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子供たち


「ああ。……来たか」


 彼は領主の顔から、父親の顔になった。


「紹介しよう。私の子供たちだ」


 彼らは私たちの前に一列に並んで、はにかみながら年長者から順に挨拶した。

 1番下の6歳、そして7歳と8歳が各1人ずつ、10歳が2人、12歳が2人、13歳が3人、14歳が1人で15歳が1人。合計12人の子供たちだ。

 みんな一様に民族衣装を身に纏っていて、茶色がかった銀髪から桃色がかった銀髪、黒に近い銀髪といった、さまざまなバリエーションの銀髪だった。

 好奇心たっぷりにこちらを伺うその様子からは、彼らが健全で愛情たっぷりに育てられてきたのがよくわかる。

 彼らを見つめるセオドア様の瞳も、本当の父のように温かだった。

 

 私は彼らの前に立ち、淑女として見本になるよう一礼した。


「私がこれから皆さんの家庭教師を務めます、クロエです。マナーやお勉強は私が先生ですが、ヘイエルダールの暮らしについては皆さんが私の先生になってください」

「「先生、よろしくお願いします!」」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 声を揃える様子がとても愛らしい。

 お互いに挨拶を終えると、1人の女の子ーー12歳のベルレッタ様が手を上げた。


「先生、質問いいですか?」

「どうぞ」

「先生はいつ、領主父様のお嫁さんになるんですか?」

「えっ!?」


 思わずはしたない声が出てしまう。

 はっとして口を押さえると、セオドア様が苦笑している。

 視線に頬が熱くなりながら私はこほん、と咳払いした。


「違います。私は家庭教師としてこちらにお世話になっているのです。セオドア様のお嫁さんではありませんよ」

「えー違うんですか?」

「だって領主父様、ずっとご結婚しないんですよ」

「子沢山だけどね。本当の父さんがいなくなった私たちの領主父様になってくれたから」

「昔誰かに婚約破棄されてから、ずっと落ち込んでるみたいで」

「そうそう。コンヤクハキ」

「だから先生がもしかして新しい恋人だったらいいねって、みんなでずっと言ってたの」

「ねー」

「女はケッコンの話ばっかでこれだからよー」

「なー。領主父様は婚約破棄引きずってんじゃなくて、領主として頑張ってるから女なんか興味ないだけなんだよ。ですよね、領主父様?」

「なんか言い返してくださいよ、領主父様ぁ」


 口々にお喋りを始める子供たちに、セオドア様は苦笑いします。


「こら。お前たち。先生が困っているだろう。あと私の聞き苦しい過去も勝手に言うんじゃない」

「かっこいいところ見せたいの? 領主父様」

「きゃー」

「だから領主父様はそういうんじゃねえって」

「セリオ、領主父様をお嫁さんに取られるの嫌だからってブーブー言い過ぎー」

「なんだと?!」

「ま、まあまあ皆さん」


 私はなんとか宥めようとする。

 ソファーで足を組み直しながら、セオドア様はたまらない、といった様子で肩を震わせて笑っていた。


「ふふ……すまない。もう少し貴族子女らしい子たちだったら良いのだが、私の育て方が悪いのか皆天真爛漫でな……」

「とんでもないです。楽しそうでなによりです。私も領民の子供たち相手に先生をやってきましたので、腕が鳴ります」

「それは頼もしいな」


 セオドア様の微笑みに、私は頷き返した。

 そして手をパンとたたき、子供たちの視線を集める。


「わかりました。では皆さん、そこのソファにお座りください。今日は先生が自己紹介がてら王都や、故郷についてお話しします。皆さんはセオドア様やヘイエルダールの事を教えてくださいね」

「はーい!」


 私は子供たちの好奇心に乗じて、彼らの事を知ることから始めた。


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