第2章:翔の過去との繋がり
「人を助けることは自分を助けることと同じ」
美咲と翔の関係が深まる中、ある日、2人は仕事帰りにカフェでお茶をしていた。
カフェの窓から見える夕陽が、2人の影を長く伸ばしていた。
「翔さん、ずっと思ってたんですけど、どうしてそんなに人に優しいんですか?」
美咲は興味津々に尋ねた。
翔は少し照れくさそうに笑った。
「そんなことないよ。でも、そう思ってくれるなら嬉しいな。」
「いや、本当に。あの日、満員電車で助けてもらった時も、すごく安心したんです。翔さんがいなかったら、どうなってたかわからないくらい…。」
翔は一瞬考えた後、静かに話し始めた。
「僕の両親は医師と看護師で、いつも忙しかったけど、家族みんなが互いを思いやる環境で育ったんだ。母がよく言ってたんだよ、『人を助けることは、自分を助けることと同じ』って。その言葉がずっと心に残ってて。」
「そうなんですね…。」
美咲は感心しながら聞いていた。
翔は続けた。
「高校時代にはボランティア活動にも参加して、いろんな人と接する機会があった。特に老人ホームでの活動が印象的でね。お年寄りたちの話を聞くのが好きだったんだ。彼らの人生経験や知恵から多くのことを学んだよ。」
美咲は翔の話に引き込まれていた。
「老人ホームでの話、もっと聞かせてください。」
翔は微笑み、思い出を語り始めた。
「ある日、老人ホームで1人のおじいさんと出会ったんだ。彼は元教師で、戦後の激動の時代を生き抜いてきた人だった。彼の話を聞くたびに、歴史の教科書には載っていないリアルな経験や感情が伝わってきて、すごく感動したんだ。」
「そのおじいさんの話を聞いて、どんなことを感じましたか?」
美咲は興味深そうに質問した。
「彼の話を通じて、人々の人生にはそれぞれのドラマがあることを知ったよ。そして、どんなに困難な状況でも、人は他人とのつながりや支えによって乗り越えることができるんだって実感したんだ。それが、僕が心理学を学ぶきっかけにもなった。」
「大学でも心理学を専攻していたんですね。」
美咲は翔の過去にますます興味を持っていた。
「そうだよ。大学では、人々の心の動きや行動について深く学んだ。特に、人が困難な状況に直面した時にどのように対処するか、どんな支援が必要かを研究したんだ。桜子と一緒にカウンセリング実習をしていた時も、そういった経験が役立ったよ。」
「桜子さん…。」
美咲は一瞬ためらったが、翔の過去の恋人について尋ねる勇気を出した。
「彼女とのことも、翔さんの優しさに影響を与えたんですか?」
翔は少しの間、黙っていたが、やがて静かにうなずいた。
「そうだね。桜子との経験は、僕にとって大きな学びだった。彼女との関係を通じて、人を思いやることの大切さを再確認したんだ。でも、彼女が留学先で浮気をした時は、本当に辛かった。信じていた相手に裏切られることの痛みを知ったんだ。」
美咲は翔の手をそっと握りしめた。
「翔さん、そんな経験をしても、なお人に優しくできるのは、本当に素晴らしいことだと思います。」
翔は微笑みながら美咲の手を握り返した。
「ありがとう、美咲さん。でも、君に出逢えたから、また前を向いて歩けるようになったんだよ。君の存在が僕にとって大きな支えになってる。」
2人はその日、互いの夢や目標について語り合い、さらに絆を深めていった。
翔の過去と彼の優しい性格は、美咲にとって大きな励みとなり、彼女もまた自分の夢に向かって進む決意を新たにした。
美咲は翔の優しさの理由を尋ねる。
彼の過去の話や経験を聞く。
2人はお互いの夢や目標を語り合い、絆を深めていく。