出会い❶ 3〜4月
別れの季節でもあり、出会いの季節でもある春、
そんな季節にここから新たな恋物語が始まる...
「はい、じゃあ愛華ちゃんは次回からの担当医が変わります」
「あぁもうそんな年なのですねー」
担当の先生と母が何か言ってるわーと軽く話を聞き流してると、
「愛華ちゃん、次回から木曜日のこの時間だからよろしくねー」
(おいおいちょっと待てー)
(もう、興味が無くって他の事を考えている時に限って大事な事を言い放つんだから...)
「分かりました」
「じゃあ、新しい担当医呼んだから会ってってよ!」
(ぶっちゃけ興味がないけど)
「分かりました」
「失礼します」
「初めまして、雪平悠真です」
(え...何この人、顔立ち整いすぎまくっておまけに高身長で...絶対学生時代モテただろ、モテたに違いない)
「は... は... は...初めまして 鈴城愛華です」
「よろしくね愛華ちゃん」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
「じゃあ、この後愛華ちゃんはいつもの検診行って、お母さんはこのまま応接室で面談にしましょうか」
「分かりました」
2人の声がハモった。さすが親子。
突然のイケメン登場に夢うつつの状態で婦人科に向かう。
35番の方診察室2にお入りください。
「失礼します」
「愛華ちゃんここ座って」
そうやって急かしてくるこの医師は織元柊羽と言って、某有名大学の医学部に主席で入学して、卒業したいわば超がつくほどのエリートであり、誰に対しても心優しい人である。
「愛華ちゃん。そういえば高校受かった?」
「はい、冬宿高校です」
「おめでとう」
「ありがとうございます」
「また分からないとこがあったら言ってね」
「はい、またこれで聞きます」
「OK また連絡よろしく〜」
「じゃあいつものやつやろっか」
といったふうに彼は他愛のない話から診察といったスタイルで行われている。そのおかげで人見知りな私でも何でも気軽に話せるいい人である。
「そういえば、新しい担当の人と会った?」
「あ、これもらいました」
「え...悠真。あ、俺の後輩だからつい。ちょっと話しかけにくいように見えるけど心優しいやつだからよろしくねー」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「じゃあ次回はこの日でお願いねー」
「はい、ありがとうございました」
(ふぁー、ついに高校生になっちゃいましたー)
(合格者説明会に行ったら首席入学で入学式にスピーチがあるとかでセリフ覚えるのまじ大変。柊羽くんに聞けば、『そんなこともあったなー懐かしい。』とか言うし,『もう覚えるしかない』とか言われちゃったからなー)
「あっ,もうこんな時間!!行かなきゃ。これ持ってこー」
「あの時は顔合わせしただけだしどんな人なんだろー?」
63番の方は診察室1にお入りください。
「失礼します」
「ここどーぞ」
「ありがとうございます」
バサッ
「あっ,ごめんなさい紙落としちゃって」
「大丈夫だよ。それぐらいのことは気にしないで。これって入学式の時に喋るやつ?」
「はい」
「これって冬宿の?」
「そうです。合格者説明会の帰りに渡されたんですけど,この紙を見ただけで双子の兄貴たちが勝手にお祝いを始めるくらいでしたしー」
「もしかして,伝説のシンクロ率100%超えの凛音さんと怜於さんの妹さん?」
「そうです。兄貴たちは,某有名大学の医学部出てますからねー」
「そうそう。5学年違っても伝説がよく回ってきたからねー」
「兄貴たちの伝説が広まっている時に兄貴たちを迎えに行ったら,いろんな人に囲まれて...」
「うぁそれ俺も見たことがあるわー」
「そうなら止めてくださいよー」
「ふふっ」
「あっ時間が...」
「じゃあ、まず聴診させて」
(あっ体の痣薄ら残ってるじゃん最悪ー)
「OK。じゃあ心電図したいから準備してもらっていい?できたら呼んで」
「分かりました」
(あれ?何も聞かれなかった。絶対見られたら詳しく聞かれるのに)
「準備できましたー」
「じゃあ今から検査してくからじっとしててねー」
「よーしこのままエコーもやっちゃうねー」
「今日の診察は以上だけど...」
「あ,あの気にならないんですか?体に痣があることに」
「気づいてたけど愛華ちゃんが話したいと思ってくれるまで待とうと思ったから」
「この後時間があれば話してもいいですか?」
「いいよ。無理のない程度で」
「小学生の頃までは一切の運動を禁じられてたから,周りの子が羨ましいがったり,妬んだりしてて,割と女子同士だと『大変なんだねー』という感じで理解してくれる子が多かったけど,一部男子に従っている女子には地味な嫌がらせをされるし,男子だと襲いかかってきたり,体育の授業でも試合中に『手が滑った』と言ってボールを当ててきたりしてて,それで痣ができて...凛音兄さんに痣をできるだけ薄くなるようにお願いして治療してもらったけどまだ治りきってなくって...そんな時に助けてくれたのが結愛で,家も隣で喘息を持っていることから,互いに1番の良き理解者で,その後中学でも同じクラスで同じ高校にも合格できて...という今日この頃です」
「そうだったんだね。話してくれてありがとう。次回は再来週のこの時間だよー」
「あっ,そういえば資料書く時に必要になるためのデータ送りたいから連絡先を教えて欲しいんだけど...」
「いいですよ!むしろこっちから聞こうと思ったぐらいですから」
「じゃあこれからよろしくね愛華ちゃん」
「よろしくお願いします」