転生2
次に目を覚ました時、最初に感じたのは『風』だった。
都会のビル風とは違う、草花の香りが混ざった心地いい風だ。
しかし次に聞こえたのは、怒声。
「アレス!前に出過ぎだ!」
視界がまだぼやけていてよくまわりは見えないが、どうやら俺の事ではないらしいので一安心する。
アレス、とか言っていたな。
外国人留学生みたいなもんだろうか。俺も以前ワーキングホリデーとかいう制度で外国籍の人を教育対象にしたことがあるが、手を焼いたもんだ。
さて、俺は助かった…というか、どうなったんだ?
自分の状況を確認しようとしたのもつかの間。
「そいつは新種か?」
どうやらさっきの怒声をあげてた上司と、留学生君が傍まできたらしい。
ずいぶん早い、ていうかずいぶんでかい。
まってくれ、どんどん近づいてきているが、、
慌てているとすぐにそこまでやってきた。
大きさは俺の6倍近くある。俺の頭が彼らの膝にようやくつくくらいだ。
「……見たことがない」
留学生君は俺を見て不愛想に答える。
俺は彼らをしたから見上げる形になって声を出した。
「ぴきー」
は?
今のは俺の声か?
「!?アレス!警戒しろ!!」
「……了解」
すごい勢いで離れていく彼らをよそに、俺は冴えた頭で状況を整理しようとした。
幸い彼らは俺を警戒して手を出してこない。
まずようやく周りを見渡す。
草原。草原。草原。
そして自分を見直す。
見えない。その代り、草の匂いがするほど近くに地面が見える。
腕や首、足の感覚はないが…それほど焦りは感じない。
ボールの中に全身があって、動こうと思えば動けそうな感じだ。
そして声。
「ぴ、ぴきー…」
ああ、これは間違いないな
俺はどうやら、スライムの姿で異世界転生という、「いつものこと」をやっちまったらしい。