生きない
「その子は?」
いつものように来た君に聞く。
「妹。可愛いでしょ?」
君は悲しそうに笑った。
「うん。かわいいね」
僕は触れるようなことはしない。
「わたし、この子の為に初めてお化粧をしたの。大変だね。でも、この子が可愛いから」
つぶやいた君を見る。
「そっか。人に化粧をするのは大変だね」
「そう、大変だった。うまくできたと思ったら雫が舞……あ、妹の名前は舞と言って。の顔に落ちて滲んで大変だった。舞はさ、凄く優しくて。可愛かった」
妹に優しく微笑む君。楽しそうで。
「幸せ?」
聞いた。
「……そんな訳はない。でも、舞が幸せそうで、良かった」
「妹さんを、愛しているんだね」
「うん。愛している。今でも、ずっと。これからも。今までも。この子が幸せなら、わたしは死んでもいい」
当たり前、と君は笑う。
「そっか。妹さん、きっと幸せだよ。君をみたいな人が家族なんだから」
そういうと、君ははにかんだ。
「この子が、そう思ってくれてるといいな」
夕焼けは、僕たちを見つめていた。