転生1
―――いつもの通勤路 朝
ギラギラと視界がくらむ。
『ああ、いつもの片頭痛だな』
俺は閃輝暗点から来るいつもの片頭痛に備えて、通勤路の端でビルに手をつき、目をつぶった。
五感のうち一つを遮断したことで。都会の喧騒が耳に強く届く。
車の走る音
人々の喧騒
信号機の警告音
アドトラックの音楽
大型ビジョンから流れる広告
日頃の一部であったそれらは、今の俺にとっては不快な雑音となって響いていた。
治まるのを待っている間、俺はよく考える事がある。
このまますべてを投げ出してしまったらどうなるだろうか。
家族は心配するかな、友人は気にかけてくれるかな、会社の人は困るだろうか。
実際に投げ出すような妄想に行く前に、他人への不安が出てしまう辺りが俺の弱点なのかもしれないな。
そんな自虐めいたことを考えだしたころに、頭痛は収まってきた。
いつものことだ。
――――いや?なんだ?
目を開けても視界が戻らないどころか、暗転していく。
ビルに手をついたまま、背中にジワリと汗を感じた。
さっきまで聞こえていた数々の音が減っていく。
これは流石にまずいと思うが、声も出ない。
膝をつき、体の異常にも意識がいく。
全身が痺れるようだ。
ああ、俺はここで終わるのか。
全身の痺れ、視界の暗転とは裏腹に、妙に冴える頭の感覚を最後に
俺の意識は途絶えた。