鈴城家と月島家 6月
翌日
「じゃあ、凛音兄さん行ってきまーす」
「いってらー」
「愛華ちゃん」
「皐月ちゃん、お出迎えありがとー」
「初めまして、愛華の兄の怜於です」
「初めまして、家はここです」
「お母さん、お連れしました」
「お邪魔しまーす。初めまして、愛華の兄の鈴城怜於です」
「本日はありがとうございます」
「いえいえ、職業柄人と話すことは慣れているので...」
「じゃあ、皐月、弥生のとこ案内して」
「分かった」
コンコン
「弥生ー入るよー」
「久しぶり、弥生ちゃん」
「愛華ちゃん」
「愛華、どういうこと?」
「友達の家行くって連絡した日あったじゃん、そん時に会った」
「なるほど」
「初めまして、愛華の兄の怜於です」
「前に愛華ちゃんが言ってた、料理が得意なお兄さん?」
「弥生ちゃん、そうだよー」
「いろんな人の話を優しく聞いてくれる人だよー」
「そうなんだー」
「ねえねえ、私の話聞いてくれる?」
「もちろん」
「じゃあ私たちはそろそろお暇するねー」
「兄さん、皐月ちゃんと図書館で勉強してくるー」
「オッケー」
バタン
「私,姉さんの前では明るく振る舞ってるけど、本当は人見知り激しくて,今も緊張してる」
「そっかー」
「人をどこまで信頼して良いか分からなくて...グスッ」
「これ使って」
「ありがとう」
「ゆっくりでいいから、話せそう?」
「う、うん」
「私,始業式の後,好きな人ができて,その人に声をかけて仲良くなれたけど、それを気に食わなかった子たちから嫌がらせを受けるようになったけど最初のうちは気にならなかったけど,ある日、私の席が消えてて,私は引き返そうとしたけど,好きだった人と,嫌がらせをしてきた人たちに囲まれて暴力を振るわれて、階段から突き落とされて...その時に手を怪我して、そのまま家まで帰っちゃって、その時に、大学の講義終わりの兄貴と会って、全てを話した。それから学校には行けてなくて...手の怪我は治ったけど,昨日、久しぶりに家族で買い物に行って,1人で欲しい物を見てたら同級生に会って、人気のないところに連れ込まれて、また暴力を振るわれて...その時に手首を折られて...蒼人兄さんと、皐月姉さんが間に入って助けてくれて,学校側にも伝えてもらったけど、ますます学校に行くのが怖くなって、グスッ」
「話してくれてありがとう」
「手首痛い?」
「うん」
「俺は,学校には無理して行く必要は無いと思うなー」
「来年から中学生になるけど,このまま進学するのも怖いと思ってて」
「そっかー、受験というものを味わわなきゃ行けなくなるけど、私立中学校って選択肢もあるよ」
「そうなんだー」
「どんな道を選んでも、お兄さんや、お姉さん、そして俺も味方になるから」
「ふふっ、嬉しい」
「それとさ,手首の様子を見てもらうために、整形外科行ってみない?」
「前に行った時怖かった」
「俺の知り合いに専門の人がいるけど会うだけ会ってみない?」
「校区は離れるから知ってる人に合わないと思うよ!」
「お母さんがいいって言ったら会うだけ会ってみる」
「日曜日にやってるの?」
「うん,その代わり月曜日が休みだから」
「分かった!」
「じゃあ、諸々連絡するからちょっと待っててもらってもいい?あと、双子の俺の兄さんに運転を頼んでもいい?」
「うん、いいよー」
「あのー、」
「弥生はどうでしたか?」
「一通り話を聞いて,無理しなくていいことと,進路の話をしてたので,私立中学校の選択肢もあることを伝えておきました」
「ありがとうございます」
「それで,お願いがあるんですけど,昨日手首を怪我したって話を聞いて、今からで良ければ,俺の知り合いに整形外科の人がいるので、その人に見てもらえないかと思いまして」
「今日はやっているのですか?」
「はい」
「弥生は何て?」
「『お母さんが良いと言ったらいいよー』って言ってました」
「じゃあ任せるわ」
「それと,だいぶ痣ができちゃっているから、治療して欲しいんだけど、知り合いの人って..」
「双子の兄が皮膚科の担当なので、交渉しておきます。ただし,俺らの家に上がってもらうことになるんですけど良いですか?」
「お任せします」
ブォーン
ピンポーン
「はーい」
ガチャ
「初めまして、怜於と愛華の兄の凛音です」
「初めまして、お願いがあるんですけど、弥生の体に痣ができちゃっているので、治療をお願いしたいのですが」
「分かりました」
「1回だけじゃ全ては無理なので、何回も行うことになりますが」
「それで、弥生が元気になるなら」
「弥生ちゃん、行こっか!」
「うん」
「これをお願いします」
「確かに受け取りました」
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい」
「弥生ちゃん、初めまして、凛音です」
「愛華ちゃんが、やんちゃでめんどくさいお兄ちゃんって言ってた人ですか?」
「たぶんそうだと思うよー」
「怜於、湊に連絡取った?」
「うん、午後予約なくて暇って言ってた」
「なら良いけど、危ないのは凌馬だなー」
「そうだね」
(何言ってるんだろう?)
「あ,ごめんねー。湊が、整形外科の先生で、凌馬が、理学療法士っていう、大怪我した後のリハビリをサポートする人なんだけど、その凌馬が、俺らと同級生で、昔から彼の元に女の子がいっぱい集まってたこともあって、距離感が近いから,何か嫌だと思ったらはっきり言っても良いからね」
「分かった!」
「湊さんはどんな人ですか?」
「湊は、俺らの一個下で,俺らよりも10cm以上背が高いから怖そうに見えるけど、見た目に反して人の話を最後まで聞いてくれる優しい人だよ」
「そうなんだー」
「着いたよー」
「じゃあ凛音はここで待ってて」
「あいよー」
「弥生ちゃん、こっちおいで」
「う、うん」
「初めまして、里見湊です。弥生ちゃんって呼んでも良い?」
「うん」
「よろしくね!」
「怜於も中入ろ!」
「オッケー」
「弥生ちゃんって、右利きで、手首痛いのが右?」
「はい、文字も左で書こうとしてもなかなか上手く書けなくて...」
「そっかー、じゃあ俺が書いてくから、細かい情報を教えて〜」
「分かりました」
「漢字これで合ってる?」
「はい」
「誕生日は?」
「3月10日です」
「いつから痛い?」
「昨日からです」
「オッケー、じゃあ、レントゲン取りに行こっか」
「はい」
(あれ、あの紙には怪我した理由書く欄あったのに聞かれなかった。どうしてだろ?)
「じゃあ、この姿勢のまま動かないでね」
「オッケー、動いて良いよー」
「このまま診察室入ってもらって良い?」
「はい、グスッ」
「ここ座って、あと、これ使ってー」
「あり、ありがとうございます」
「泣かなくてもいいよー結論から言うと骨折してるね」
「やっぱりですか」
「ただ、この骨の折れ方は転んだんじゃなくて誰かにやられた?」
「はぃ」
「グスッ、今年に入ってから,クラスの子にいじめられてて、怖くなって学校行けなくなった。でも,昨日、グスッ、休みの日に外出したけど、鉢合わせしちゃって,その時にやられた」
「うぁーん、シクシク」
「そっかー。よしよし、怖かったね」
「落ち着くまでこのままでいよっか!」
「うん」
10分後
「落ち着けた?」
「おかげで」
「じゃあ手首固定しとくねー」
「お願いします」
「弥生ちゃんの都合のいい日っていつ?」
「家族の人の都合のいい日のことだけど...」
「家族でスケジュール共有してるアプリがあるので見てもいいですか?」
「いいよー」
「えーっと、明後日ならお姉ちゃんの学校終わった後なら空いてます」
「次の診察その日にしよっか!」
「うん!」
「でもお姉ちゃん迷子になるかも...」
「何か分からないことがあったら愛華ちゃんに聞くといいと思うよー」
「愛華ちゃん、昔、ここに来たことあるから」
「そうなんだー」
「弥生ー」
「え、お姉ちゃんの声がする」
「本当だ!何か声するねー!ちょっとそこから顔出してみてー」
「あ、お姉ちゃん、それに愛華ちゃん!」
「弥生見ーつけた」
「久しぶり、愛華ちゃん」
「お久しぶりです」
「君が弥生ちゃんのお姉さん?」
「は,はい」
(待って,この人めっちゃタイプだー)
「話したいこともあるし中入ってもらっていい?」
「分かりました」
「弥生ちゃん、ちょっとだけ愛華ちゃんたちと待っててー!」
「分かったー」
「まず,弥生ちゃんの右手首が骨折してました」
「やっぱりですか。前に,骨折した時と同じ痛がり方をしてたのでもしかしてって思ってました」
「それで、聞きたかったんだけど,前に骨折した時にどんなことされたか知ってる?」
「ここに来た時少し怯えてたから」
「えーっと、前に聞いた話だと、担当した先生が無口で何も言わなくて怖い感じの人だったみたいで行きたくないって駄々をこねたこともあったので...」
「それでトラウマになったんじゃないかと思います」
「あー、なるほどね」
「話してくれてありがとう」
「こちらこそです」
「それで、あ!お互い名乗ってなかったねー」
「改めて、初めまして、里見湊です」
「初めまして、月島皐月です」
「よろしくね、皐月ちゃん」
「よろしくお願いします」
「それで、定期的に骨の様子を見たくて,次回の診察をこの日にしたいんだけど...午後からでいいから同伴できる?」
「その日はテスト期間なので午前帰りで午後が空いているのでいいですよ!」
「じゃあ、この日の14:30〜でいい?」
「はい、よろしくお願いします」
「そうだ!何かあった時のために連絡先聞いといてもいい?」
「私のはこれです」
「ありがとね、困った時とかに使ってー」
「はい!」
その頃
「愛華ー何でここにいると思った?」
「皐月ちゃんのお母さんに弥生ちゃんの場所を聞いたら,兄さんが整形外科に連れてったって言ったからたぶんここかなー?って思った」
「やっぱり愛華ちゃんすごいねー!」
「ありがとう!弥生ちゃん」
「ありがとうございました」
「あー!皐月姉ちゃん」
「弥生ー」
「愛華と皐月ちゃん、この後弥生ちゃん連れて俺の家行くけど来る?」
「家帰るだけだしいいよー」
「愛華ちゃんともうちょい一緒にいたいしいいよー」
「ありがと。運転が凛音兄さんだけどいい?」
「あ...まー仕方ないかー」
「いつまでもうじうじと言ってんじゃねーぞ」
「出た、凛音兄さん」
「凛音さーん」
「初めまして、愛華ちゃんの友達の月島皐月です」
「初めまして、鈴城凛音です。いつも愛華と仲良くしてくれてありがとう」
「こちらこそです」
「移動しよっか!」
「愛華ちゃんの家ってここ?」
「そーだよー」
「隣は結愛の家だよー」
「まじでー!どうりで2人が仲良いんだー」
【ただいまー】
「ただいまー」
「皐月ちゃん、弥生ちゃん、上がって〜」
【お邪魔しまーす】
「皐月ちゃん、弥生ちゃんちょっと借りるねー」
「凛音さん、分かりましたー」
「皐月ちゃん、私の部屋で勉強する?」
「いいのー!やったー!」
「終わったら呼ぶから勉強しててー」
「明日からテストなんでしょ?」
「煽らないでよ、凛音兄さん」
「明日はこの2教科だからここ中心的に問題出し合う?」
「いいねー賛成!」
「弥生ちゃんはこっちだよー」
「お邪魔します」
「いいよー入りなー」
「弥生ちゃん、凛音と2人きりになるけど大丈夫?」
「うん」
「弥生ちゃん、まずは痣ができたところを見せてもらってもいい?」
「うん」
「これ」
「ありがと」
「あーこれだったら成長するに連れてだんだん薄くなっていくものだと思うけど,どうしてもこの痣を取りたいと思うなら、レーザー治療になるねー」
「そうなんですねー」
「一応、詳しい説明が書いた案内渡しとくから親に見せてあげて〜」
「分かったー」
「怜於ー愛華たちどう?」
「めっちゃ熱心に勉強してる」
「まーテスト明日からだし仕方ないかー」
「愛華ちゃん、18:00に兄さんがここまで迎えに来てくれるって〜」
「そうなんだー」
「兄さん聞いてたでしょ、弥生ちゃんにも伝えてあげて〜」
「かしこまりました我が可愛い妹」
「ありがと、ありがと」
「お兄さんっていつもあんな感じ?」
「そうなんだー、いつも過保護でたまにうんざりしちゃう」
「私も兄さんがいるから愛華ちゃんの気持ちは分かるよー」
「まー、たまにだるいけどとりあえず勉強しよっかー」
「そーだねー」
「弥生ちゃん、18:00にお兄さんがここまで迎えに来てくれるって〜」
「そうなんだー」
「あと2時間あるから私も勉強してもいい?」
「いいよー」
「あれ?弥生ちゃん、勉強道具持ってきてたっけ?」
「さっき、お姉ちゃんに会った時に渡された」
「そっかー。俺らが教えられるか分かんないけど分かんないことがあったら聞きなよ」
「ありがとう」
1時間後
「凛音さんか怜於さん、ここの問題ちょっと分かんないから教えてほしい」
「ちょっと問題見せてー」
「あ、この教科は、俺よりも凛音の方が得意だからそっちに聞きなー」
「ありがとう!凛音さん教えてー」
「あ!これねー、ここの面積は分かる?」
「うん」
「だったら、この円の面積を求めて、半分にすればいいよー」
「最後に÷2すればいいってこと?」
「そうそう」
「やったーできたー」
「よっしゃー答えもあってる!」
「良かったじゃん」
「凛音さんが教えるの上手いからだよー」
「まーね、こういった問題愛華も苦手だったからよく教えてたんだー」
「すごーい!」
「ありがと」
「凛音、照れ隠しすんなよー」
「恥ずいよー...」
「やること終わった?」
「うん」
「愛華の小さい頃の写真見る?」
「いいの?」
「いいよー」
「やったー!」
「愛華ちゃんどこにいる?」
「これだよー」
「えー、今と全然違う!」
「懐かしいなー」
「愛華が今の弥生ちゃんぐらいの時は弥生ちゃんよりも20cmぐらい低かったんだよー」
「どうりで分からなかったのかー」
「愛華は中学で一気に背が伸びたからね」
「そうなんですねー。ふぁ〜」
「弥生ちゃん、眠たい?」
「うん」
「寝ててもいいよー」
「お兄さん来たら起こすからー」
スースー
「寝るの早!」
「まー時間まで愛華たちの様子見つつ,静かにしてるかー」
「そうだねー」
1時間後
ピンポーン
「うん?誰だろ?」
「俺見てくるねー」
「ありがとう、怜於」
ガチャ
「初めまして、皐月と弥生の兄の蒼人です」
「初めまして、愛華の兄の怜於です」
「妹たちを迎えに来ましたー」
「皐月ちゃーん、お兄さん迎えに来たよー」
「まじか!弥生ー帰るよー」
「って寝てたんですね」
「そうそう、弥生ちゃんの荷物持ってもらってもいい?」
「分かりました」
「弥生ちゃん、お兄さん迎えに来たよー」
「ふぁ今何時ー?」
「18:00だよー」
「やば、あれ?私の荷物は?」
「皐月ちゃんに持ってってもらったよー」
「あ、兄さん」
「皐月ー弥生は?」
「何か寝てたー」
「まじでー」
「お待たせしてごめんなさい」
「弥生ー疲れた?」
「うん、寝ちゃってた」
「いいよー早く帰ろうか!」
「そうだねー」
[お邪魔しましたー]
「皐月ちゃーん、また明日」
「愛華ちゃーん、また明日」