合を終えた翌日。

 

 電車を乗り継ぎ、待ち合わせ場所であるショッピングモールにたどり着いた俺は、楓を探す為に周囲を見渡す。

 

 日曜日とだけあって結構人が多く、カップルや家族連れもよく見える。これは探すの骨が折れるぞと思ったが、そんなことはなかった。


「おおう。絶対あそこだな」

 

 他と比べて明らかに人が集中している場所。目を凝らして見てみると、その中心にいるのは楓だった。


「あの! この後時間ありますか? 良ければ私と一緒に」


「私こういう者なのですが、モデルに興味はありませんか?」


「これは運命だ! どうか俺と結婚を前提にお付き合いを!」

 

 ナンパにモデルのスカウト、更にはプロポーズまで。

 

 誰がどう見てもカオスとしか言えないこの状況に、流石の楓も困り気味の様だ。


「申し訳ないのだけれど、私は今友人と待ち合わせをしていてね。また別の機会にお願いできるかな」

 

 しかし楓はこんな状況には慣れているのか、押し寄せる軍勢を次々とさばいていく。


「あっ慶! こっちだよ」

 

 楓は人混みの中で背伸びをして俺に手を振る。楓に群がっていた連中は誰あいつみたいな目線を俺に向けてきた。

 

 気にしても仕方ないので、俺は群衆を強引に押し出して楓の下へ向かう。


「おう楓。相変わらずよく人を集めるな」


「何故だろうね。私は普通にしているつもりなのだけど」


「だからだろ」

 

 俺が楓と話始めると、今まで楓に群がっていた連中も流石にその場から引き始めた。

 

 やがてその場から人がいなくなると、楓はホッと息をつく。


「助かったよ。流石にあの人数は対処できるか不安だったんだ」


「普通に無視するの駄目なのか?」

 

 知らない奴があれだけグイグイ来たら、俺だったらガン無視する自信がある。ガン無視しなくても雑に扱うのは確定だろう。

 

 それをあんな丁寧に対応しているのだから、楓の人の良さが伺える。


「それはできないよ。私を好んで来てくれているからね。私もそれ相応の対応をしないと」


「いい奴だなお前ホント」

 

 俺が手を組んで楓の人間性に感心する。


「照れくさいよ。それよりも、その、どうだろうか。こういうのは初めてで。似合っているだろうか?」

 

 楓はモジモジしながら俺の方を見つめる。

 

 言葉のニュアンス的に私服が似合っているか聞きたいんだろう。友達たるもの、ここは要望に応えなければ。

 

 楓の私服は黒を基調とした七分丈のシャツとパンツ。全体的にダボっとしていて、段々と暑くなり始めた今の時期に丁度良い着こなしだ。適当なTシャツとカーディガンで来た俺が、何か言われそうな程オシャレ。

 

 これらの情報を分析し、導き出される回答。それは。


「良いな。よく似合ってる。センス良いなお前」

 

 語彙力の関係でありきたりな言葉しか出てこなかったが、言いたいことは言えた。


「そ、そうかな? ありがとう」

 

 楓も分かりやすく喜んでいる。前から思ってたけどこいつ感情表現豊かだな。


「慶も全体的に明るい感じで、とても似合っているよ」

 


 俺と楓はモールに入る。外の時点で予想はしていたが、やっぱり中は混み合っていた。

 

 人が多すぎて歩けないなんてことは無いが、普通に歩きづらい。

 

 これは下手したらはぐれるな。この歳で迷子センターに駆け込んでアナウンスとか、マジで恥ずかしい。

 

 末代までの恥になる。なんとしてでもそれは避けなければ。

 

 取り敢えず、解決策として俺は楓の方に手を伸ばす。


「どうしたんだい?」

 

 楓は俺に問いかける。


「いや、はぐれたらマズいから手繋ごうかと」

 

 ちょっと馴れ馴れし過ぎたか?

 

 でも俺の頭ではこれぐらいしか解決策が浮かばないんだわ。


「ああ、なるほどね。ならそうしよう、元より私もどうしようかと迷っていてね」

 

 楓は俺の手を握る。楓の手は俺の手と同じくらいの大きさで、握っているだけでどこか安心感を覚えてしまう。

 

 楓が大分強く握っているので滅多なことでは外れそうに無い。

 

 これなら迷子の心配は無いな。俺の名誉は保たれた。


「どこから周る? お前どこか行きたい店あるか?」


「うーん。私もそろそろ夏服が欲しいと思っていたところだし、何処かの服屋さんに行きたいね」

 

 服屋か。とは言ってもここに服屋なんてクソほどあるし。と言うかほどんど服屋だし。


「じゃあ適当に見て行くか。パッといい店思い浮かばないし」 


「そのほうが君と長く話せていいかもしれないね」

 

 楓は少し笑いながらそう言った。

 

 今思えば楓の笑顔には、出会った時みたいな違和感は全く感じなくなっていた。

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