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アレス5

「アレスさんのことは正直誰もよくわかっていないの」


イルナと連れ立って街に出てきて、俺はイルナにアレスのことを聞いてみた。

その返答がこれだ。


「わかってないって、何もか?」


「ああいえ、何人で暮らしてるとか、家族はいるかとか、そのくらいなら分かるんです。でもその、日頃どうしてるーとか、どんなものが好きーとか、お付き合いしてる人はいるのかー、とか…」


「え?」


「い、いえいえ!とにかくそういった情報はなくてですね、あまりお役に立てないかもしれません」


「いや、いいんだ。今言ってくれたようなことでも、俺にとってはありがたい情報だ。話してくれるか、イルナさん」


「…はい!では、立ち話もなんですし、行きつけのご飯屋さんに連れていきますね!」


「それはよかった、ちょうど腹も減ってたんでな」


「ふふ、あ、そーれーかーら」


イルナはそう言ってずいっと近づいてきた。


「イルナ、でいいですよ」


いい香りがした。この世界に香水なんてあるんだろうか。


「あ、ああ、わかったよ、イルナ」


すこし遅れて返事をしてしまった。

変に思われてなきゃいいな、と思う。


そんな時だった。


「おうおうアレス、見ない間にずいぶんおしゃべりになったんんじゃねえかぁ?このヘドロ様にも気づかずイルナちゃんと仲良くおしゃべりたあ、いいご身分だなあ!」

「そうでやんす!そうでやんす!」「生意気でい!」


もうみるからにチンピラだな。

先頭のヘドロと名乗ったオラついた男は、金のモヒカンにノースリーブのジャケット、この世界にそんなのあるのか、とまで思わせるゴツゴツした手袋をして、顔には傷跡まで見える。

後ろから何か言ってるのは…出っ歯に小僧。うん、そんな紹介で十分だろう。


「うわっ、ヘドロ一家ですよ!アレスさん、相手にしちゃだめです」


「ヘドロ一家…名前までテンプレ的だな」


俺は思わず苦笑してしまったが、ヘドロ一家の興味は俺よりイルナに向いたようだ。


「なーーんだい、ひどいじゃねえかイルナちゃんよぉ、なにも俺たちはアレスに悪いことしようなんて、こーーーれっぽっちも思っちゃいないんだぜぇ?」

「そうでやんす!そうでやんす!」「当然でい!」


「え、いやいやそんな、あ、あはは…」


参ったな、と思う。イルナは愛想笑いでごまかしてばかりだ。

仕方ない。こういう時は男がでるもんだ。


「ああその、ヘドロ一家、さん?今は俺がイルナに案内してもらってるところなんだ。用があるなら後にしてくれないか?」


俺はイルナの前にでた。このままじゃ話が進まないからな。


「おーーいおい生意気だなあアレスよお、わかったわかった。じゃあお前をぶん殴ってからイルナちゃんと仲良くお話させてもらうとする…ぜっ!」

「そうでやんす!そうでやんっ!」「あぶねいっ!」


ぶんっっ


子分たちを巻き込むようにヘドロが振ったのは長い斧だ。俺はイルナをかばいながら避ける。


「おい!急にあぶないだろ!そっちがその気なら俺だって」


勢い込んで長剣を背から外す。

真剣はさすがにまずいかな…鞘からは抜かないでおこう。


ここまできてなんだが、俺、剣なんか使えるのか…?


「ええい!やぶれかぶれ!」


悪役のようなセリフを言って上段に構える。剣道の経験とアレスの見様見真似だ。


いけるだろうか?ヘドロ一家は慌てている。


「やってみるしかないな…。

集中して、こんな感じで、

せいっ」


「え?」


誰の声か、気付けば集まった野次馬たちの中からそんな声が聞こえる。


「あ、アレスさん!大丈夫ですか!?」


振りぬいたポーズを解いて振り返れれば、

大斧を砕かれひっくり返るヘドロと気絶する子分がいた。


その向こうからイルナが駆け寄ってきてくれる。


「できるんだな、俺にも」


手を握り、確かめるようにつぶやく。

俺はアレスの技も吸収できたようだ。


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