転生4
眠っていたらしい。
またも俺は草原で目を覚ました。
目を、覚ました?
慌てて俺は体を起こす。
身体を、起こす??
どうなっているのかと首をかしげる。
首を、かしげる???
俺の体の形が変わっている。
それも人間の形に。
そうだ、アレスは!
見渡すが、アレスはいない。
代わりに傍にアレスの使っていた長剣が落ちている。
なんとなしに拾ってみた。
磨きこまれた剣には空が映っている。
手元まで持ってきて、もしや、と思っていたことが明らかになった。
映っていた俺の顔は、アレスの顔だったのだ。
「吸収したってことか」
手を握ったり開いたりしながら感触を確かめる。
以前の、健太だった時の俺と変わらない感触だ。
感触を確かめて、思う。
アレスを殺してしまったんだろうな、俺は。
俺の元がモンスターだからなのか、明確な殺意を向けられた反動なのか、罪悪感は全くなかったがその事実にうすら寒いなにかを感じる。
それでもやらなきゃやられてただろうから、俺はこのアレスの身体を存分に使わせてもらうことで、弔いとしようと考えた。
きっとこれからもこういうことは起こりえるだろうから。
『満足いくまでやる』ためにも、立ち止まってはいられない。
決意もできたところで、次は立ち上がってみる。
身体はよく鍛えられているようで、すんなり立ち上がれた。
身長は俺と同じくらいだったのか、高さに違和感はない。
それよりも景色に目を見張った。
どこまでも続く草原に深い青の空。鮮やかな新緑の森も見える。
これならすこしいけば小川なんかもありそうだ。
人間の肌で感じた風はさらに心地いい。
胸いっぱいに空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出して。
目をつぶり、また開いて、ここが俺の新たな現実であることを確認して。
「来たな、異世界!」
そんなことを改めて言うのだ。